第14話 ペアと噂(前編)
続いての投稿です。
圭一の優柔不断な一話です
俺が、クラス代表に決まったことは、瞬く間に寮生の間で広がっていた。
何せ、寮に戻って松井さんに会うなり『クラス対抗頑張ってください!』と言われる始末。
田土先生も『転校して間もない人が選ばれるなんて、すごい偉業よ』と称賛されたりもした。
そんな中で、俺は戸惑っていた。
(俺なんかが代表になってもいいのか?)
俺は出来損ないの魔法使いだ。
それなのに、クラス代表というものをもらってしまった。
「……とにかく、ペアを決めないと」
俺は自室で、クラス代表を示す『1-3』と掘られたエンブレムを右手で弄びながら今後のやるべきことを口にした。
こうして、俺のペア選びと言う最初の試練が幕を開けた。
矛盾の魔法使い 第14話「ペアと噂(前半)」
翌日、教室に入るとざわめきが起こった。
……主に女子から
「お、おはよう、尾崎君」
「あ、ああ。おはよう」
「おはようございます。尾崎さん」
そして矢継ぎ早に、女子の数人から挨拶された。
突然の事に戸惑いつつも、俺は答えて行く。
「羨ましいな、お前」
「ど、どういう意味だよっ!」
本当にうらやましがっているのか、ジト目を向ける隆を俺は問い詰めた。
「いやな。毎年行われるこの対抗魔法戦で異性とペアになると、そのペアは結ばれるという言い伝えがあるらしいんだ」
「な、何だよそのあからさまに怪しい言い伝えは」
俺は、ため息交じりに声を上げた。
「だから、この時期になると女子たちはああやって、自分を選んでほしいというアピールをするんだ。まあ、知っている奴とそう言ったことに興味がある奴だけだがな」
女子たちのざわめきはこのせいかと、俺は結論を出した。
しかしそれだと、この対抗魔法戦はまるで縁結びの為の催しのようにも感じてしまう。
魔法の力の促進のための催しのはずが、なんだか変な感じに思ってしまった。
「で、お前は誰とペアを組むんだ?」
「決めてない」
「ヲイヲイ……」
俺の答えに、隆はコケながらツッコんだ。
「仕方がないだろ。昨日の今日で決められるわけがない」
「とは言え、時間は限られてんだぜ」
隆が真剣な表情を浮かべて言う。
だが、そんなことは分かりきっていることだった。
「まあ、分かってればいいんだが」
何とも言い難い表情でそう言うと、ちょうどチャイムが鳴ったため自分の席に座った。
俺も自分の席に着く。
だが結局、この日ペアが決まることはなかった。
その翌日、昼休みになるなり功樹がやってきた。
「な、何だよ、そんな怖い顔で」
「お前、どうしてペアを決めないんだ?」
怒りを堪えるような表情を浮かべる功樹に、俺は少しばかりおされた。
「どうしてって、まだ誰がいいかが分からないからとしか言えない」
「それならいいが、お前まさかあのヘンテコな言い伝えを気にしてるんじゃないだろうな?」
功樹が問い詰める。
そして思い出すのは、隆が言ったあの言い伝えだ。
『毎年行われるこの対抗魔法戦で異性とペアになると、そのペアは結ばれるという言い伝えがあるらしいんだ』
「……気にしてないと言えばうそになる」
俺はしばらく考えたのちに、そう答えた。
すると、功樹はため息を一つつく。
「あのな、一行事のペアなんて”たかが”な物だ。必ずくっつくなんてことはないし、そもそもそんなおまじないごときでペアを定めるなんて、馬鹿のするようなものだ」
功樹の言葉に、教室が静まり返った。
そして女子からは殺気が向けられる。
……主に功樹に向けてだが。
「別に、”ペアは異性でなければいけない”というルールはないんだ。現に友人同士でペアになるクラスも多い」
「そうなのか?」
功樹の言葉に、俺の心は揺れた。
もしそうだとすれば、功樹か隆と組めばいいのだ。
それならばこれ以上にないほど簡単に決着がつく。
「ああ、もちろんさ。ま、お前がペアを作らなかったために自動敗北なんてことになったら、許さねえという事を言っておく」
そう言い残すと、功樹は去って行った。
ここに来て、さらにペア組みが難しくなったような気がした。
「そういえば中井さん」
「ん? 何かな尾崎君」
俺は隣で次の授業の準備をしていた中井さんに、声をかけた。
「中井さんってどういった戦い方をするんだ?」
「うーんとね……私、攻撃面がてんでダメだから速さを活かして相手をかく乱して少しずつダメージを入れて行く感じかな」
俺の疑問に中井さんは、頬に人差し指を当てて考えながら答えた
「そうなのか……悪いな、変なこと聞いて」
「ううん、尾崎君の役に立てたなら良いよ」
俺の謝罪に、中井さんは嫌な顔一つせずに答えた。
本当に心が広い人だ。
しかし、結局この日もペアが決まることはなかった。
ペアを決める方法何て簡単だ。
白い封筒に同封されていたペアの登録書に、ペアの人が名前を書いてそれを担任に提出するだけだ。
だが、それが出来ずにいた。
そしてとうとう、ペア選考の最終日を迎えてしまうのであった。




