猫魂 -ニャンタマ- 肆
「もっかい」
「ハイパー霊力殴り。霊力をオーラと読む事でお洒落っ気が出て、語呂もよくなっておるんだぞ」
「……一応聞くけど、殴るんじゃなくて蹴った場合は?」
「ハイパー霊力蹴り」
「はい、アウト。完全にアウト」
「なぬぅ!? 私が一生懸命ロボゲーをしとる時に思いつきで考えたというにっ! アウトってなんだの!」
「いや、思いつきで考えたって言ってる事おかしくねぇか?」
供助も言ったが、その技名はアウトかセーフで言ったらアウト。限りなく黒に近いグレー。
猫又に期待した結果がショウもない。このザマである。
「真面目に聞こうとした俺がバカだったよ」
「いいではないか、別にハイパー霊力殴りでも。このままではどっちしろ代わり映えも見栄えもせん、ただの唐変木だの。あと元から馬鹿ではないか」
「よーし、わかった。お前は海と大地の間にあるラ・ギアスに行きてぇらしいな」
「ひぃぃ!? 冗談、冗談だから霊力を抑えてくれ! それと海と大地の間にあるのはバイストンウェルだの!」
只今ご命名頂いた必殺技を早速ご覧あれと、供助は利き手に霊力を集中させ始める。
技名を命名した猫又は当然、何度もその技を目の当たりにして威力を知っている。短い悲鳴を漏らし、テーブルの足の影に体を隠した。
妖気をまともに練れず、防御手段を持たない。今の状態で殴られればタンコブどころでは済まない。下手すれば木っ端微塵である。
「話は聞かせてもらったぞっ!」
突如、居間に轟く男の声。供助と猫又が掃き出し窓の方を見ると、そこに黒くて丸い変なお面を被った一人の男性が居た。
供助と同じ学校の制服に、お面からはみ出て見える金髪。あと耳のピアス。顔が見えずとも言わずもがな、友人の田辺太一である。
「我が名はT・T! 日本人を導く者だっ!」
「何やってんだ、太一?」
「太一? そんなイケメンは知らないな!」
「その仮面どうしたんだ? 買ったのか?」
「さっきコンビニの一番くじで当たった」
お面だけを被った、なんとまぁ中途半端なコスプレ。
せめて肩に掛けてある学生鞄くらいは下ろしとけと言いたい。
「ティンティン? 随分と卑猥な名前だのう、太一」
「太一じゃないって言ってるんですけど! あとティンティンじゃくてT・T!」
「つーかせめてT.T.とかにしろよ」
「人は生まれながらに平等ではないのぅ。頭の出来が」
色々とダメ出しのツッコミを入れられながら、さり気なく掃き出し窓から家に上がる太一……もとい、T・T。




