第16話 宣戦布告
翌日のSHR
「―――ということで、魔法戦のペアは中井さんに決まりました」
田土先生の発表に、クラス中で拍手が湧き上がった。
一部に「負けた~」という悲鳴もあったが。
特にこれといった騒ぎにもならなかった。
「おい、圭一」
「ん?」
休み時間、声をかけたのは、功樹だった。
功樹の表情は非常に清々しい物だった。
「全くひやひやしたぜ」
「悪い。実は二日前には決めていたんだが、ちょっとばかし言い辛くてな」
功樹の皮肉が混じった言葉に、俺は手を合わせて功樹に謝った。
「お前って、すごいのかすごくないのか分かりづらいよな」
「あはは………」
功樹の言葉に、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「まあ、ここからが本当の勝負だ。一番の強豪は4組だ。あそこは代表が勘坂だからな」
「勘坂……」
功樹の出した名前に、俺は思わず声のトーンを下げてしまった。
勘坂。
そいつは、魔法使いだからという理由で自分より下の物を見下す男だ。
俺が一番嫌いな魔法使いのタイプだ。
「あいつは4月の基礎調査で、攻撃力に関して最も強いことを示す”攻撃マスター”の称号を持つほどの男だ。気を付けないと、すぐさま潰される」
「忠告ありがとう。気を付ける」
お礼を言うと、功樹は俺に背を向けると手をひらひらと振って去って行った。
矛盾の魔法使い 第16話「宣戦布告」
「圭一、食堂行こうぜ」
「尾崎君。なるべく急いでね」
昼休み、何時ものように隆と中井さんと共に食堂へと向かう。
「見せるな~圭一。あれだけ迷ってたと思ったら隣の席かー」
「言うな。これでもちゃんと考えてんだぞ」
からかってくる隆に、俺は反論する。
中井さんは攻撃が苦手だが、雷属性特有のスピードで勝負をするタイプだ。
であれば、様々な戦法が可能になる。
それを考えての決定だった。
「とか言って実は中井に気が――「野村君?」――い、いえ何でもありませんっ!!」
隆がさらにからかおうとした瞬間、中井さんの声によって遮られ、直立不動で言った。
その顔は恐怖に震えていた。
中井さんはとてもいい笑顔のはずが、何故か背筋が凍りつきそうな感じがした。
お、恐ろしい。
そんなこんなで、歩いている時だった。
「おい出来損ない」
背後から男の声が掛けられる。
俺の事を”出来損ない”と呼ぶやつは限られていた。
「何だ勘坂」
「ははは、俺様を呼び捨てとは大きく出たな、出来損ない」
振り返ると、勘坂は見下すような目で俺をあざ笑う。
「お前のクラスの強い奴を倒したとか噂になってるけど、どうせインチキでもしたんだろ?」
「尾崎君はそんなことはしないわっ!」
勘坂の言葉に反論其いたのは、中井さんだった。
その表情は怒りに染まっていた。
「さっきの言葉を撤回しなさい」
「はっ! 誰かと思えば出来損ないのペアか。出来損ないのペアだけあって弱そうだな。ま、顔だけはベッピンだろうけど。ゲハハハ!!」
いやらしい眼で中井の体を見て勘坂は鼻で笑いながら言い放つ。
「なッ!?」
その言葉に、中井さんが固まった。
「勘坂、そんな風に啖呵切っている暇でもあったら、魔法の練習でも白」
「何?」
俺の言葉に、勘坂の鋭い視線が俺を射ぬく。
「そんなんで初戦敗退だったら、ただの噛ませ犬だ」
「貴様………」
俺は動じないようにしているが、内心震えている。
勘坂から放たれる殺気は、それほどまでにきつい物だった。
「良いだろう。決勝戦で血祭りにあげてやる。決勝まで来いよ? ま、出来損ないには無理かもしれないがな」
勘坂はそう捨て台詞を吐いて、俺達の前から去って行った。
「ふぅ………」
勘坂が去ったのを確認した俺は、肩の力を抜く。
「尾崎君」
そんな時、中井さんが俺に声をかけてきた。
「何だ?」
「ありがとう、私をかばってくれて」
中井さんのお礼に、俺は少しばかり驚いた。
「別にかばったわけじゃ」
「圭一、あれは誰から見てもかばってる風にしか見えないぜ」
気づかれないと思ってたが、やはり気づかれてしまうらしい。
「さっきの尾崎君、とてもかっこよかったよ」
「そ、そうか」
中井さんの言葉に、俺は頬が熱くなるのを感じた。
「ははは、顔紅くしてら」
「隆っ!」
それを見ていた隆が俺をからかう。
「それはさておきだ。勘坂にケンカを振ったんだから、練習位はしといたほうがいいぞ?」
「そのつもりだ」
「私もよ。あんなこと言われて、黙っているほど私は馬鹿じゃないもの」
隆の忠告に、俺と中井さんはそう答える。
どうやら、さっきが中井さんの中にある何かに火をつけたようだ。
こうして、俺達の練習の日々が幕を開けるのであった。




