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      不変 ‐カワラズ‐ 弐

 太一のくだらない下心を一蹴し、床に置いていた自分の学生鞄を拾う供助。

 供助のクラスが行う演劇は二日目の日曜日だが、文化祭開始日は明日。その為、作業が広く行えるよう教室の机は端っこにまとめて重ね置かれている。


「待てよ、俺も行くって」

「あ? お前は学校に泊まんだろうが」

「ちょっと休憩。自販機で飲み物買いにな」


 夜の八時を過ぎていて購買部はとうに閉まっているが、購買部の横に設置された自販機は稼働している。

 値段は学生に優しいワンコイン。ただし缶類だけ。ペットボトル等の容量が多い物は数十円高い。それでも定価よりは十分安いが。

 供助達、二年生の教室は二階。教室を出て、廊下を歩き、一階にある購買部まで移動する。


「あーあ、本来なら明日っから土日で休みの筈なのによ」

「そうボヤくなって。代わりに月曜と火曜が代休なんだからさ。休日登校だけど授業が無いと思えば楽だろ?」

「まぁな。でも面倒臭ぇモンは面倒臭ぇんだよ」


 購買部に着き、自販機で飲み物を買う太一に愚痴る供助。

 周りの電気は消えていて、購買部前の光源は自販機の明かりと非常口の緑色の光だけ。この辺りでは文化祭準備をしている生徒は居らず、静かで中途半端にある光が廊下を不気味に照らす。

 太一は自販機の取り出し口から買ったペットボトルを取り出し、キャップを開けて中身のお茶を二、三口飲む。


「今日も半額弁当を買いに行くのか?」

「俺の主食だからな。それもあってこんな時間まで手伝ってやったようなもんだし」

「自炊とかすればいいだろ」

「俺がするとと思うか? 自炊をよ」

「全っ然。供助がエプロンして台所に立つ姿なんて想像出来ないわ」


 太一はキャップを締めてペットボトルを片手に、薄暗い廊下を供助と歩く。太一の目的を果たしたら、次は供助の目的を果たす。つまり、帰るので外靴に履き替える為に昇降口へと向かう。

 購買部から昇降口まではほぼ真逆で、校舎内を迂回するように歩かなくてはならない。購買部の近くにも大きめの出入り口があるが、それは業者が商品を運ぶ為のもので、普段は鍵が掛かっていて生徒達が出入り出来なくなっている。

 廊下の窓からは向かいの教室が見えて、複数の教室から明かりが漏れているのを見ると、学校に泊まる生徒は結構居そうだ。

 一応、自分の都合で文化祭準備に手伝ってもらった手前、太一は昇降口まで供助を見送る気なのだろう。


 他愛無い話をしながら、夜の校舎を渡る二人。廊下がいかに薄暗く不気味さがあっても、校舎内に多くの生徒が居ると思えば怖さも半減する。尤も、払い屋をしている供助が心霊関係で怖がる事は無いのだが。

 そして、角を曲がって少し広めの廊下に出た所で。大きい扉が僅かに開いていて、隙間から微かな光が漏れているのが目に入った。

 理由は特に無い。人間の習性の一つとも言えよう。スイッチを押すなと言われると逆に押したくなるように。完全に扉が閉まっていれば気にもならないが、中途半端に扉が開いているとつい覗いてしまう。


「お、やってるなぁ委員長」

「委員長?」


 太一が扉の前で立ち止まり、供助も釣られて一緒に扉の向こうを覗き込む。

 扉の先は体育館。殆どの電気は消えていて、壇上だけの明かりだけが点いていた。そして、その壇上に居たのは、太一が言った通り委員長だった。


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