猫魂 -ニャンタマ- 弐
「そんなんじゃ人気は出んぞ! 掲載順も後ろに行って気付けば連載終了だのっ!」
「いや、それ週刊漫画の話だろ。払い屋に人気もクソもねぇっつの」
「新連載が面白いなぁと思ってたらアンケートを取れず僅か三ヶ月で打ち切り! 単行本にもならず猫又先生の次回作にご期待下さい!」
「なぁ、いい加減に片付けてくんねぇか」
もう何の話をしていたか分からなくなってきて、供助はテーブルに頬杖を突いて呆れ顔を見せる。
太一達が来るまでそんなに時間もない。そろそろ片付けてくれないと間に合わない。
「第一! 供助には! 必殺技が無いっ!」
「ひ、必殺技だぁ?」
「そうだのっ! なんだ、ただ殴るとか適当に殴るとかぶっきらに殴るとかっ! 華が無いにも程があるの!」
「戦えりゃあそれでいいだろうが。華がどうとか関係無ぇだろ」
「うるせぇ! あるっ!」
再度、猫又の後ろに『ドンッ!』という効果音。
が見えたような見えないような迫力。
「さっきも言ったが、供助には派手さが無い。それだと有名になりにくい」
「有名だぁ? そんなんなる必要ねぇだろ」
「考えてみるんだの。有名になれば当然、払い屋界隈だけでなく客側……依頼者側の耳にも名が入る。そうすれば仕事も増え、報酬の高い依頼が来るかも知れんだろう?」
「さっきまでのノリと違ってまともな事を言うな、こいつ。まぁ確かに名が知れ渡るって事は、その分腕が良いって事になるからな」
「だろう? だが、有名になるには地道に成果を上げるのも手だが、やはり決め手……噂になるほどの派手さ、見栄えも必要なんだの」
「お笑い芸人で言う一発芸みたいなもんか」
「そう。有名になる切っ掛け、起爆剤となる一手があった方がいいんだの」
さっきまでは漫画だの人気だの、なんかメタい事を言っていたが猫又だったが、その中にあった本位は意外と筋が通っていた。
最初は適当に聞いていただけだった供助も、理由を聞いてなるほどと納得を見せる。
「その為にはやはり、供助も必殺技なるものを作るべきではないかの?」
「つってもなぁ……俺は殴る蹴るしか能が無ぇし、かと言って武器を使えるほど器用でもねぇし」
「ならば作ればいい! こんな事もあろうかと、私は供助の必殺技を考えていたんだのっ! こんな! 事も! あろうかと!」
「それ言いてぇだけだろ」
こんな事もあろうかと。いつかは言ってみたいセリフである。




