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     呼名 後 ‐ヨビカタ コウ‐ 伍

「……あ。もしかしたら、あの時かも。キーホルダーに何かされたの……」

「いつだ?」

「供助君は覚えていないと思うけど……小学校の頃、夏祭りの花火大会を見に行ったあと肝試しに行った時があって」

「それは俺も覚えてる。公園裏にある寺だろ」


 忘れる訳が無い。なぜなら、それが切っ掛けだった。

 供助が払い屋になる事を決心し、誰かを助けてあげれる人間になる未来を目指した出来事だったのだから。


「うん……意外、供助君は忘れてると思った」

「で、そん時のいつだ?」

「実はあの時に転んで、このキーホルダーが壊れちゃったんだ。それで私が家に帰ったあとも怖がってたから、様子を見に来たって供助君のお父さんが家に来たの。でも私、怖かったのとキーホルダーが壊れてたので泣いちゃってて……」


 供助からキーホルダーを返してもらい、和歌は昔を思い出して懐かしむ。

 グロテスクな幽霊に付き纏われた怖い記憶が強いが、それ以上に幼馴染が格好良かった思い出。

 あの時の小さくも大きく感じた背中は、今でも瞼に焼き付いている。


「そしたら、おじさんが直してあげるからって。次の日のラジオ体操の時に返してもらって、すぐに直ってすごく喜んだのを覚えてる……もしかしたら、その時かなって」


 元々は真っ白いキャラクターなのに、年季が入っていて少し黒ずんでいるところが目立つ。

 それでも昔の思い出が詰まった大切なもので、和歌は今でも大事に使っている。


「なるほどのぅ。霊具の類を作成するのは、供助の父親が得意とする物であったか」

「いや、物作りは母さんが得意だったんだ。多分、父さんが預かって母さんに頼んだんだと思う。俺の払い屋の型は父さん譲りだからな」

「このような品を作れるという事は、かなり器用な人であったろうな」

「あぁ。魔除けとか霊薬とか、よく色々と作ってたよ」


 傷だらけの猫又を発見したあの夜、手当ての際に使用した薬も母親が作った薬であった。

 金を積まれれば善し悪しが関係無い祓い屋とは違い、払い屋は可能であれば妖怪と共存を望む。

 供助の両親は依頼先で傷付き、人に害を及ぼさないと判断した妖怪には、よく手作りの薬を用いて助ける事も珍しくなかった。


「これが供助君の両親が残した物なら、私より供助君が持っていた方がいいんじゃ……」

「それは俺があげたモンだし、お前が持っているべきモンだ」

「でも、いいの?」

「父さんと母さんは、お前がまた怖い思いをしないようにって魔除けを仕込んだんだ。それを俺が無駄にする事ぁしたくねぇし、する気もねぇよ。持ってれば霊障に襲われる事はまず無ぇ。大切にしてやってくれ」

「うん、今まで以上に大事にする」


 和歌はキーホルダーをギュッと握り締め、柔らかく微笑んだ。


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