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矛盾の魔法使い  作者: 龍夜
第1章 『転校生と魔法』
3/31

第3話 寮と出会い

俺はようやく目的地へと訪れることが出来た。


「ここが上栄荘」


目の前にあるのは木造の旅館のような建物だったが、ちゃんと門には木製の札で『上栄荘』と書かれていた。


「とにかく入ろう」


俺はそう思い引き戸を開けた。


「ごめんください」

「は~い!」


俺の声に反応して、奥の方から女性の声が返ってきた。

しばらくすると背の高い黒い髪の女性が姿を現した。


「こちらにどのようですか?」

「あの、今日ここに下宿させてもらうことになった尾崎ですけど」


俺はそう言って、紹介状を女性に手渡した。


「ああ、あなたが明日鳴神高校に転校する生徒ね。私はここの寮長をしている田土 沙月たどさつきです。困ったことがあったら色々と聞いてね」

「あ、俺は尾崎 圭一です!」


思わず背筋を正して田土さんに自己紹介をした。


「ふふ。それじゃここの案内をするわね。付いて来てくれる?」

「あ、はい!」


俺は田土さんの後に続くように足を踏み入れた。



矛盾の魔法使い   第3話「寮と出会い」



「ここがリビングね。今はいないけど、よくここに住んでいる人たちが集まるから来てみるといいわよ」


案内が始まって5分。

ほとんどの場所を案内された。


「と、大体はこのぐらいね。何かわからない所はある?」

「あ、いいえ。特には」


俺の答えに、田土さんは笑顔で頷いた。


「それじゃ、あなたの部屋で荷物の整理をしておくといいわ」

「それで、失礼します」


俺は田土さんに一度お辞儀をすると、宛がわれた部屋へと向かった。











(109……ここか)


部屋番号を確認して俺はドアを開けた。


「ようこそ、鳴神町へ」

「………」


俺は無言でドアを閉めた。


「……………何?」


俺はもう一度部屋番号を調べたが、やはり俺に宛がわれたところだった。


「ようこそ、上栄荘へ」

「………」


俺はもう一度無言でドアを閉めた。

もう勘違いではない。


「あのぉ~、さすがにスルーされるのはきついんだけど~」

「何をやってるんですか?」


俺が思いっきりドアを開けて、中にいる人物を問いただす。


「何って、明日転校してくる奴の顔を見ようと思ってな」


そういう人物は俺と同い年で、青髪の目元が若干細めの長身の男だった。


「………」

「おっと! 紹介が遅れたな。俺は野村のむら たかし。よろしくな」

「尾崎 圭一です。よろしくお願いします。野村君」

「隆でいいぜ。同い年なんだから敬語も不要! さあ、もう一度!」


若干テンションが高いやつだなと思いつつ、俺はもう一度言い直すことにした。


「尾崎圭一。よろしくな、隆」

「ああ、よろしく」


俺と隆は固い握手を交わした。











「はぁ……腹減ったな」


あれから一通り荷物の整理を終えた俺は、そう呟いた。

結局夕食の時間に間に合わなかった俺は、夕食を食べることが出来なかった。


「食べられそうなものは一つもないし……明日まで我慢するか」

「え~。それって体に悪いよ?」

「しょうがないだろ。食べるもんないんだし」


俺はさっさと寝ようと立ち上がる。


「だったら、私が何かあげようか?」

「お、あるんなら貰いた――――――」


俺はそこまで言ってようやく気付いた。


(俺、一体誰と会話してんだ?)


「ん? どうしたの?」

「……お、おまえは!?」


横を向いて、声の主を見たとき俺は思わず声を上げてしまった。


「こんばんは。さっきぶりだね」


その人物は昼間、なぜか仲良くなった中井さんだった。











「ありがとな。助かったよ」

「す、すごいね」


中井さんがものすごい様子で空っぽになったお皿を見た。

中井さんが出したものは、夜食用に取っていたサンドウィッチだった。

それを俺は全部平らげてしまった。


「いや、朝食べてから何も食べてなかったんだよ」

「へぇ~」


中井さんが頷いた。


「それにしても驚いたよ、中井さんがここにいるなんて」

「それは私もだよ。まさか転校生が尾崎君だなんて思いもよらなかったよ」

「だな」


俺と中井さんは笑いあった。

それからしばらく、俺と中井さんとで楽しく話したのであった。

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