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     見付 ‐ハッケン‐ 肆

「供助が飼ってんのか!? 猫を!?」

「まぁな」

「あの面倒臭がり屋で動物の世話なんて似合わない粗雑な供助君が!?」

「祥太郎、お前何気に言いたい放題だな」


 しかしまぁ予想通りの反応だと、供助は小さく肩を揺らした。

 自分の性格は知っているし、周りからの印象も重々承知している。だから、この反応は至って当たり前のものだ。

 数週間前の供助本人だって、まさか妖怪とは言え猫と一緒に暮らすことになるとは思ってもいなかったのだから。


「いつから動物愛護に目覚めたんだ、供助」

「んなモンに目覚めたつもりも、この先目覚めるつもりも無ぇよ」

「じゃあどうして猫を飼ってるの?」

「ちょいとバイト先で頼まれちまってな。しばらく預かる事になったんだ」


 二人の質問に答えていく供助。

 詳しく教える訳にはいかないが、霊能関係に触れない範疇でなら答えても問題ない。なので、それなりに正直に話す。


「へぇ、供助が猫をねぇ……似合わないな」

「言うな。自分でも解ってる」


 再び右肘をテーブルに突いて頬杖し、左手で掴み上げる猫又を半目で見やる。

 太一に言われるまでもなく、動物を飼うなんて似合っていないのは自分が一番知っている。

 そもそも自分以外の生き物の面倒を見るなんて事は、一人暮らしで自分が食っていくだけで精一杯の供助には無理である。

 猫又が妖怪で言葉が通じるお陰でなんとかなっているだけで、普通の犬猫だったらとっとと家から追っ払っているところだ。


「でも、供助君は一人暮らしだから賑やかになって寂しさが紛れるんじゃない?」

「あぁ? 寂しくねぇし、一人の方が楽だっつの。それに大食らいで食費が嵩むし、ぎゃあぎゃあ騒いで喧し……あだっ!?」


 供助が太一に喋っていると、供助に掴まれていた猫又が大きく体を揺らして猫キック。その反動を利用して、猫又は供助の手から逃れて畳の上に着地した。

 いつもだったら蹴ってきた猫又に文句の一つでも言っているところだが、今は太一と祥太郎が居る。

 供助は喉まで出かけた言葉を飲み込み、何食わぬ顔で前足を舐めている猫又を一瞥(いちべつ)して我慢する。


「まぁなんだ、そんな訳で今は俺の家で猫が居候してんだわ」


 供助は蹴られた顎を擦り、猫又は前足を前に出して背伸びする。


「ふーん、なんのバイトしてっかは知らないけど、面倒な仕事もあるもんだな。猫を預かって世話するなんてよ。いつもは夜中にバイトしてるらしいし、大変だな」

「全くだ。面倒ったりゃありゃしねぇ」

「供助がやってるバイトって何でも屋かなんかなのか?」

「何でも屋でも万事屋でもねぇよ。仕事先の上司から殆んど強制的に寄越されただけだ。誰が好き好んでこんなの飼うか」


 横田に言葉巧みに言いくるめられて猫又と同居する事になった為、供助の台詞もありがち間違っていない。

 横に居る猫又が何度か膝に猫パンチをしてきたが、痛くも痒くもないので供助は無視して話を続ける。


「でもいいんじゃないかな? 供助君の家に癒しキャラが出来たって考えれば」

「癒しどころか卑しいだけだぞ、この糞猫は。食っちゃ寝ばっかだからな」


 先程の猫キックのお返しとばかりに悪たれ口を言う供助に、猫又は猫パンチを繰り出す。

 太一と祥太郎が居て喋れず人型にもなれない猫又の、せめてもの抵抗である。


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