処分 ‐ソノゴ‐ 参
◇ ◇ ◇
友人にそんな事を言われてるとは露知らず。
その頃、供助は見慣れた通学路を歩いていた。
「一週間の停学かぁ……横田さんにも体を休めろって言われてたし、丁度良いっちゃ丁度良いか」
だらだらと歩き、猫背みたく丸まった後ろ姿には哀愁も寂寥も無い。
あるのはいつもと変わらない怠惰感だけ。まだ抜けきれていない昨夜の疲れからか、大きな欠伸を空に向ける。
不良達の乱入によって起きた、体育館での暴力騒動。供助が不良達を相手にして学校や生徒達に被害は無かったが、問題の渦中に居た供助は一週間の停学処分がくだされた。
しかし、悲観もせず、卑屈にもならず、不貞腐れもしない。供助はいきなり連休を貰った程度にしか思っていなかった。こうなる事は予想していたし、覚悟もあって行動をしたのだから。
だが、それとは別で生まれた一つの問題に、供助は軽く頭を悩ませていた。
「昼飯、どうすっかな……」
悩みの原因。それは本日の昼飯であった。
「学食で食う気だったから家に帰っても何も無ぇんだよなぁ」
今日は割安で提供している学食で済まそうと思っていたのだが、まさかの停学で学校から追い出されてしまった。
いつもなら前日に買った半額弁当を持って行くが、昨夜の事件後に猫又が弁当を一つ食べてしまったので、買い置き分が一つ少なくなってしまったのだ。
そのせいで供助の分が減り、今日は久々に学食を利用しようとしていた。のだが、それは無理になったので困っていた。
帰り道のある公園。そこのベンチに座って、供助は休憩ついでに昼飯を何にするか考えてきた。
「あーっ! にゃろめ、供助っ!」
「ん?」
ベンチの後ろ。茂みの中から名前を呼ばれ、供助は背もたれに腕を回して後ろを見やる。
すると、勢い良く茂みから飛び出る黒い影。デジャブ。
「誰が迷い猫だの!? お前が遠くまで投げおったせいでオーバーランしたではないか!」
「んっだ、猫又か。こんなとこで何してんだ?」
「こんなとこでも何も、供助が私の事を投げたせいではないか!」
プンスコと怒ってはいるが、今は猫の姿。迫力もなければ恐怖もない。
他人から見れば変な踊りをして、可愛らしくじゃれてる姿にしか見えないだろう。
「む? そういえば供助、なんでこんな所にいるんだの? 文化祭はどうした?」
「あぁ、色々あってな。個人的な休みってヤツだ」
「それってただのサボりって言うんじゃないかの」
「ま、そんなもんだ」
ぴょこんと軽く飛んでベンチに座る猫又。供助は質問に小さく笑いながら答え、公園を見渡す。
平日の真昼間……ではなく、学校に行ったが今日は土曜日。誰かしら人が居るかと思えるが、今は誰一人いない。
時間は正午を過ぎている。ここで遊ぶような小さい子供は一旦家に帰り、お昼ご飯を食べている頃。
自分たち以外に人がいない事をちゃんと確認して、猫又は供助と話をしていた。




