猫魂 -ニャンタマ- 参
「で、その考えた必殺技ってのは?」
「ふふーん。まぁ正しくは必殺技を考えたというより、供助が持つ攻撃手段を必殺技に変える、という意味だがの」
「……? どういうこった?」
「供助の攻撃、いわゆる殴打や蹴りだの。正直、あれだけで十分の破壊力を持った必殺技に足るものだと思っておる」
「んん? じゃあなんだ、俺にはもう必殺技があるってのか」
「うむ。供助の霊気を最大まで込めた一撃は、私が持つどの技よりも瞬間火力が高い。当たりさえすれば耐えられる妖はそうそう居るまい」
「いや、どう考えてもお前の篝火の方が高威力だと思うんだけどな」
「確かに使い勝手や総合的な部分では、私の篝火が上だろうの。だが、供助の特筆すべきは一点集中の貫通力。それに関しては抜群の性能がある」
「って事はなんだ、結局は今まで通りじゃねぇか」
「さっき言ったろう、供助の必殺技には見栄えさが足らぬと。それを解決するに必要なのは、ずばり……」
「ずばり?」
「必殺技の“名前”だのっ!!」
猫の姿で胸を張り、ドヤ顔をする猫又。
対して供助は、いまいちピンと来ないといった様子。
「必殺技名、ねぇ」
「そう! 必殺技名! それこそが解決策! 供助が必殺技を出す時に技名を叫べば、一気に見栄えするはずだの!」
「とか何とか言うけどよ、猫又。俺はお前が篝火を使う時に技名を叫ぶ所を見た事ねぇんだが」
「……え?」
「え? じゃねぇよ」
「や、ぶっちゃけいちいち技名を叫ぶとか恥ずかしいからの。思春期の中学生じゃあるまいに」
「おいっ! 人にやれとかいっといてそれかよ!」
「だって私は技名を叫ばなくても派手さがあるからの。そりゃ必要なかろうて。対して供助は何もないから、技名を叫ぶ事でカバーせねばならん」
「なんか腑に落ちねぇな……第一、たかが殴る蹴るに名前付けただけで見栄えが良くなるもんか?」
「甘いのう、供助。ホットケーキの上にアイスを乗っけてメープルシロップだくだくにホイップクリームを添えたぐらいに甘い」
「あぁ、そりゃ胸焼けしちまいそうだ」
想像したらなんか喉が痒くなり、供助は喉元を掻きながら苦い顔をする。
時折り無性に甘い物が食べたくなる時があるが、さすがに今のを食ったら次の日まで残りそうだ。
「例えるならば、そうだの……キャプテン羽で日陰大次郎のタイガーショットってあるの? ぶっちゃけあれはただ思いっ切り強く蹴っただけのシュートだが、技名を叫んで派手さがあるであろう?」
「なんだよその例え……いやまぁ、確かにな。言われてみれば叫んでて派手さが出てる気はするけど」
「つまり声に出す事で気合も入り、交感神経を高めて筋力のリミッターを外せたりする。ハンマー投げの選手が叫ぶのと同じだの。そこで私が考えた必殺技名は……」
「おう、なんだ?」
「その名も“ハイパー霊力殴り”っ!!」
「ん?」
「ん?」
耳を疑うような既視感というか、聞き覚えのある名前というか、なんというか。
供助が首を捻ると、釣られるように猫又も首を捻った。




