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      姿現 ‐カイテキ‐ 弐

「この声は聞き覚えがある。これは……今探している太一という友人の声に似ておるの」

「本当か、そりゃ!?」

「うむ。一度しか会っておらぬから自信は無いが……恐らく」

「どっちから聞こえるっ!?」

「あっちからだの」

「職員室の方か……!」


 供助は速度を上げ、猫又が指差す方向へ走る。向かうは職員室。

 幸運な事に、今供助達が居るのと同じ棟に職員室がある。階が違うだけで距離は遠くない。

 猫又が声を聞き取った……つまり、太一は気を失わずに意識を保っているという事。

 なぜ不巫怨口女の影響を受けず起きているのか、そして無事なのか。供助は期待と不安が膨らむ。


「――、――っ!」


 階段を駆け上がり、職員室まであと少し。

 あとは廊下の突き当たりを曲がるだけ……そこで、なんと言っているのかまでは聞き取れなかったが、確かに人の声が聞こえてきた


「供助、今……」

「ああ、俺も聞こえた。ありゃあ太一の声だ……っ!」


 供助の走る速度がさらに上がる。探していた友人の声を確かめ、供助は無事である事を心内で祈る。

 突き当りを曲がり、職員室がある廊下へと出るとそこには。職員室前の廊下で独り言を言っている、太一が居た。


「やっぱり繋がんねぇ! なんでこんな時に限って電波が悪くなんだよっ!」


 スマートフォンの画面を切迫した様子で睨み、焦燥の様子で声を荒くする太一。

 廊下には数人の先生が倒れ、当然意識は失っていた。


「おい、太一っ!」

「き、供助っ!?」


 声を掛けられ、身体を軽く跳ねさせて驚く太一。

 周りは気絶して無音無声の静寂。そんな中でいきなり名前を呼ばれれば、驚いていまうのも無理はない。

 供助は太一の所へと駆け寄り、傷も無く顔色も良いのを確認して安堵する。


「お前、なんで……帰ったんじゃなかったのか?」

「ちょっとあってな。お前ぇが無事で良かった」

「それより大変なんだって! いきなり皆が倒れてよ! 携帯は繋がんないし、先生も全員気を失っちまってるし……!」

「あぁ、解ってる。とりあえず落ち着け」


 太一は声を荒げていたが、知り合いが現れた事に安堵する。それを供助が落ち着かせ、供助もまた、友人の無事に胸を撫で下ろす。

 だが、学校中の生徒と先生が倒れるという異常事態。太一が混乱し動揺もするだろう。


「この者達もやはり生気を吸われてるの……顔色も悪い」

「供助、この人は?」

「俺の連れだ」


 猫又は近くに倒れていた教師の顔色を伺い、生徒と同じく生気が吸われているのを確認する。

 中身は妖怪でも、見た目は美女の猫又。供助と一緒に現れた見知らぬ女性に、太一は気になり供助に聞く。

 男性として美女が現れれば気になるのは当然だが、服装が黒色の着物という珍しい格好なのも理由の一つだろう。

 さらに加えるなら、頭の猫耳。腰の付け根から生えている二本の尻尾。これが目立ってしょうがない。


「その、なんだ……この人はコスプレが趣味なのか?」

「ま、そんな所だ。それより、さっき携帯電話がどうとか言ってたよな?」

「そうなんだよ。さっきから電波が悪くて電話が繋がんないんだよ……早く救急車を呼ばなきゃならないのに」


 すっかり隠すのを忘れていた猫耳と尻尾。普段ならすぐに隠していたが、今の状況ではそこまで頭が回らなかった。

 かと言って本当の事を話す訳にはいかず、供助は太一が言ってきたのに合わせて適当に誤魔化す。



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