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第四十六話 幼馴 前 ‐オサナナジミ ゼン‐ 壱

 本日の授業も全て終わり、時計の針は午後五時を指している。

 文化祭まであと一週間を切り、放課後にも関わらず校内は慌ただしい。忙しさの中に賑やかさも混じって、生徒達は楽しそうに各々の仕事をしている。

 青春は長いようで短い。いつか笑って話せる思い出を作ろうと、文化祭の準備を満喫する多くの生徒。

 祭りは準備が一番楽しいとも言われるが、結局は準備も本番も楽しいのは変わらない。そんな学校中が青春の一ページを書き足している中、校内の喧騒から逃げ出す一人の生徒が居た。

 少し癖っ毛混じりで前髪が数本垂れたオールバックもどきの髪を、無造作に掻き上げて大きく溜め息する。

 屋上に続く階段の上。屋上の扉がある踊り場に隠れて、供助は缶ジュースを煽った。


「っはー、だっる」


 供助は缶から口を離して一息つき、地べたに座って壁に背中を寄っ掛からせた。

 何気無く顎を上げると、薄汚れた天井が見えた。創業何年かは知らないが、年季のある校舎だけに染みや汚れが目立つ。

 つい先程までは供助も文化祭の準備を手伝っていたが、元々やる気が無いので隙を見て個人的な休憩を取る事にした。

 これといった大きな仕事を任されている訳でもないのに、妙に疲れていた。浮かれている周りに、どうも馴染めないでいるもの疲れの一因だろう。

 肉体的ではなくて精神的な疲労。あまり自分と合っていない空気の中に長時間居たら、ストレスも溜まってしまう。


「よくまぁあんだけ熱心に出来るもんだ。何をあそこまで夢中にさせるんだかねぇ」


 もう一口ジュースを飲んで、理解出来ないと漏らす供助。

 協調性が欠ける性格の供助には、生徒でワイワイやる学校行事は面倒で怠いだけだった。


「一息入れねぇとやってらんねぇっての」


 供助は壁に寄り掛かっていた背中をずるずると滑り落として、殆んど寝っ転がった状態になる。

 今日は空が曇っていて快晴ではないが、少し湿った暑さがある。ひんやりした床のタイルが気持ちがいい。サボっている事がバレたら委員長にまた五月蝿く言われるが、関係無いと半分開き直ってサボタージュを決め込む。

 それに供助はそれなりに仕事をした。他のクラスメイトと比べれば少なく、あくまでそれなりに、だが。


 小道具の製作を少し手伝ったり、廃材を焼却炉に持って行ったり、買い溜めた材料を保管場所から持ってきたり。供助は太一と同じく舞台の小道具関係が役割だが、不器用な供助は製作部分ではあまり戦力にならない為、殆どは材料運び等の力仕事が多かった。

 何をするでもなく、ただボーッと踊り場の天井を眺めて時間を潰す供助。さすがに校内の殆んどを使用する文化祭といっても、普段から解放されていない屋上は範囲から外されている。隠れてサボるにはこの上ない場所と言えよう。

 校内の賑やかさが遠くのように感じ、まるでここだけ隔離されているような静かさがある。その静かさが落ち着けて、人気が無いからゆっくり出来る。


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