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矛盾の魔法使い  作者: 龍夜
第1章 『転校生と魔法』
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第2話 商店街で

今回、いよいよ主人公の能力の片りんが現れます。

そんなこんなでやってきました商店街。


「ここが、商店街か」


さっきの中井さんが話した商店街は、一番にぎやかな場所らしい。

そもそもここしか買い物できる場所がないのだから当然と言えば当然なのだが……。


「ま、早く目的の物を買って下宿先に行くとしますか」


俺はうっかり歯ブラシを買うのを忘れていたのだ。

つまりここに来た目的はそういう事だ。

そして俺は、歯ブラシを買うために商店街を彷徨うのであった。



矛盾の魔法使い   第2話「商店街で」



「ふぅ……ようやく買えた」


商店街で彷徨うこと30分。

ようやく売っているお店が見つかったのだ。


「なんでデパートになくて薬局にしかないんだよ……」


俺は不満を口にする。

普通は百貨店やデパートとかにあると思うのが当然だ。

だが、デパートにはそう言ったものはなく、ただ食品などが売られている場所だったのだ。

そして歩き回ってようやく薬局を見つけたということだ。


「さあ、これで上栄荘に行けるな」


そう思い俺は下宿先の上栄荘に向かおうとするが……。


「どこが南口だ?」


今度は商店街の中で迷っていた。

前にもらった行き方が書かれた紙には商店街の南口から徒歩5分と記されていた。

俺は完全にその南口がどこなのかが分からなかったのだ。


「や、やめてください!」

「ん?」


そんな時俺の耳に聞こえてきたのは、少女の声だった。

俺はその声のした方を見た。

そこには青髪を後ろに束ねた少女に絡む三人のキザな男がいた。


「良いじゃねえかよ」

「あなた達に付き合っていられる時間はないんです!!」


どうやら男達が強引に連れて行こうとしているようだ。


「てめぇ! 俺達は”魔法使い”なんだよ!! 痛い目見たくねえんなら大人しくついて来い!!」

「………そこまでにしたらどうだ?」


俺はいてもたってもいられなくなり、男どもと少女の間に立ちながら声をかけた。

言っておくが、俺は普段はこんなことはしない。

どちらかと言うと厄介ごとを避ける性格だ。

目立ちたくないというのも理由の一つなのだが、魔法使いだからという言葉を聞いてそれを無視するほど、俺は出来た人ではない。


「何だよ、テメェ」

「通りすがりの魔法使いだ。その子嫌がってるじゃないか。やめてやったらどうだ?」


俺は睨みつけてくる男たちに諭すように告げた。

魔法使いと非魔法使いの力は圧倒的だ。

それが相手がか弱い少女や女性であるのならなおさらだ。

魔法使いに対する優遇政策は、それを進めていた総理が辞任されたため、今では無いが未だにこうした差別感情が残っているのだ。

それが魔法使い=偉いという公式だ。


「うるせぇ!! 黙って聞いてれば調子こきやがって!!!」

「ひぃッ!!」


ついに我慢できなくなった男の一人が、そう叫ぶや否や杖を俺達に向けて掲げてきた

少女が悲鳴を上げたことからおそらくは普通の人だろう。


「テメェら諸共、俺達を怒らせたことを後悔させてやる!!」


(こりゃ、向こうはやる気だな)


俺は厄介なことになったなと、ため息交じりに思いながら少女をかばうように立つ。

数は一対三。

数では負けてもこの程度で俺がやられるわけがない。


(何か良いものはないかな)


俺はあることをするために必須のものを探した。

それは棒状のものだ。

俺は刀を媒体として使っているのだが、それは寮の方に送ったのでないのだ。

なので棒状のもので代用する手段を取った。

そこで、俺は少女の片手に棒状のものが握られていることに気づいた。


「ねえ、君」

「は、はい。なんですか?」


俺の問いかけに、少女は怯えながら聞き返してきた。


「その右手に持っているもの、少し貸してくれないか?」

「は、はい………どうぞ」


見ず知らずの俺に、快く持っていた物を差し出してくれたことに、若干驚きつつもその物を相手に向けて掲げた。


「俺の後ろから離れるなよ」

「はっ! 何だ何だ、散々えばってそんな棒っきれを使うとは。傑作だな!」

「安心しろ。これでもお前ら程度の雑魚に勝つくらい造作もないから」


俺は相手の挑発に挑発で返した。

その間、俺は魔力で少女から借りたものの耐久性を強化した。

そうしなければ確実に折れるからだ。


「だったら、見せて貰おうじゃねえか!! リ・ライム・アステルジ!!!」


(よっしゃ来た!!)


俺は心の中でガッツポーズをとった。

男にとって、今この時この瞬間魔法を放ったことが運のつきだ。

確実に俺の勝利を約束させたのだ。


(この棒のリーチは約0.5m。タイミングは慎重に)


俺は目の前に迫りくる、金色の魔法球をしっかりと見据える。

そして俺の射程範囲内に入った。


「甘い! リ・ライム・アステルジ!!」


俺は男のと同じ呪文を唱えながら、棒を横に振りかぶる。

するとまるで野球ボールがバットに当たったかのような音を立てて、俺に迫っていた魔法球はそれを放った男の元へと”向かって”行った。


「なッ!? ぎゃあああ!!」


突然の事態に、男は成すすべもなく自分の放った攻撃魔法を食らい地面に倒れ伏した。


「な、何しやがった!!」

「答える義理はない」


明らかにおびえている様子の男達に、俺はそう告げた。

このまま逃げてくれればいいんだが。


「お、俺達は二人だ。総攻撃すれば勝てる!!」


どうやらこの二人はあきらめが悪いようだ。


「ル・アクレル・ラムレア!!」

「ルージュ・ベルッサ」


ほぼ同時に放たれた赤い魔法球と、青い魔法弾がこっちに向かってくる。


(弾数20発。後ろを守りながらだときついな)


「インベル・イレイズ」


俺は速度の速い魔法弾の方を、目の前に転換した魔力無効化結界で打ち消すと、残った魔法球をさっきと同じ要領で男達の元へと向かわせる。


「ぎゃああああ!!」


そして二人目の男を倒したところで、俺はもう一度残った男に問いかける。


「まだ続けるか?」

「お、覚えてろよ!!!」


今度こそ男たちはしっぽを巻いて逃げて行った。


「ふぅ……」


俺は作業終えた達成感に、浸りながら汗を拭くしぐさをする


「あ、あの!」

「ッと、これありがとな。助かったよ」


俺は少女が声をかけてきたので、手に持っていた物を少女に返した。


「あ、はい………ではなくですね、その――――」

「って、ヤバッ!! ごめん俺急いでるからこれで失礼!!」


俺は時計を見ると、寮の門限の時間が迫っていたので、少女にそう言いながら、慌てて走って行くのであった。






???Side


「うるせぇ!! 黙って聞いてれば調子こきやがって!!!」

「ひぃッ!!」


私は突然現れた私と同い年ぐらいの黒髪の男の人にキレて杖をかざすのが見えたので、思わず悲鳴を上げてしまいました。


「テメェら諸共、俺達を怒らせたことを後悔させてやる!!」


私はどうしようかと思いました。

この男の人達は杖を持っていることから魔法使いだと分かります。

でも今目の前にいる人はそんなものを出すしぐさは一切しないで周りを見渡しています。


(この人に怪我をさせちゃう)


私はそう思って目の前にいる人に逃げるように言おうとした時でした。


「ねえ、君」

「は、はい。なんですか?」


目の前に立っている人の言葉に、私は思わず怯えた風に答えてしまいました。


「その右手に持っているもの、少し貸してくれないか?」

「は、はい………どうぞ」


黒髪の男の人が言っているのは、私が部活で使っているクリケットの道具です。

とても大切な物ですが私はこの人なら大丈夫だと思ってそれを渡しました。


「俺の後ろから離れるなよ」


私は、男の人の言葉に胸が高鳴るのを一瞬ですが感じました。


「はっ! 何だ何だ、散々えばってそんな棒っきれを使うとは。傑作だな!」

「安心しろ。これでもお前ら程度の雑魚に勝つくらい造作もないから」


男の人の挑発に、黒髪の男の人が挑発し返します。


「だったら、見せて貰おうじゃねえか!! リ・ライム・アステルジ!!!」


とうとう男の人が魔法を放ちました。

それはものすごい速度で私たちに迫ってきます。


「甘い! リ・ライム・アステルジ!!」


私は信じられないものを見ました。

なんと、男の人が放った魔法を跳ね返したのです。

その魔法は放った男の人に向かって行きました。


「なッ!? ぎゃあああ!!」


私は突然の事に言葉が出ません。


「な、何しやがった!!」

「答える義理はない」


怯えている様子の男の人に、黒髪の男の人は平然としています。


「お、俺達は二人だ。総攻撃すれば勝てる!!」


二人の男の人はそう叫ぶと呪文を唱え始めます。


「ル・アクレル・ラムレア!!」

「ルージュ・ベルッサ」


そして一気に放たれたのは大量の魔法の球でした。

それに対して黒髪の男の人は、片手を前方に掲げると呪文を唱えます。


「インベル・イレイズ」


すると、私達の近くに到達した青い魔法の球はまるで最初からなかったように消えました。

そして赤い魔法の球はさっきと同じように跳ね返しました。


「ぎゃああああ!!」

「まだ続けるか?」

「お、覚えてろよ!!!」


黒髪の男の人の問いかけに、男の人は慌てた様子で逃げて行きました。


「ふぅ……」


(お礼、言わないと)


「あ、あの!」

「ッと、これありがとな。助かったよ」


私は男の人に声をかけますが、男の人は私にクリケットの道具である”バット”を返してくれました。

見た目では罅は入っていません。


「あ、はい………ではなくですね、その――――」

「って、ヤバッ!! ごめん俺急いでるからこれで失礼!!」


再び勇気を振り絞ってお礼を言おうとすると、男の人は何やら慌てた様子で走って行きました。

結局私はお礼を言えませんでした。


「お礼、言わなくちゃ」


私はそう心に誓いました。


「………また会えるといいな」


小さな声でそう呟きながら、心の中でお願いをしてみたりします。

そして私は帰路につくのでした。


Side out

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