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【完結】大天使と呪われた雛人形 〜ひな祭り、初恋は断罪される〜  作者: 久茉莉himari


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6/8

【6】大天使、髪を断つ。 〜呪いの浄化〜

「……アンジュさま!」


ルシアンの震える声。


アンジュは雛人形を見つめたまま、夢見るように応える。


「ルシアンよ、見よ。

雛人形、きれいだな」


「……アンジュさま!

お願いです!

その雛人形から離れて下さい!」


ルシアンの必死の懇願に、アンジュは応える。


「ルシアンよ、見よ。

雛人形、きれいだな」


すると――

ルシアンはアンジュの細い肩を掴み、雛人形から強引に引き離すと、床にそっと倒した。




その様子を、イレイナの水晶玉越しに見ているロクシーとルチアーノが「……ヒッ……!」と息を呑む。


ロクシーが声を震わせて言う。


「ルシアンは……何をする気なの?」


イレイナはソファに座ったまま、淡々と答えた。


「まずね。

私の水晶玉で見えてるでしょう?

つまり、ルシアンはあのホールを恩寵で囲っていないの。


この魔術無効のセレニス州では、大天使でも恩寵は使えない。

でも、ルシアンは、たった一人の恩寵を使える大天使。

だけど、それも僅かしか使えない。


だから、恩寵を無駄にしたくないのよ。

アンジュの呪いを解く為に、セレニス州で使える恩寵を使い切るつもりよ」


イレイナの言葉に、ロクシーが真っ青になる。


「……イレイナの呪いは、そんなに酷いの?」


イレイナがロクシーを真っ直ぐに見て答える。


「ええ。

この宇宙は陰と陽の法則で成り立っている。

私やルチアーノは、もちろん陰よ。


だからこそ、ルチアーノはお気楽にリリカルな感性とやらを信じて、あの呪われた雛人形を地上に持ってこれたわけ!


でも、陽の側に立つアンジュが、陰の呪いで冒されたら?

最強の陽で断つしかない。

そう、大天使ルシアンの剣ね」


ロクシーがペタンとその場に座ると、呟く。


「最強の陽かあ……」


ぐずぐずと泣き出しているルチアーノを一瞥すると、イレイナが続けた。


「私の呪いは、大天使の剣でなら浄化されるからね。

確かに私は地球最強魔女よ?

大天使たちとも堂々と渡り合って来た。


でも、真正面から無防備に大天使の剣で切られたら?

死ぬわ。

何故なら、私は陰の存在だから。


私が大天使たちと対等に渡り合ってこられたのは、それを回避する術を知っているから。


だから――

ルシアンが大天使の剣を振るわなければならない。

方法は分からないけれど、30分以内にね」


しんと静まり返るイレイナのリビングに、ルチアーノの泣き声だけが響いた。




ルシアンは、アンジュを一目見た瞬間に分かっていた。


呪いがアンジュを侵食している場所を。


あの雛人形は、日本で作られたもの。


日本では古来より、音が同じことにより、髪と神は同列。


だから、日本の高貴な人間は、神聖な場所では髪が乱れても、髪には触れない。


それはルシアンも知識として知っていた。


だが、このアンジュの美しい金の髪を、自分が大天使の剣で切らねばならない。


どんなにアンジュを傷つけたくないと、思って来ただろう。


そして、ルシアンが大天使の剣を振るった時に、アンジュの器は壊れる可能性もある。


アンジュの本体――大天使ガブリエル――が封じられた器が。


その時、くすくすと笑う声が密やかに聞こえた。


素早くルシアンが雛人形たちを見る。


雛人形たちの口元には――

一斉に笑みが浮かんでいた。


ルシアンは、ぼんやりと自分を見上げているアンジュに視線を向ける。


アンジュは柔らかく微笑み、言った。


「ルシアンよ、見よ。

雛人形、きれいだな」


ルシアンのヘイゼルグリーンの瞳から、涙が一粒、零れて落ちる。


そうして――

「アンジュさま……!ご容赦を……!」と告げると、アンジュの金髪を根元から掴み、大天使の剣で断ち切った。




その刹那――

イレイナの水晶玉が破裂した。




アンジュの金髪が、バサリと落ちた。


ルシアンの魂すら壊れそうになったその瞬間、アンジュは、ただ、清められていた。


だが、アンジュは目を閉じ、気を失っている。


ルシアンには、アンジュが人間として“生きている”ことは分かっていた。


だが、それが分かっていてもなお、ルシアンの涙は溢れて、止まらない。


この世界で、一番傷つけたくないお方を、私は傷つけた――


そうして、どれほど泣いていただろうか。


ふいに頬に触れた指先。


ルシアンが瞳を開ける。


そこには――

目覚めたアンジュが不思議そうに、ルシアンを見上げ、ルシアンの頬に白く細い指先で触れていた。


「ルシアンよ。

なぜ、泣いておる?」


アンジュの微かな微笑み。


その真っ白な頬に、ルシアンの涙がポタポタと落ちる。


ルシアンは嗚咽しながらも、答える。


「泣いてなど、おりません!」


アンジュの柔らかな声。


「話せ。ルシアンよ」


ルシアンは一度、口を真一文字に結ぶと、震える声で答えた。


「アンジュさまの髪を、私が大天使の剣で断ちました……!」


「なぜ?」


ルシアンはまた、涙を溢れさせると、言った。


「あなた様の命には変えられず……!

申し訳ございません!」


すると、アンジュがルシアンの頬に当てていた指先で、さらりと自分の金の髪に触れた。


「……髪……?

髪がどうした?」


にこりと微笑むアンジュの髪は――

元に戻っていた。


ルシアンの目が見開かれ、ルシアンはアンジュを抱きしめて、今度こそ、号泣した。


アンジュはルシアンの腕の中で、そのまま、静かに抱きしめられていた。




ルチアーノは、イレイナの水晶玉が破裂し、アンジュは清められたと聞いて、ルシアンがアンジュを抱き上げ、ホールから去ると、雛人形を風呂敷に包み、一人しょんぼりと地獄に帰った。


そうして、地獄の炎にそのまま投げ入れた。


一瞬で炎に焼かれ、消え去った風呂敷袋を見て思う。


――俺様なんて

もう、ルシアンのズッ友でいられない。

アンジュちゃんにも合わせる顔がない。

ロクシー先生も呆れてる。

二度とみんなには会えない、と。


「ごめんな……アンジュちゃん……ルシアン……。

さようなら、ロクシー先生……」


ルチアーノの涙と呟きは――

誰にも届かず、雛人形のように消え去った。




そうしてイレイナの館では――


ロクシーが鋭い目をして言った。


「イレイナ!

アンジュちゃんの髪が戻った理由、分かってるんだよね?

話してよ!」


イレイナはホホホと笑うと、満足気に告げる。


「やっぱりあんたって頭が良いのね、ロクシー!」

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