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      十分 -ジカンカセギ- 参

「手数の多さには負けるけどよ……手癖の悪さなら負ける気しねぇぜ!」

「イィィィィィアアアァァァァァアァアァッ!」


 供助の接近に合わせ、不巫怨口女も迎え討とうと数本の手足を宙で向きを変える。

 互いの間にある距離は五十メートル。供助の攻撃範囲にはまだ遠いが、不巫怨口女にとっては既に文字通り手の届く距離。

 手と足。全ての指の爪を立て、伸縮自在の四肢が高速で供助へと襲い掛かる。その数、四本。


「ハッ、数が少ねぇな! 腹が減った状態じゃ力が出ねぇってか!?」


 四本の内、先行する二本。それを目で捉えながら、供助は煽る言葉を口にする。

 もっとも、言葉を理解しているとは思えない不巫怨口女に対しては意味が無い。だが、それを解っていてあえて言うのは、軽口を叩いて供助自身の戦意を奮い起こす為であった。


「アァァイィアァァァァアァアァッ!」

「どっ……せいっ! おらぁ!」


 一本は右手で払い、二本目は左手で叩き落とす。めぎり、と木の枝を捻り折ったような鈍い音。

 指が疎らな方向へと向けられた不巫怨口女の手足は地面に落とされ、供助は残りに備えて直ぐさま拳を構え直す。


「次っ!」

「アアアアァァァァアァァァ!」


 痛みか、怒りか、それとも今もなお収まらない過去への怨みからか。耳を塞ぎたくなるような不気味な絶叫を轟かせ。

 (あやかし)は自分への驚異となる煩わしい存在へ、邪魔をしてくる供助へ。黒々しい敵意と妖気が籠こもった二本の凶手を伸ばす。


「アアアァアァァァァウウゥゥアァ!」

「曲がっ――――!」


 ……否。不巫怨口女が敵意を向けていたのは、供助では無く、その後ろ。

 供助と接触する寸前。二本の腕は股開きに方向を変えて、後方に居た猫又へとその手を伸ばす。


「なんっ!? 私を狙って……!」

「ちぃ!」


 供助は両手を大きく開き、横を素通りする不巫怨口女の腕を鷲掴む。

 しかし、勢いが付いた二本の腕はすぐに止まらず。さながら急ブレーキを掛けた電車の車輪の如く、供助の手の中を滑らせていく。


「ぐ、く……こ、んのぉ……!」


 奥歯を噛み締め、弾かれそうになる指へと集める霊力。

 手の平全体ではなく、指への霊力集中。五指は鋭い杭と化し、不巫怨口女の腕の肉へと抉り刺さる。

 そして、供助が腕を掴んでから十メートル先でようやく、その勢いが制止した。


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