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      二重 ‐ハヤイモノガチ‐ 参

「俺と君等は商売敵だどうだ言う気はさらさら無い。が、報酬の取り分が減るなんてのは絶対に嫌だね」

「不巫怨口女の影響によって気ぃ失っている人間が何人も、何十人も居る。そいつ等が喰い殺されるかも知れねぇってのに、てめぇは金が第一か……!」

「なぁんか勘違いしてないか、少年?」

「あぁ?」

「俺は“不巫怨口女を祓え”という内容の依頼を受けた。気絶してる人間を救う救わないはそっちの都合で勝手なエゴだろ。ここに居る生徒がどうなろうと俺には関係無い」


 七篠は煙草を持つ右手を軽く上げ、人差し指と中指に挟まれた煙草の尻を親指で軽く弾き、落とされる先端の灰。

 床に倒れている女性生徒の頭に落ちそうになるも、気にしていない。そう、七篠は気にしていないのだ。自分に関する事じゃ無い限り、七篠は気にしない。

 仕事に、金に、儲けに。それ等に関係しないのなら、気にしない。気にならない。気に、掛けない。 

 だから、報酬金額が左右されないのなら学校の生徒の安否など、微塵も気にしない。関係無い。


「俺は与えられた依頼を内容通りに仕事をするだけだ。それ以上の手間なんて掛ける気は全く無いし、必要も無い。依頼は依頼。それ以上でも以下でもない」

「こ、の、男は……ッ!」


 ギリ、ギリリ。

 込み上げてくる怒りに、七篠という男の最低さに。猫又は奥歯を強く噛み締め、目を見開いて鋭い猫目を晒す。


「怒りの矛先は俺じゃなく依頼主様に向けるんだな。人命優先にする良識人なら、こんな依頼内容にしなかっただろうよ」

「貴様も十分に同類であろうが、祓い屋……!」

「過度なサービスは相手が付け上がる場合がある。線引きはきっちりと。それが仕事の出来る人間ってもんだ。金にならないボランティア、無駄な労働、サービス残業……そんなのは絶対にゴメンだ。少年もそう思うだろう?」

「何が出来た人間だの。腐った人間がよく言う」

「ま、交渉は決裂したが敵になるって訳じゃあない。君等が俺の邪魔さえしなければ、こっちから手を出す事もしないさ」


 協力はしないが敵意は無いと、七篠は右手の煙草を口へ運ぶ。


「……あぁ、そうだな。あんたの言う通りだ」

「供助っ!?」

「行くぞ、猫又」


 振り返り、背を向け。

 そして、背中越しに。七篠を睨み付け、しかし静かな口調で。


「交渉が決裂した以上、こんな野郎と話すのぁ“無駄な労働”だ。“金にならないボランティア”以下のくだらねぇ事に時間を使うのは勿体無ぇ。時間が無ぇ今は特にな」

「うむ、今はこんな奴の相手をする暇なんて無いからの!」


 供助は別ルートから不巫怨口女を探そうと足を進める。

 追うように猫又も供助に付いて行き、七篠の方へと一度振り向いて。


「イーッ! っだの!」


 去り際に、唇を左右に引いて白い歯を剥き出し、不愉快の意を顔で表して行った。 


「あらら、随分と嫌われちゃったようで。結局は払い屋と祓い屋。そうそう相入れる事は無いか」


 七篠は去っていく二人を眺めながら、微かに苦笑いを浮かべて肩を竦めた。

 静かになった廊下に立ち、煙草を一息吸って。


「ま、互いに仕事だからな。ここからは何があっても恨みっこ無しって事で」


 目深(まぶか)に被るニット帽を左手で少し上げ、七篠は紫煙を吐いた。


「さぁて、俺も働きますかぁ」


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