表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/457

第五十二話 事端 前 ‐ヒトノゴウ ゼン‐ 壱

 着信音を鳴らして存在を主張する、供助の携帯電話。

 先ほど感じ取った異様な妖気と、尋常じゃない怨念。さらには、携帯電話の画面に表示される『横田』という二文字。

 嫌な予感が……いや、嫌な予感しかしない。供助は鼻で空気を吸い、口からゆっくり息を吐く。嫌な予感を振り払うように。

 そして、テーブルの上で鳴り震える携帯電話を手に取り、供助は電話に出た。


「もしも……」

『――――供助君、いきなりですまないが依頼を引き受けて欲しい』


 電話を受けるや否や、横田は供助の短い言葉も待たず。いつもの雑談もくだらないやり取りも無く。

 声も少し早口で、受話器越しでも切迫した雰囲気が伝わってくる。


「随分と急っすね。その依頼ってのは何時(いつ)です?」

『――――今から、だ』

「……ホント、急っすね」


 供助は前髪を掻き上げ、小さく溜め息して心の中で呟く。

 嫌な予感ってのは当たっちまうから嫌な予感なんだ、と。


『引き受けて欲しいと言っておいて悪いけど、今回の依頼は強制だ』

「拒否権は無い、って事っすか」

『それだけ緊急でね。非常事態なんだ』

「さっき、物凄い妖気を感じた。今回の依頼……それに関係するんですか?」

『やっぱり感じていたか、その通りだよ。妖気を感じ取って解ると思うが、非常に厄介な依頼でね』


 普段は飄々(ひょうひょう)とした喋りをする横田が、一切の冗談も雑談もしない。声も重く、低く。

 今回の依頼の重大さ、いかに緊急なのかが解る。


『すぐに現場に向かう事は出来るかい?』

「大丈夫です。動きやすい服に着替えるだけなんで、すぐ出れます」


 横目で猫又を見ると、頭の猫耳を一動させてから供助に頷いて見せる。前に猫又が、猫は人間と比べれば遥かに耳が良いと言っていた。

 さっきの妖気に、このタイミングで横田からの電話。こんな状況で気にならない訳が無い。

 供助と横田の会話を、猫又はしっかり聞き取っていた。


『なら、今すぐ向かってくれ』

「えっ……すぐって、本当に今すぐなんですか!? 払う目標の情報とか……」

『時間が惜しい、君達が現場に向かう間に電話で話す。それだけ緊急事態なんだ』

「でもせめて場所くらいは教えてくださいよ。でなきゃあ現場に向かいたくても向かえませんよ」

『そこ、なんだよねぇ……一番厄介なのは』

「どういう事っすか?」

『今回の依頼、その場所なんだけど』


 少し声を曇らせながら、横田が伝えた言葉は。

 供助の表情を強ばらせ、そして、今回の依頼がどれだけ緊急なのかを認識させた。


『――――君が通っている、石燕高等学校だ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ