表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/457

    探者 妖 ‐サガシモノ ヨウ‐ 弐

 横目で見ていた供助から一度視線を外し、正面を見て。

 猫又は眉を微かに寄せ、感情を押し殺すように下唇を噛む。


「共、喰い……?」

「狐の妖怪でな。何か知らんかの?」

「悪いな、俺は力になれそうにねぇ」


 供助は猫又に答え、肩を竦め鼻を鳴らす。


「……そうかの。まぁ、そう簡単に手掛かりがあれば今頃見付けておるか。聞きたい事はそれだけだの」


 猫又の強張っていた表情は解れ、微苦笑しながら天井を見上げる。

 残念そうな素振りを見せず、現に残念とは思っていないだろう。

 ただ、残念でなくとも。一向に進まない現状に対する歯痒さを、供助は知っている。

 同じく妖怪を探している身として。


「まぁ待てよ。俺は、って言ったんだ」

「うぬ?」

「バイト先の上司なら、もしかしたら何か知っているかもしれねぇ」


 供助がスウェットのポケットから取り出すは、携帯電話。


「一時間くらい前にお前を拾った事をメールしてな。目を覚ましたって報告ついでに聞いてやる」

「いいのかの?」

「言ったろ。あくまでついでだ。お前の為じゃねぇよ」

「前言撤回。供助、お前は気が利くの」

「ぜん……なに?」

「前言撤回、と言ったんだの」

「何語だ、そりゃ」

「……ふむ。今度は代わりに頭が悪いを追加だのぅ」


 携帯電話の画面を操作している供助に、猫又は呆れた目を向ける。

 供助が自分で頭が悪いと言っていたが、さすがに猫又はここまでとは思っていなかったようだ。


「ちなみに、探している理由を聞いちまっても?」

「ふむ、そういえば供助。この家は一軒家のようだが、一人で住んでおるのかの?」

「あぁ、一人だ」

「両親は居らんのかの?」

「今、それは関係あるか?」

「関係無いの」

「……言いたくねぇ、って事か」


 遠回しに言う猫又に面倒臭さを感じながら、意図を読み取った供助は肩を竦ませた。

 携帯電話のリダイヤル画面からある電話番号を探し、供助は電話を掛ける。


「それでも聞きたいと言うならば、過剰なリップサービスにはチップをやらねばならなくなるの」

「拾った猫からチップを巻き上げる程、俺ぁ貧乏じゃねぇ。少ねぇ妖力を無駄遣いすんな」


 妖力が込められて爪が伸びる、猫又の右手。

 供助は(なだ)めるように手を小さく手を上げ、携帯電話のレシーバーから鳴り始めた発信音に意識を向ける。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ