第21話 目覚めし力
大変お待たせしました。
第21話です。
今回で、決着がつきます
(どこだ? ここ)
気が付くと俺は、辺り一面真っ暗な世界に立っていた。
いや、立っていたというのは比較的おかしな話だ。
だが、今自分が立っているのか、浮かんでいるのかはこの際考えるのはやめておこう。
結果など、出ないに決まっているのだから。
―理不尽だとは思わないか?―
(誰だ?)
突如聞こえてきた声に、俺は問いかけた。
―力ある者だけが優遇され、無い者は虐げられる………まさに理不尽の一言に尽きる―
(それは、そう言う物なんだろ?)
俺の問いかけに無視して告げる声に、俺はそう返した。
至極尤もな事だ。
世界には”弱者”と”強者”が存在する。
存在する以上多少の理不尽は起こってしかるべきだ。
―だが、それは当然。なぜなら人間は、他人と比較をして自己満足に浸ろうとする生き物だからな。………それがどれだけ愚かな事かも知らずに―
(だから、お前は誰だよ)
俺は再度その声に問いかける。
―理不尽な差別や区別は、悲劇を生み出す。絶望をまき散らす―
この声と俺とは微妙に話がかみ合っていないような気がする。
どちらかと言えば一方的に言われているような印象を受ける。
―だから…………―
(ッ!?)
唐突に、俺は意識が遠のいていくのを感じた。
これが夢なのかどうかは俺にもよくわかない。
―この世界に………革命を―
その声を最後に、俺の記憶は途切れた。
矛盾の魔法使い 第21話「目覚めし力」
「バルム・ルピア・エニシエンティウム………」
地面に倒れ伏す圭一と奈々に対し、勘坂は止めの魔法を詠唱する。
(これで、俺様の勝利だ)
勘坂は詠唱をしながら、心の中で勝利を確信していた。
実際あと1音で呪文は完成し、魔法が放たれるのだ。
だからこそ、勘坂は気付けなかった。
圭一の体が白銀の光に包まれていることに。
その光は薄っすらとではあったが、気づくことのできる光量だった。
「パルスティア!」
勘坂から放たれたそれは、砲撃魔法であった。
紫と赤の入り混じった光の傍流が、圭一たちの元へと向かいそして、抵抗すらできずに飲み込んだ。
「はッ! 余裕だな」
そんな言葉を吐きながら、勘坂は自分の勝利を確信し、その場を後にしようと背を向けた。
「ん?」
そんな時、勘坂は背後から吹き付ける風を感じた。
勘坂は風が吹いたであろう後ろの方を見る。
そこには……
「おいおい。まだ痛めつけられてぇのか?」
立ち上がる圭一の姿があった。
勘坂の言葉に、圭一は俯いたまま何も答えない。
「おいッ! 聞いてんのかよ!」
「――ない」
勘坂が強い口調で声を荒げた時、ようやく圭一が口を開いた。
「あん?」
「認めない。俺はこの世界を、認めないッ!」
圭一は大きな声で叫んだ。
その顔色は熱い闘志に満ちていた。
「はッ! あんた頭大丈夫か?」
そんな圭一の言葉を、勘坂は鼻で笑う。
「まあいい、もう一度痛めつけて―――」
勘坂は、そこまで言いかけると目の前で起こっている現象に言葉を失った。
「なッ!? その白銀に煌めく翼………お前、まさか」
圭一の姿に、勘坂は慌てふためく。
圭一の背中には白銀の光を発する翼があったのだから……
そして、勘坂はその翼に心当たりがあった。
「神谷家の人間なのか?!」
その勘坂の発言に、会場がどよめいた。
――神谷家
その家系は、魔法使いであれば知らぬ者がいないほどの名家だ。
全ての魔法系統に置いて最たる力を誇り、その家系の魔法使いに叶う者など存在しないとまで言われている。
その家系の魔法使いに共通する特徴が、圭一の背中に生えている白銀の光を発する翼なのだ。
「…………」
「ッ!?」
圭一が勘坂を見ただけ。
ただそれだけの動作のはずが、勘坂に得体のしれない恐怖感を植え付ける。
(何だよこの威圧感はッ!?)
「お、俺様は負けないッ! 神谷家の魔法使いを倒す、一人目の男になってやるッ!!」
恐怖感を大きな声で叫ぶことで吹き飛ばすと、勘坂は魔法の詠唱を始める。
「ルピア」
勘坂が放った魔法弾は、まっすぐに圭一へと向かって行く。
だが、そこでそれは起きた。
「なッ!? 魔法が消えた……だと?」
そう、圭一に迫っていた魔法は突然空気のように消滅したのだ。
「ッく。だったらもう一度…………どういう事だよ」
再び詠唱を始めようとした勘坂は、その異変に気が付いた。
いや、その場にいた者全員が慌てていた。
「魔法が……使えねえじゃねえかッ!!」
勘坂の言葉が、すべてを物語っていた。
魔法の詠唱は出来ている。
しかし、それを発現させることが出来ないのだ。
その原因は、火を見るよりも明らかだった。
「何をしやがったッ!」
「…………」
勘坂の怒号に、圭一は何も反応しない。
さらに、衝撃の事態が発生する。
『そこまでッ! 勘坂のMS停止を確認。よって本試合は尾崎、中井ペアの優勝とするッ!!』
「はぁッ!?」
審判の勝利宣言に、勘坂は意味が分からないとばかりに声を上げた。
それもそのはずだろう。
何もしていないはずなのにいきなり敗北したのだ。 意味が分からなくなって当然だ。
勘坂は自分のMSを確認するが、それに光は灯ってはおらずエネルギーがないことを告げていた。
そんな時、何かが倒れる音が会場内に響き渡った。
その音のした方を全員が見た。
そこには地面に倒れている、圭一と奈々の二人の姿があった。
圭一の背中には、白銀にきらめく翼はすでになくなっていた。




