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矛盾の魔法使い  作者: 龍夜
第4章『予兆』
28/31

第28話 誘い込まれし夜

大変お待たせしました。

第28話です。

あのファンクラブ事件から数日経った時のこと。


「なにそれ?」

「だから見たんだって。学園の校門でを闊歩する無機物の物体を!」


昼休み、机を囲んで昼食を摂る俺と中井さんに隆は熱烈に語っていた。

その話によると、夜遅くに忘れ物を取りに学園に向かった隆は校門付近に動き回る無機物の物体を見たという。


「大体何で夜遅くに学園に行ったの?」

「それは学園に隠したエ○○を」


中井さんの尤もな問いかけに答えた隆の言葉に、教室中が凍りついた。


「………今日のお弁当はうまいな」

「そ、そうだね」


俺と中井さんが取った行動は、話題を変えることだった。


「ちょっと! 俺の話を終わらせないでくれ!」

「お前、色々とすごいよ」


今周りの女子から浴びせられる鋭い視線にめげずに声をあげられる隆に、俺は尊敬の念さえ覚えた。

そんな昼下がりの一幕だった。



矛盾の魔法使い   第28話「誘い込まれし夜」



さらに数日後の夜の事。


「寮母の田土です」

「どうぞ」


明日の予習を終えたところで、ドアをノックしたのは田土先生だった。

ドアを開けた田土先生は”お邪魔します”と言いながら、部屋に足を踏み入れる。


「貴方宛の手紙を届けに来たの」


そう言って渡されたのは俺宛の宛名が記された一通の封筒だった


「ありがとうございます」


田土先生は静かに一礼すると部屋を出て行った。


(誰からだろう)


差出人の方を見るが、何も書かれていなかった。


「取りあえず、開けてみるか」


俺は机の引き出しにしまっておいたハサミを取り出すと、封を切る。

中に入っていたのは便せん一枚だった。

そこにはシンプルにこう記されていた。


『今夜、鳴神学園でお待ちしております』


(これって………)


一瞬俺の頭の中に”プロポーズの呼び出しか?”という言葉が浮かんできたが、それを振り払う。

確かにラブレターならば、差出人を書かないのも頷ける。

だが、そういう物の類いではないというのは感じていた。

その理由は分からないが。


「さて、どうするか」


俺はどう出るかを考える。

このまま無視するのが一番安全だ。

翌日にその人物がどうしてこなかったのかと聞いて来ても、(ありえないかもしれないが)寝ていたと嘘をつくか謝るかすればいい。

だが、俺はそれが出来なかった。


(もしこれが本物ならば、ずっと待たせておくのはかわいそうだ)


そう思ってしまったからだ。

俺は念のために魔法を使う媒体の剣とMSを手にしようとして気づいた。


「あ、そっか。MSはメンテナンスでなかったっけ」


なんでも、緊急メンテナンスのようで朝のHRの時にクラスの皆のすべてのMSを回収していたのを思い出した。

結局、魔法を使う媒体の剣を手にすると部屋を後にするのであった。











「誰もいない、か」


鳴神学園にたどり着いた俺は周囲を警戒する。

いつでも剣に手を掛けられる状態にして襲撃に備えていた。

幸いにして、殺気の類もなく周囲は多少の不気味さを醸し出すだけにとどまっていた。

そんな中、俺の元に近づく足音が聞こえた。

俺は、神経をとがらせてその人物が来るであろう方向に視線を向ける。


「尾崎、君?」

「え?!」


掛けられた声に、俺は思わず声を叫んでしまった。

なぜなら、その人物は


「中井さん!? どうしてここに」

「尾崎君こそ、どうしてここに?」


驚いたような表情を浮かべながら聞いてくる中井さんに、俺はそれを告げることにした。


「俺は、手紙で呼び出されたんだ」

「私も、手紙でここに来るように言われたんだけど」


お互いに受け取った手紙を見せ合う。

中井さんの手紙に書かれている文面は、一字一句俺の受け取った手紙と同じものだった。


「もしかして、これを書いたのは尾崎君?」

「そんなわけない。大体どうして自分で手紙を持ってくるんだ?」


自分を呼び出す手紙を自分で書くほど、俺は変わった趣味は持っていない


「ということはいたずらかな?」


「だといいんだけどな」


中井さんが腕を組みながらつぶやく。

俺も、最初はそう思っていた。

だが……


「それは、どういうこと?」


「……」


中井さんの問いかけに答えず、俺は周囲を見渡してみる。

やはり、微妙にだが感じる。

俺たちに向けられたさっきのような敵意を。


「中井さん、媒体は?」

「え? 一応持ってきてるけど」

「いつでも魔法が使えるようにしておいて」


さすがは成績優秀と言われるだけはある。

危機管理ができているようだ。

持ってきていないと言われたらかなりまずい状況になっていただろう。


「それって、まさか―――」

「来るぞっ!」


中井さんが声を上げた次の瞬間、今までとどまっていた殺気が一気に膨れ上がった。


「キャッ!?」

「っち!」


中井さんの腕を引いてその場から離れる。

その次の瞬間、銃声のような音が響いた。

そして少し遅れるようにして、地面に銃弾が着弾するような音が響き渡る。


「あ、ありがとう」

「いや、お礼はあとでいいから」


お礼を言う中井さんにそう返すと、俺は目を閉じて殺気の出どころを探る。

師匠との鍛練という名の修羅場を潜り抜けてきたことが、こういうところで行かされるとは思いもよらなかった。


「おいおい、まじかよ」

「な、なに? あれ」


殺気の出どころは俺たちを囲むように放たれていた。

それはつまり……


「本当に今日は厄日なのか?」


俺はそうつぶやきながらも、念のために持ってきていた短剣を手にする。

姿を現したのはただの鉄の塊だった。

否、正確には顔はまるで馬のような形をして、腕と思わしき部分には鎌のようなものがついているのか、刃先が月明かりに照らされ不気味に光を放っていた。

何よりも物騒なのは肩と思われる部分に付けられた細長い発射口のようなものだ。


「中井さん」

「分かってるわ」


俺たちができることは、すでにひとつだけだった。


「ラム・ルストス・ナテリアル・メルサス……」


それは迎撃だった。

中井さんが呪文を詠唱する。


「はぁぁっ!!」


そして俺は素早く前に駆け出すと短剣を振りかざす。


「尾崎武術……」


短剣に魔力を宿し強化させて一撃で叩き切るのだ。


「な、なにっ!?」


だが、その目論見は大きく外れることになった。

強化された短剣は鉄の塊(ここはあえてロボットと明記する)にダメージを入れることもできなかった。


(か、硬すぎだろ!?)


「ヴィーナス・テルティア!!」


そんな中、放たれた雷撃はロボットをとらえる。

だが、


「やっぱり効かないか」


中井さんの攻撃にロボットはビクともしなかったのだ。

そんな時、ロボットのほうから機械特有の音が聞こえた。

それと同時に、発射口のようなものがこちら(正確に言えば中井さんの方だが)に向けられた。


(や、やば)


「危ないっ!」


「きゃあ!?」


俺が中井さんを押し倒すのと、銃声と着弾音がしたのはほぼ同時だった。


「わ、悪い。大丈夫か?」

「う、うん。大丈夫。ありがとう」


中井さんに声をかけて無事を確かめた俺は、ほっと胸をなでおろすがその暇はなかった。


「ッ!?」


周りで聞こえる機械音。

それは周りにいるロボットどもが俺に照準を合わせていることを思わせた。

もはや逃げ場などない。


「っく! インベル・フェイレイズ!!」


とっさの判断で、俺は防御障壁を展開させた。

それはインベル・イレイズの発展系。

すべての物理攻撃を防げる優れものだ。

だが、味方が魔法を使えなくなるのに加え、展開限界時間が出るという、使いどころのない結界でもあったりする。


「きゃあああ!!!!」


展開するのを狙っていたかのように、銃撃が始まった。

まるでマシンガンのごとく放たれる攻撃は、たとえ食らうことがなくても恐怖を与えるのには十分だった。


「っぐ!?」


一発一発が結界に直撃するごとに、体に何かがのしかかってくる感覚がする。

それはまるで体全体を揺さぶられているような。


「だ、大丈夫?」

「ああ。平気、だ」


心配そうに尋ねてくる中井さんに、俺は心配させないように答えた。


(やばい、もう長く持たない)


だが、展開限界時間が迫ってきているのはもう分かっていた。

徐々に結界の効力が弱まっているのだ。

このままでは結界がなくなった瞬間に俺たちはハチの巣にされるだろう。

だが、どうやら天は俺たちを見放していないようだった。


「バルム・ルピア・エニシエンティウム・パルスティア!!!」


突如響いた俺たちのものではない声。

その次の瞬間、俺の横のロボットを赤黒いような光が貫いたかと思うと、それらは地面に崩れ落ちた。

それと同時にロボットたちの攻撃が止んだ。


「勘坂」


展開限界時間を迎えて消滅した結界をしり目に、俺は立ち上がると魔法を放ったであろう人物の名前を口にする。


「こんな鉄くず如きに何を苦戦している? お前は、この俺様のライバルだろうが」

「えっと、悪い?」


謝ればいいのか反応に困ったおれは疑問形で返してしまった。

きっと中井さんも唖然としているだろう。

尤も、俺の後ろに立っているから見えないが。

そんな時、残っていたロボットが機械特有の音を立てながら、発射口を勘坂のほうに向ける。


「あ、危ない!」


あの脅威を味わっているため、俺は思わずそう叫んだが、それは必要なかった。


「案ずるな。この俺様が鉄くず如きに引けなどとらん」


その自信に満ちた言葉が、この後起こるであろう事を予感させた。


「おい鉄くず。てめぇらの目的などは知らん。だが……」


勘坂の言葉一つ一つから感じるのは、魔力なのか、それとも別の何かか。


「尾崎 圭一は超優秀な魔法使い、勘坂 正様のライバルだ。あいつは俺が倒す。それ以外のやつが倒すことは断じて認めねえし、許さねえ」


(こ、これがあいつの全力か?!)


確かに優秀の名に恥じない魔力に威圧感だった。


「グラビティ・プレス」


そう紡がれた瞬間、ロボットどもは一瞬にして鉄の塊となった。

まさしく圧倒的であった。


「た、助かった」

「ふん。さっさとずらかるぞ。俺様は暇ではない。それに、援軍が来そうだ」


そういうや否や勘坂は闇の中へと消えていった。

確かに、あたりの雰囲気から敵意がこもった何かを感じる。

これは早く戻った方がいいようだ。


「中井さん。とりあえず戻ろう」

「うん。そうだね」


中井さんが頷いたのを確認して、俺たちはその場を後にするのであった。


「……っち」


その場にいる人物の存在に気づかずに。

5か月もの間お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

少しでも待っていただいた分楽しんでいただけたら幸いです。


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