第7話 夏休みと一悶着
今回、新キャラが登場します
「それでは、今日はここまでとします」
四限が終わると同時に、生徒たちは昼食の準備に移る。
「ねえねえ、お昼はどうするの?」
「あー、俺弁当用意してないから、食堂にしようかなって思ってるんだ」
突然聞いてきた中井さんに、俺は朝の惨状を思い出して苦笑いを浮かべながら答えた。
「あ、それじゃ私が案内してあげる」
「お、何だ何だ面白そうだな。この俺も参戦するぜぃ!」
快く名乗りを上げてくれたのは、隆だった。
「サンキュ、二人とも」
「言いのいいの、お近づきのしるしだよ」
「そうだぜ。同じ男同士、仲良くやろうぜ」
そう言ってくれる二人の優しさが、とても俺には嬉しかった。
矛盾の魔法使い 第7話「昼休みと一悶着」
「ここの食堂は料理の味もいいことからものすごく混むんだ。だからもし食堂にするんなら早めにいくことだ」
「そうしないと、日替わり定食はすぐに売り切れになるし、食べる時間もなくなっちゃって最悪の場合は知って教室に行くことになるから気を付けてね」
「わ、分かった」
俺は二人からのアドバイスを必死に覚えた。
食後すぐに走ると体に悪いのは周知の事実だ。
俺はそう言う目に合わないと誓ったのであった。
「ちなみに、今から言ったらアウトか?」
「いやいや、まだ昼休みが始まって5分だからまだまだだ。でも、あと5,6分遅れればダッシュで教室に行くことは決定になる」
何とも微妙な時間帯だ。
そんな時であった。
「す、すみません」
「ん?」
どこかで聞いたことのある声を聞いたような気がした。
「おい、どうした?」
「いや、向こうの方から声が」
突然立ちどまった俺に隆が聞いてくるので、俺は声のする方を指さした。
その方向には金色の髪をしているいかにも優男の風貌をした男子学生が、青髪を後ろに束ねたどこかで見たことのある女子生徒に絡んでいた。
「どれどれって、あいつは4組の勘坂!」
「勘坂? どういう奴なんだ?」
「サイテーな奴だよ。ちょっとばかし魔法の腕がいいからって自分より下の人を馬鹿にして奴隷のように扱うの」
「しかも、あの様子だと彼女に何かを買わせて、それが気に入らなかったからいちゃもん付けているようだぜ」
俺の問いかけに答える二人の顔色から、あいつがどういう奴かはすぐに理解できた。
俺が最も嫌う部類の奴だと言う事だ。
しかも、周りの者は誰一人として助けようともしない。
そして俺はその方向へと歩き出した。
「だから、圭一も関わらない方が……って、既に行ってるし!!」
後ろで隆が何やら叫んでいるが、俺はそれを無視して勘坂に声をかけた。
「おい、そこまでにしたらどうだ?」
「あん?」
俺が声をかけたのと同時に、鋭い視線が俺に突き刺さる。
気を抜けば逃げたくなるような視線だ。
俺はそれに耐えつつ一歩前に出た。
「お前、1年か。しかも見慣れない顔からして、おまえが”あの”転校生か」
「その”あの”が気になる所だけど、その通りだ。ここに転校してきた尾崎 圭一だ」
俺は勘坂を見据えて名前を名乗る。
言葉にもできないほどの気持ち悪い視線で俺の姿を観察する。
「あぁ~、思い出した。お前、魔力はあるのに魔法が使えない”出来損ない”の、魔法使いだったっけな」
”出来損ない”それが、俺の一般評価だ。
魔力を持っているにも拘らず、魔法を放つことが出来ない。
魔法使いにして魔法使いではない存在。
だからこそ、出来損ないだ。
それも今は少しばかり違うが。
「それで、出来損ないの転校生は、この超エリートな俺様に何の用かね?」
勘坂の”出来損ない”と言うフレーズに、周りが笑い声で包まれた。
その声は、すべて俺を馬鹿にするようなものであった。
「エリートだからって、力のない者を奴隷のようにするのは間違ってる。それに人としての礼儀を知らない奴がエリートになる資格もない」
「何だと? 貴様、出来損ないの分際でよくも俺様をコケにしたな!! 二度とその口が利けないように俺様の力を見せてやる!!」
勘坂は俺の一言に癇癪を起して媒体の杖を構えた。
一気に緊迫した雰囲気へと変わって行く。
「そこまでだ!」
「ッ!!」
「こんなところで乱闘を起こしたら、いくらあなたでもただでは済まないわよ」
突然大声で止めた隆と中井さんの声によって、雰囲気が元に戻った。
「貴様、覚えておけよ!!」
捨て台詞を残して、勘坂はその場を後にした。
「尾崎君も、厄介な奴に目を付けられたね」
「ああ、何もなければいいんだけどな」
二人は心配そうにつぶやいた。
「二人ともありがとう」
「あの!!」
そんな時、今までからまれていた女子生徒が声を上げた。
「貴方、昨日商店街に行きましたか?」
「あ、ああ。確かに商店街に行ったけど」
突然の女子生徒の問いかけに、俺は慌てて答える。
「それじゃ、そこで男に絡まれている人を助けたりなんてしました?」
「っ!? やっぱり、君が昨日の!?」
女子生徒の最後の質問ではっきりした。
目の前にいる人物は、先日商店街でからまれている少女を助けた時の人だと。
「はい! 1年2組の、宮野 知美って言います。この前は助けてくれてありがとうございました!」
「あ、いや、あれは俺が勝手にやった事だから。お礼なんて言わなくていいって」
俺は、お礼を言う宮野さんにそう言った。
俺としても、お礼を言われるためにやった物でもないのだから。
「知ちゃん、どこ~?」
「あ、それじゃ私はこれで失礼しますね」
「ああ、気を付けて」
誰かの声に宮野さんは俺達に一礼すると、声の方に駆け寄って行くのであった。
「それにしても意外だな」
「何がだ?」
突然興味深げに声をかけてきた隆に、俺は聞き返した。
「いや、自分の危険も顧みずに声をかける所がさ」
「うんうん、私もびっくりだよ~」
二人にそう言われると、どうも自分のしたことが今更恥ずかしくなってきた。
「あ、ところでさ。時間は大丈夫なのか?」
俺は気になったので二人に聞いた。
どう見てももう6,7分は経っているようにも感じた。
「「………」」
そして二人は嫌な沈黙を続けた。
「二人とも、走るぞ!!」
「ラジャー!!」
「結局こうなるのか!!」
この後、俺は史上まれにみる早食い&超特急をする羽目になった。




