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矛盾の魔法使い  作者: 龍夜
第4章『予兆』
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第31話 再会

こんにちは、龍夜です。


1年もの間投稿できず申し訳ありませんでした。

環境の変化によって執筆時間が大幅に削られてしまったため、時間がかかってしまいましたが、ようやく投稿にまでこぎつけました。


次話もかなりの時間を頂戴することが予想されますが、ツイッターにて本作の進捗状況を随時つぶやいていく予定ですので、そちらのほうをご覧ください。


アカウントは【@TRcrant】です。

彼女、神谷敦子がやってきて最初の昼休みを迎えた。

休み時間に行われる恒例の転校生への質問攻めは無く、よそよそしい雰囲気が教室内を包み込んでいた。

なかには教室を出ていってしまう者もいた。


「……」


昼休みということもあり、俺は静かに教室を後にすると廊下の窓から空を眺めていた。

今日は弁当だったため、急いで食堂に行く必要はない。


「びっくりだよね」


そんな俺に声をかけてきたのは、中井さんだった。

空から視線を外し、声のした俺の後方へと視線を向けると、柔らかい笑みを浮かべている中井さんは、俺の横に移動して俺と同じように窓から空を眺める。


「まさか神谷家の当主さんが来るなんて」

「……」


中井さんの意外だと言わんばかりの言葉に、俺は何も答えずに再び空のほうへと視線を戻した。


「目的ってやっぱり……」

「だろうな」


中井さんのつぶやきに続くように、俺は相づちを打つ。

彼女の目的は恐らく、俺を神谷家に連れ戻すことだ。

この間のクラス対抗の時に使った魔法のことがどのような方法で伝わったのかは知らないが、この間神谷家からかかってきた電話で出された”戻ってこないか”という提案を断ったのが原因だろう。

むろん、俺は向こう側から何がしらかのアクションがあることは承知していた。

ここだけの話、先の襲撃事件がそれだったと内心で思っていたのだ。


(とはいえ、こういう手で来るとは)


次期当主をこの場に寄こせば、色々な意味で都合がいいだろう。

なにせ、ほとんど毎日顔を合わせることになり、それだけ説得の機会も増える訳なのだから。


「それよりも、野村君が待ってるから早く移動しよ」

「そうだな」


いつまでも窓の外を見て黄昏ているのももったいないため、中井さんの提案に頷こき食堂に向かって歩きだそうとしたところで、


「あの」


女性に声をかけられた。

声のした方に視線を向けると、そこに立っていたのは今日転校していた神谷家の次期当主だった。


「貴方が尾崎 圭一様……ですか?」

「ええ、そうですけど」


どこか不安げでこちらを見ながら尋ねてくる彼女に、俺はできるだけ冷静に頷いて答えた。


「やっと……」


俺の答えに、彼女は喜びと感動に満ちたような表情を浮かべながらぽつりと言葉を漏らす。


「えっと……のわっ」


どう声をかけたものかとためらっていた俺は、突然受けた衝撃に後ろのほうに倒れそうになった。

だが慌てて踏ん張ったおかげで後ろに倒れずに済んだ。

その衝撃の正体は、神谷さんが俺の体に飛び込んできたものだった。

両腕で俺の体にしがみつく彼女は名家の人間であるということをも感じさせないほどん満面の笑みを浮かべていた。


「おい、あれって今日転校してきた子じゃねえか?」

「抱き付かれてるのって、あの出来損ないもどきかよ」


そしてそんな俺たちの様子に気付いたのか、周囲からざわめきとともに視線が集まってきた。

そのざわめきが聞こえた瞬間、神谷さんから喜びと感動に満ちていた表情が消えた。


「おい」


彼女の口から出たのは言葉には言い表しがたいほど冷たいものだった。

たった一言のはずなのに、周囲の温度が一気に氷点下にまで下がったような錯覚を覚えるほどに。

それが殺気だというのを理解したときには、すでに彼女は次の言葉を紡いでいた。


「今、なんて言った?」

「へ?!」


ゆっくりとした動きで俺から離れた彼女に、何かを言っていた人物の一人であろう男子学生のほうへと顔を向けた。


「私の兄様に対して出来損ないあなんて………覚悟はできているのでしょうね?」

「い、いや、それは……」


神谷さんから発せられる殺気がさらに強くなっていく。

最初は周りを覆い尽くす膜のようなそれは、まるで針のように鋭利なものへと変貌していた。

ましてや彼女は魔法使いで走らない者はいないほどの実力と歴史を持つ神谷家のご令嬢だ。

それが彼女が放つ殺気の鋭さを物語っていた。

殺気を当てられている男子学生は目を見開かせたま、まるで青い絵の具でも塗りたくったかと思えるほど真っ青になっていた。

そんな男子学生に対して彼女はすっと右腕を振り上げ


「ルーチェ・アビスっ」


腕を振り下ろすのと同時に声高々に告げたのは魔法詠唱だった。

たった二音の詠唱。

だが、


「ぎゃあああっ!」


男子学生に向けて無数の魔法弾の雨を降り注がせた。

紫がかった黒の色を纏ったそれが降りやんだ時には、陥没した床にぼろぼろになって倒れている男子学生の姿があった。


「す、すごい」


それは中井さんから出た言葉だった。

たった二音の詠唱で地面を陥没させ、しかも無防備ではあるものの男一人をぼろぼろにしてしまうほどの威力の魔法を簡単に放つ彼女の手腕はそうつぶやかせてしまうのも容易なものあった。

これこそが、神谷家の中で最も秀才と呼ばれる所以でもあった。

そして、この惨状を引き起こした張本人は地面に倒れ伏している男子学生を冷たい目で見降ろすと、


「身の程を知りなさい」


高圧的な雰囲気を纏って冷たい言葉を投げかけるのであった。






どうでもいいが、この出来事は後に学校内で”悪魔の誕生事件”と名付けられ、生涯にわたって語り継がれていくことになるのは、少し先のことだ。

そして、このような大騒動を起こしてしまった彼女には


『1年3組の神谷さん、至急職員室に来てください。繰り返します―――』


先生からの呼び出しが待っているのだった。

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