【4】ひな祭り、開催。 〜十二段の視線〜
そうしてアンジュとロクシーは、ルチアーノが運転する愛車、地球に8台しかない深緑のフェラーリで、セレニス・ベイのハイブランドが立ち並ぶ中心街へと向かい、ひな祭り用のドレスや小物を買い込んだ。
アンジュには、桃の節句に相応しい薄いピンクのシフォンを重ねたドレス。
ロクシーは、ちょっと大胆な真っ白なシフォンのチューブトップに、深いスリットの入ったふんわりとしたパンツスタイル。
動きやすさも重視だ。
ルチアーノも、そんな二人を見て「俺様もお洒落をしたいでありますッ!」と言い出し、ロクシーがテカテカのピンクのネクタイと、ピンクの薔薇のコサージュを選んでやった。
世界的パティシエによるケーキの用意や、五つ星レストランのシェフによる料理も用意され、甘酒は流石に少ししか飲めないだろうと、最高峰のロゼワイン「シャトー・デスクラン」も用意された。
イレイナすら、ひな祭りの為にと、京都の最高級和菓子を差し入れしてくれることになった。
ロクシーは、イレイナはどうせジャパンの素敵なお菓子と、美麗なアンジュちゃんを撮影したいんだろうな、と気づいていたが、ありがたく頂戴することにした。
無料で、最高級。
これで受け取らない理由があるだろうか。
桃の花も空港便で日本から直輸入され、着々と準備は進んで行き――
三月三日がやって来た。
その日は、朝から快晴。
アンジュは心地よい眠りから覚めると、シャワーを浴びて簡単な普段着に着替え、メインリビングに行くと――
パソコンを目の前にしたロクシーと、水晶玉に手を翳すルチアーノがいた。
「おはよう!
二人とも、朝から仕事か?」
アンジュの鈴の音のような声に、ロクシーはにっこり笑い、ルチアーノは椅子からピョンと跳ねる。
ロクシーが笑顔で口を開く。
「うん!そうなんだ!
突然、仕事の依頼が複数入って、断ってるところ!」
アンジュがにこりと微笑む。
「流石はロクシーだ!
有能だから、世界が放っておかないのだな!
ルチアーノも仕事か?」
ルチアーノがアワアワしていると――
ドスッ……。
ルチアーノの太腿に、ロクシーの手刀が落ちる。
「……あがっ……!……そ、そう……!
俺様もっ……地獄が、なーんか燃えてて!」
アンジュが小首を傾げる。
「地獄が燃えている……?
ルチアーノは地獄に戻らなくて良いのか?」
ドスッ……。
再び落ちる、ロクシーの手刀。
「……ぐわっ……!え、えーと……!
そう!地獄の消防署って超絶優秀!
地獄の炎も消し去るくらい!
今、報告を聞いてただけ!」
すると、すかさずロクシーが言った。
「私たちはあと5分くらい遅れちゃうけど、アンジュちゃんは朝食にしたら?
もう用意出来てるし!
冷めちゃうともったいないし!」
アンジュがにっこりと笑う。
「そうだな!
冷めてしまうのは、もったいない!
では私は先に朝食にしておこう!
二人とも、待っているぞ!」
ロクシーがパチンとウィンクする。
「うん!直ぐに行くね〜!」
そうして、アンジュの姿がメインリビングから消えると――
ロクシーが研ぎ澄まされたナイフのような視線で、ジロリとルチアーノを見た。
「あんたね……。
アンジュちゃんが来るかもしれないって考えずに、ルシアンの行方を追ってたの?」
ルチアーノがブワッと冷や汗を吹き出しながら、震える声で答える。
「も、申し訳ございませんッ!
アンジュちゃんは美貌の食いしん坊!
起きたらダイニングに直行すると思っておりました!」
ロクシーが深いため息を吐くと、一拍置いて言った。
「浅はか!!
まあ、いいわ。
今のは罰金に追加しとくから。
それで?
ルシアンは地上にいないの?」
ルチアーノは、
――罰金制度が導入されている!?
と叫び出しそうになるのを、必死で堪える。
「ハイッ!
水晶玉には何の反応もありませんッ!」
ロクシーもパソコンに視線を戻すと、呟く。
「気象的な異常も、地球にも、宇宙にも、太陽フレアにも無い。
地球では、大天使が起こすような事象も報告されてない。
ルシアンは、ひな祭りに間に合わないかもね……」
ルチアーノが深紅のシルクのハンカチで目元を押さえる。
「ならば……ッ!
ルシアンが戻った時に、ひな祭りのアンジュちゃんを観せましょう!
ルシアンもそれで満足する筈……!!
リリカルッ!」
ロクシーの手刀が、今度はルチアーノの鳩尾にクリティカルヒットした。
それから、三人で朝食を済ませ、午後のひな祭りのパーティに備える。
アンジュとロクシーはドレスに着替え、アクセサリーを付けては自撮りをしたり、途中軽食を挟んだりしていたら、あっという間にパーティの時間になった。
そして、午後一時。
パーティ会場に向かうと、ルチアーノが扉の前に立っていた。
ルチアーノがくるりと右腕を胸元に添えると言った。
「アンジュちゃん、ロクシー先生、どうぞ!
ひな祭り、開催です」
ホールの中は、ロココ調で統一された空間。
巨大なシャンデリアが頭上から輝き、金と白の彩りの中、12段飾りの雛人形が壁際にそびえ立っていた。
赤い毛氈の上の、きらびやかな雛人形たち。
アンジュの青い瞳がキラキラと輝く。
「……なんと、美しい!
これが雛人形か!?」
ルチアーノが自慢げにゴホンと咳払いをする。
「そうだよ、アンジュちゃん❤️
この雅な美……正にジャパンの奇跡!
小物も“平安時代”というジャパンの歴史になぞられて作られてるのさ☆
リリカルッ❤️❤️❤️」
ロクシーが舌打ちする。
「じゃあ何で、会場をロココ調に統一したのよ!?
そこも日本らしくすれば良いだろーが!」
そんな鋭い囁きも、ルチアーノの耳には入らない。
ルチアーノは浮かれ切った声で言った。
「アンジュちゃん!ロクシー先生!
まずは乾杯しましょう!」
そして、パチンと指を鳴らす。
ウェイターが、ロゼワイン「シャトー・デスクラン」が入ったワイングラスを、さっとルチアーノの前に差し出す。
ルチアーノが満面の笑みで言う。
「さあ!
アンジュちゃん!ロクシー先生!
ひな祭りに乾杯〜!!」
アンジュも嬉しそうに、ワイングラスを掴む。
そうして、三人のグラスが重なり、カチンと軽快な音を立てた。
ロクシーも一口ワインを飲むと、笑顔でアンジュに言った。
「ひな祭り、楽しもうね!」
アンジュもワインを一口飲み、にこりと微笑む。
「うむ!」
その瞬間――
雛人形たちの目だけが、横に動いた。
そう、アンジュに向かって。
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