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第七十話 呼名 後 ‐ヨビカタ コウ‐ 壱

「田辺君に任せて大丈夫かなぁ……大森君も一度倒れてたから、ちょっと心配」

「なら、今からでも学校に戻れよ。俺はこの通り、なんも問題無ぇからよ。頭にウザったいのが乗っかってる事以外は」

「んーん、私も帰る。田辺君と大森君も心配だけど、それ以上に無茶する古々乃木君が心配だから」

「へぇへぇ、そうですか」


 隣を歩く和歌を半目で一瞥して、供助は顎をしゃくれさせた。

 その頭の上に乗っかり、二本の尻尾をゆらゆらと揺らす猫又。


「ところでイインチョウ、太一が家が近いと言っておったが……」

「あぁ、はい。私の家は近いって言うか、古々乃木君の家の隣なんです」

「ほう、まさかお隣さんだったとは。これはびっくりだの」

「あの、それより猫又さん。ちょっと聞きたいんですけど」

「うん? なんだの?」

「なんで猫又さんも私の事を委員長って呼ぶんです……?」


 実は結構前から気になっていたのだが、聞くタイミングがなくて先延ばしになっていた疑問。

 和歌は供助と太一と同じクラスで委員長をしているから呼ばれるのは分かるが、クラスメイトでもない猫又から委員長と呼ばれるのは違和感があった。


「その事か。イインチョウの名前を聞いておらんかったからのぅ。だから、供助と同じようにイインチョウと呼ばせてもらっておった」

「あ、すみません。そう言えば名乗っていませんでした。私、鈴木和歌って言います」

和歌(のどか)か。うむ、お隣さんという事はこれから会う事もあるだろうからの。よろしくだの」

「はい。よろしくお願いします」


 供助の頭の上で笑みを見せる猫又に、和歌も微笑みで返す。


「で、和歌にもう一つ聞きたい事があるのだがの」

「はい? なんですか?」

「さっきから供助の事を古々乃木と呼んでおるが、一度だけ『きょう君』と呼んでおったの?」

「うぇひっ!? えっ、わ、私そんな呼び方してましたかっ!?」

「しておったの。いや何、家が隣といい、同い年といい、その呼び方……和歌は供助と昔馴染みなのかと思っての」


 和歌は変な声を出したと思えば両手で口元を押さえて、顔を真っ赤。完全に無意識だったらしく、恥ずかしさからか少し顔を俯かせる。


「いえ、その、それは、えーっと……」


 恥ずかしそう、というよりも、どこか気まずそうに。和歌は隣を歩く供助へと目を向ける。

 その視線を感じ取ってか供助も和歌の方を見て、二人の目が合った。


「まぁ、別に隠すような事でも無ぇしな。委員長とは昔は結構仲が良かったんだよ。その『きょう君』ってのもその頃の呼び名だ」

「ほう。昔馴染みというより、幼馴染であったか」

「まだ小せぇ時に俺が今の家に引っ越してきてな。それからの間柄だ」


 供助と猫又が話している間もやはり、和歌はどこか気まずそうにしている。



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