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      先後 -センパイコウハイ- 陸

 家に住んでいる猫又と、供助の友人である太一、祥太郎、和歌。

 さらに今日は供助の後輩である南も加わって、居間がいつもよりも圧迫されていた。

 全員でテーブルを囲み、友人の三人はなんとも気まずそうに座っている。理由は一匹と一人。

 テーブルを挟んで対面に座る猫又と南が、ピリピリと張り付いた空気を放っていた。


「なぁ、祥太郎……なんか、空気が怖いんだけど」

「なんて言うか、凄い緊迫感というか緊張感があるね……」

「というか、なんで私もいるんだろ」


 猫又と南。二人が何をしてるという訳では無い。ただ座布団に座って、コップに入った烏龍茶を飲んでいるだけ。

 なのに、居間には普段とは異なる雰囲気が充満していた。そんな空気に耐えながら、ひそひそと話をする三人。


「こんだけ人が居ると、部屋が狭く感じるな」


 太一達がピリついた空気に耐えていると、着替え終わった供助がようやく二階から降りてきた。

 学校の制服から、Tシャツにジャージというラフな格好になったいた。


「ん? なんだ、お前等。正座なんかして」

「い、いやぁ……なんと言うか、空気に飲まれて思わず……」

「なんだそりゃ」


 太一が察してくれと視線を送るも虚しく、供助はどっかりと畳の上に座る。


「おい、南に猫又。いつまでいがみ合ってんだ。落ち着けねぇだろうが」


 二人の空気に気付いていないかと思えば、供助はしっかりと気付いていた。

 払い屋としてバイトをしているのもあって職業柄、こういう敵意や戦意が含んだ空気には敏感なのである。


「いやの、私的には別にいがみ合うつもりはないんだが……あっちからこうも敵意を剥き出しにされるとの」


 和服の袖に腕を収めて中で組み、猫又は対面に座る南を一瞥する。

 対して南はその視線に睨み返して舌打ちをし、頬杖していた手でテーブルを強く叩く。


「ちょっと古々乃木先輩! 誰なんスか、この妖怪は!? なんで古々乃木先輩の家に居るんスか!? おかえりってなんスか!?」

「大声を出すな、テーブルを叩くな、一度に何個も聞いてくんな」


 供助は面倒臭そうに大きく溜め息をして、胡座(あぐら)をかいた膝の上で頬杖をつく。


「こいつは見ての通り猫の妖怪で、猫又ってんだ。俺の相棒でここに住んでる」

「あ、あああ、相棒ぉぉぉぉぉ!?」

「まぁ組んでからまだそんな長くねぇけどな」

「こいつが! 古々乃木先輩の! 相棒なんスかっ!?」

「だからそうだって言ってんだろ」


 南は猫又を指差して睨むも、猫又は視線を受け流して烏龍茶を飲む。 


「古々乃木先輩の相棒はあたしがなるって言ってたのに! なのになんで他の女と組んでるんスかぁぁぁ!」

「それはお前が勝手に言ってただけだろ。俺に文句言うな。つーか、横田さんから聞いてねぇのか?」

「聞いてないし知らなかったッスよ! 腕を磨いて古々乃木先輩の相棒になるって決めてたのにぃぃぃぃぃ!」

「横田さんの野郎、自分が相手するの面倒だからってわざと南に言ってなかったな……」


 またさらに騒がしくなる南に、供助は頭を抱えてごちる。

 こうなる事を予想して放置していた横田さんに、今度電話した時に文句の一つでも言ってやらないと気が気が済まない。


「のぅ、太一。こっちはほっといてゲームで対戦せぬか? この前のリベンジだの」

「えっ、いや……いいんですか? なんか猫又さんが理由で騒がれてますけど……」

「構わん構わん。勝手に向こうが騒いでおるだけだの。供助がなんとかするだろうて」


 騒がしい南とゲンナリしている供助を尻目に、猫又はテレビの前に移動する。

 そんな猫又に和歌が近付き、小声で話し掛けてきた。


「猫又さん……もしかして南さんって、供助君と同じ払い屋なんでしょうか?」

「奴は耳や尻尾を隠していた私をすぐさま妖怪だと気付いた。ま、そういう事だろうの」

「そっか、じゃあ年上なのに供助君を先輩と呼んでるのって……」

「払い屋として、という事だろうの。供助をなんでそこまで慕ってるかは解らんが」


 猫又はテレビ台の下からゲームのコントローラーを取り出して、和歌に答えていく。

 後ろからはまだ騒いでる南の声が聞こえてくるが、我関せずと格ゲーの準備を進める。


「上の決定だとしても、なんだとしても! あたしはこの妖怪が古々乃木先輩の相棒だなんて認めねぇッス!」

「って言われてもなぁ……」

「第一、こんな遊び呆けてるのが役に立つんスか!?」

「ぬ?」

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