別の寮生たち
シンイチ、ユウトの悩みと
マコト、リョウの企み
リョウが隣室のマコトに挨拶に行った日、同じ一年生のユウトもまた、自分の隣室の先輩・シンイチに挨拶をしていた。
「初めまして! ユウトです。隣に越してきました。よろしくお願いします!」
ドアを開けたシンイチは、175cmの身長に整った顔立ち。いわゆるイケメン枠だった。
「おう、シンイチだ。こっちこそよろしく、ユウト」
ユウトは心の中で即座に叫んでいた。
(うわ! カッコイイ! 仲良くなりたいなあ……)
一方、シンイチもまた、165cmで幼い印象のあるユウトを見て、目を細めた。
(お、かわいい。仲良くなって一緒に遊びたいな)
それから二人は、特に深い理由もなく、互いの部屋を行き来するようになった。
宿題を見せ合ったり、夜食を分けたり、休みの日にゲームをしたり。
距離は縮まるのに、関係は「友達以上、恋人未満」のまま止まっていた。
両片想いである。
シンイチは夜、天井を見ながら思う。
(ユウト、俺のことどう思ってんだろう。かわいいし、一緒にいると落ち着く。でも、友達のままなのか……)
ユウトもまた、枕に顔を埋めて悩む。
(シンイチ先輩、優しすぎる……。もっと仲良くなりたいのに、どうすればいいの)
ある日、シンイチはマコトの部屋を訪れた。
「マコト、ちょっといいか」
「いいよ。どうしたの?」
「お前、リョウと仲良いよな? なんでだ?」
マコトは少しだけ視線を泳がせた。
「……まあ、隣同士だし。気が合うというか。話しやすいし」
「はなし、か。実は俺も相談なんだけど」
「ユウトのことが」
シンイチは苦笑した。
「わかるか。かわいいだろ。一緒にいると楽しいし、もっと特別になりたい。でも、踏み込めねえ」
マコトは静かに頷いた。
「わかるよ。気持ちは」
「どうすればいいと思う」
「……無理に急がなくても、一緒にいる時間を増やせばいいんじゃない。自然と、わかることあるし」
同じ頃、ユウトはリョウの部屋にいた。
「リョウ、相談乗ってくれない?」
「いいけど。どうした?」
「シンイチ先輩と、もっと仲良くなりたいんだ。でも、どうしたらいいかわからなくて」
リョウは腕を組んだ。
「先輩は、ユウトのこと嫌ってないだろ」
「それはそう思うんだけど……特別になりたいというか」
「告白?」
「いきなりは無理。でも、このままだと友達のまま終わりそうで怖い」
リョウは少し考えてから、口を開いた。
「考えとくよ。マコト先輩にも相談してみるし」
「頼む……」
夜、マコトとリョウは互いの相談内容を共有した。
「シンイチ、ユウトのことで悩んでたんだ」
「ユウトも、シンイチ先輩のことで悩んでました」
二人は顔を見合わせ、同時に笑った。
「これ、両片想いだね?」
「間違いなさそうですね!」
「じゃあ……四人で遊んで、無理やりくっつけちゃおうよ」
「それ、いいですね。王様ゲームでもして、お互いに告白とキスさせましょうか」
「……ちょっと強引すぎない?」
「先輩が言い出したんでしょ?」
「まあ、いいよ。きっかけがないと動けないタイプだね、両方とも」
こうして、四人での遊びの計画が決まった。
当日。
マコトの部屋に四人集合し、軽いお菓子と飲み物を囲んで談笑したあと、自然な流れで王様ゲームが始まった。
「じゃあ、王様命令。1番と3番は、お互いに好きなことを告白して、軽くキス」
マコトとリョウはアイコンタクトをやり取りし、自身の番号を伝え合う。すると自ずとシンイチとユウトの引いた数字が分かるのだ。
「ええっ!?」
「ちょっと待てマコト、それ露骨すぎるだろ」
「ルールはルール。拒否したら罰ゲームだよ」
「リョウも、賛成なの?」
「うん!王様の言う事は絶対!」
結局、シンイチとユウトは顔を真っ赤にしながら、向かい合った。
「……ユウト。俺、お前のこと、かわいいと思ってる。一緒にいると落ち着く。友達以上に、なりたい」
「シンイチ先輩……。僕もです。最初に会ったときから、カッコイイって思ってて。もっと仲良くなりたくて……好きです」
次の瞬間、おずおずと唇が触れた。
短いキス。それでも、二人の耳は真っ赤だった。
後日。
シンイチとユウトは並んで歩きながら、ぼそぼそと話していた。
「うーむ……あの王様ゲーム、なんか仕組まれてた気がするなあ」
「ユウト、リョウとは仲良いんだったか?」
「うん。同学年だし。シンイチ先輩こそ、マコト先輩とは?」
「仲は良いよ。寮生は何かと接点あるから」
「そーじゃなくて。マコト先輩のことは、どう思ってたの?」
シンイチは少し考えてから、素直に答えた。
「まあ、親切だし頭いいし、あの見た目だしな。けど、あくまで友達だよ。ユウトは違うよ」
ユウトの顔が、ぱっと明るくなった。
「ホント? 嬉しい」
「俺も、ユウトとこんなに仲良くなれて嬉しいよ」
二人は顔を見合わせ、小さく笑った。
仕組まれた王様ゲームのことは、もう深く追及しなかった。
結果的に、気持ちが繋がったからである。
一方、計画を立てたマコトとリョウは、部屋でこっそり拳を合わせていた。
「成功だね」
「ええ。二人とも、素直でよかったです」
「僕たちちょっと強引だったかもね」
「でも、必要でしたよ。きっかけが」
寮の人間関係は、こうしてまた一つ、甘い方向へ枝を伸ばしたのだった。




