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      呼名 前 ‐ヨビカタ ゼン‐ 弐

「俺達ぐらいはさ。お前が似合わない人助けしたってのを覚えていて……ガラでもないなって、からかう奴が居てもいいだろ?」

「だからせめて、私は……私達だけは、古々乃木君に“ありがとう”って言ってあげたいの」


 供助の目を真っ直ぐ見て、逸らさず、必死に伝えたくて。三人は笑っていても自分達の意志は揺らぎなく、後悔は無い選択をしたのだと。

 供助も供助なら、友人も友人だった。お互いに揃いも揃って、友人の事を思って自分の身を削る生き方を選ぶ天邪鬼だったのだ。


「……ったく、なんだかなぁ」


 供助はそう漏らして、頭をガシガシと掻く。

 こうなってしまっては太一達は譲らない。長い付き合いで互いの性格は知っている。供助が何を言おうと、三人は決して曲げない事を。それが自分じゃなく友人を想っての事ならば尚更。

 慣れない嬉しさとむず痒さから、何より照れを見せるのは恥ずかしいと。大きな溜め息を吐く振りをして、俯かせて顔を隠す供助。


「青春だのぅ」


 その一連の流れを見ていた猫又がぽつりと、そう呟いた。


「わあったよ、お前等に何を言っても無駄だろうしな」

「そういう事。お前も頑固なら俺達も頑固ってな」

「けど、記憶を残した以上、色々と面倒な事もあんだぞ」

「その辺は大丈夫。俺等に事情聴取してたおっちゃんがこれくれたんだ」


 言いながら太一がポケットから出すのは、消しゴムくらいの大きさの布袋。

 今回の不巫怨口女の影響で、霊感が無い太一達は妖怪や幽霊に感覚が引っ張られやすくなり、見えやすくなっている。

 それを防ぐ為の魔除けで、お守りのような物。前に供助が友恵にあげた御札もどきみたいなものである。

 もっとも不器用で霊力が高いだけの供助と違って、霊具作り専門の者が作った代物。効果は比較にならない。


「これを一週間は手放さず持ってろって言われたよ。今回の化物の影響で、しばらくは幽霊とかの類が見えやすくなっているからってよ」

「霊感が無ぇ奴が霊や妖を視ちまうってのは危険だからな。熊が出る春先の森を素っ裸で歩くようなもんだ」

「幽霊が見えるっていうのは、そんなに危険なのか……」

「まぁ全部が全部って訳じゃねぇけどな。そこにいる猫又みてぇなのも居るが、全体的には人に害を生む奴の方が多い」


 特に幽霊の場合は悪意を持たずに人を襲うモノもいる。その多くは地縛霊や浮遊霊に多い。

 事故によって不慮の死に遭ったり、自殺して強い念を残して死んだ場合。あの世に行けず現世に留まり、苦しみ続けている霊。

 そういうモノは苦しみから解放されたく、助けを求める。本来ならば誰にも気付かれずに終わるが、今の太一達のような状態の人間には危険極まりない。

 自我を持たず、死に際の苦しみと痛みを訴えてくる。霊感が無く対処方法を持たない人間は容易く取り憑かれ、その霊の怨念に囚われて同じような末路を歩む事も少なくない。


「でも、妖怪の猫又さんは見えるんですね」

「今は人型でも無く、そこら辺におる普通の猫と変わらん。それに私は体を持った猫だからの。実体を持たん霊や妖と違って、霊感や霊視云々を抜きに一般人でも見える」

「普通の猫は喋らないと思いますけど……」


 同じ妖怪でも様々なんだと思いながら、和歌は足元に居た猫又を見下ろす。


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