第4話 洗礼を受けし、初登校
昨晩は結局夜遅くまで話し込んでしまった。
「――――きろ!」
「……ん」
俺は耳に聞こえてくる声を無視して、寝ようとする。
「起きろって!!」
(しつこいな。俺はまだ寝ていたいんだ)
俺は心の中でそう愚痴った。
何せ寝たのはわずか5時なのだ。
中井さんが戻ったのが11時。
その後手続きの事を思い出して、転校の書類をまとめたり、荷物整理をする等々の事をやったのだ。
その結果寝れたのが5時過ぎだった。
「起きろ!!!」
「うがっ!?」
俺は背中に鈍い痛みを感じて、思わず飛び起きた。
「いたたた……」
「やっと起きたか」
呆れたようにつぶやく隆をしり目に、俺は背中の痛みにうずくまっていた。
「何すんだよ、いきなり」
「それはこれを見てから言って」
そう言って隆が俺に差し出したのは、時計だった。
「これが一体なんだって――――」
俺は思わず、フリーズした。
そこに表示されていた時刻は……午前8時15分。
「寝過ごした!?」
「そうだよ!! そして不運にも俺がお前の案内役になった」
隆がここにいる理由が分かったところで、俺の意識はやけにクリアになった。
「と言うわけで………早く支度をしろ!! まじでこのままだと遅刻だ!!!」
「り、了解!!!」
俺は、慌てて制服に着替える。
確か寮から学校までの所要時間は15分だったはず。
仮に身支度に5分だとしても、かなりやばい。
俺は急いで身支度を済ませるのであった。
矛盾の魔法使い 第4話「洗礼を受けし、初登校」
「はぁ! はぁ! はぁ!」
俺は今、全速力で走っていた。
その場所が……
「本当に、ここを走れば学校につくのかよ?」
「ああ、この俺を信じろ!!」
道なき道だった。
何でも隆曰く遅刻しそうなときによく使う道らしいが、はっきり言おう。
「きつ過ぎだ~!!」
俺の叫びが森の中に響き渡った。
どうしてこうも面倒な方法を取っているのかと言うと、校則に関係する。
校則では、『緊急時や実習以外での魔法行使を禁ずる』と明記されている。
つまり、それ相応の事態に巻き込まれたり、実習の授業がある時以外は魔法は使ってはいけないのだ。
勿論使えば厳しい処分が待っている。
「俺達の学校は立門があってな!!」
「立門!?」
走りながら俺は器用に、この学校の事を教えて貰っていた。
にしても立門なんて、前にいたところではやってなんかなかったぞ。
「ああ、予鈴が鳴ると門を閉めて、遅れてきた奴にはそうれはもう恐ろしい罰が!!」
「な、なるほど」
俺は、隆がそれを受けたことがあるのだと言うことがすぐに分かった。
なので、俺も全速力で走る。
「そこ、滑りやすいから気を付けろよ!」
「お、おう!」
今通っているのは川だ。
とはいっても、川のところどころに出ている石の上を飛び移っているのだ。
何とも苛酷だ。
それが終わると、目の前に学校らしきものが見えてきた。
「喜べ! ここをまっすぐ行けば校門前だ!」
隆の言葉に俺は希望を持った。
「残りあと30秒。間に合うのか!?」
「間に合う! 気合を出せば!!」
そう言って隆はあろうことか、俺の腕をつかんでさらに走る速度を上げた。
目の前には校門、そして横からは俺達と同じなのか、ものすごい勢いで走ってくるオレンジ色の髪をした女子生徒。
って、女子生徒!?
今の状況ってかなりやばいのではないか?
隆の走る速度と女子生徒の走る速度はほぼ同等つまりは……
(このままだと校門の直前で激突する!)
俺の導き出した答えのように、だんだんと女子生徒が接近している。
本人も、俺達に気付いてない。
(ええい、こうなったら!!)
「隆、すまん!」
「は? 何が――――って、うぎゃああ!!?」
俺は隆を後方へと吹き飛ばす。
だが、校門の方へと吹き飛ばされた俺はと言うと……
「ど、どど退いてくださ~い!!」
そう言う女子生徒の声もむなしく、俺と女子生徒はぶつかった。
「いてて……」
痛みがあるが、なんとかなったらしく無事の様だ。
(そう言えば女子生徒は!?)
「うぅ~」
ぶつかったもう一人の女子生徒の事が気になった時、なぜか声が俺上から聞こえてきた。
声の方を見るとそこには、俺に重なるように倒れる女子生徒の姿があった。
「あ……」
俺と女子生徒との目が合った。
「だ、大丈夫……か?」
「は、はい。すみません。すぐにどきますね」
そう言って女子生徒が退こうとするが、なぜか固まっていた。
その原因はすぐに分かった。
顔を赤らめて下の方を見ている。
そこには……彼女の胸を掴んでいる、俺の手があった。
「あ、えっと……悪い」
「あ、気にしないで……ください」
俺はすぐに手を放して、謝った。
感触は忘れよう。
「あ、えっと私は松井加奈と言います。ここの1年です。」
「俺は、転校してきた尾崎 圭一。色々な意味で悪かった」
俺は自己紹介をしながらもう一度頭を下げた。
どんな経緯があれど、女子の胸をもむなんて破廉恥すぎる。
「あ、気にしないでください。私がドジなのが原因なので」
「それよりも、時間大丈夫か?」
俺は腕時計を指さしながら聞いた。
申し訳ないが、限がなさそうだったので、時間を確認させることにした。
「うわぁ!? す、すみません。これで失礼します!」
松井さんはそう言うと、慌てて校舎の方へと入って行った。
(変わった子だな)
そう思いながら、俺も中に入ることにした。
「ぎゃあああああああ!!!」
そんな時、隆の断末魔を聞いたような気がしたが……気のせいだろう。
なんという王道だというのはなしで。




