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      事端 後 ‐ヒトノゴウ コウ‐ 弐

『そして、話は現在に至る……って訳だ』

「成る程。その不巫怨口女とやらの封印が解けてしまったのか」

『不巫怨口女は元々渡り巫女。封印と同時に御霊(みたま)(しず)めも含め、寄り代は祀り場所を定期的に変えるようにしていた』

「御霊鎮めか。確かに、今回の妖怪は怨念が深く強い。その方法は時間が掛かるが、怨念を弱める効果的な方法ではあるの」

『祀り場所を変えるのは周期は二十年に一度。次に不巫怨口女を祀る場所を探し、候補となる村に了承を得て、封印術を新たにして人目の少ない山奥などに祠を移動させる。それと同時に、封印されている祠を管理する者も交代される』

「それで、今回の移送中に事件が起きた訳かの」

『俺もこんな事態になるとは思っていなかったよ。依頼の内容が内容だからね、慎重に下準備をしていた……と言うのにこれだ。何か怪しいと思い、前の祀り場所があった村長を問い詰めた』


 次々と出てくる問題に、横田の声は疲労と落胆で覇気が無い。

 しかも、様子からして宜しくない情報が出てくるのは予想できる。


『そしたら案の定だよ、こっちに教えてくれていた情報は嘘っぱち。封印術の効果期限が過ぎていたにも関わらず、新たな封印式どころか祀り先を決めないで先延ばしにしていた』

「管理者とやらが封印の期限を知らなかった……という訳ではなさそうだの、その言い方では」

『不巫怨口女が封印されたのは約五百年前。魑魅魍魎の類への関心が無くなっている現在、管理者もその中の一人だった。管理の怠慢のせいで申請が遅れ、今回の事件が起きた』

「昔と比べ信仰が薄くなっていく今世……軽薄に扱うのは哀しい事だの」


 昔は神仏に感謝や慰霊の為に行われていた祭りが多々あったが、そういうものは今じゃめっきりと減った。

 それは人々から信仰が薄くなっている表れで、とても哀しい事である。


『だが、おかしな点がある。依頼自体は移送だけという簡単なものだが、封印されている妖怪は非常に危険なモノだ。万が一が無いようにと、厳重な注意と万全の準備、下調べをした。しかし……』

「その時には特に問題は無かった、と?」

『そうだ。基本、封印式の効果期限は本来の期限よりも短く記述される。そうすれば今回みたいなケースで遅れて動いてもフォロー出来るからね』

「ふむ、賞味期限と消費期限みたいなもんだの」

『だと言うのに、まだ効力がある筈の封印が解けた。そこが不可解だ。そこはウチでちゃんと確かめたし、術式の効力もまだ十分残っていた。第一、封印の期限が切れていたら移送を行う前に新しい封印術を施している。なのに封印が解けたという事は、何か他の原因があったと考えられる』


 やはり、他に何か……別のイレギュラーがあったと考えるべきだと、横田が呟く。

 その言葉に猫又も、怪訝な表情を浮かべた。


『……が、今はそれが何かを考えるよりも先にしなければならない事がある。移送要員の他に護衛を五人付けていたが、封印が解けた際に全員が負傷してまともに対応出来ないでいる。さらに、人喰い対策で供助君が住む五日折市(いつかおりし)付近に配置していた払い屋も、最近妖怪が多くて遠くに離れてはいないが別の依頼ですぐに動けない状況だ』

「つまり、近くにまともな戦力になる払い屋は居なく、私達に白羽の矢が立ったという事かの」

『すまないが、その通りだ。今は護衛で付いていた払い屋が負傷した状態でなんとか結界を張り、ある場所に留めている』

「そのある場所と言うのが……」

『さっき言った通り、供助君が通う石燕高校だ』


 ピクン、と。供助は僅かに眉を寄せるだけの反応を見せるだけ。

 相変わらず会話には入らず、話だけを静かに聞いている。全速力で走り、目的地である石燕高校を目指しながら。


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