前世でパッとしない人生を過ごしたから、異世界では憂さ晴らしだけにモブを合法的に圧倒します。奴らの人生? 前世の俺の人生並みにどうでもいいことだろう。
「悪いな。お前らの人生は、前世の俺が捨てた『燃えないゴミ』より価値が低いんだ」
「やめてくれ! この村にはもう、差し出せる食料も娘もいないんだ!」
目の前で泥まみれになって泣き叫ぶ男。名前? 知らん。「村人A」で十分だ。前世の俺も、会社じゃ同程度くらいの認識だったからな。お互い様だろ?
俺は指先ひとつで、無限の魔力を込めた時空圧縮を叩きつける。
ドシャッ、とカエルが潰れたような音。快感だ。
「おいおい、そんな顔するなよ。俺は『合法』にやってるんだ。この土地の領有権はさっき『魅了』した王妃様から、たった金貨1枚で買い取った。つまり、ここで俺が何をしようが、それは正当な権利の行使ってわけだ。……前世の俺が、サービス残業を『社会人の義務』という言葉で殴り倒されたのと同じようにな」
俺は『ステータス閲覧』で、村人たちの絶望値をチェックする。
上がる、上がる。株価もこれくらい右肩上がりなら、俺も今頃あっちの世界で勝ち組だったかもしれない。
「いいか、モブ。お前らが今日まで必死に耕してきた畑も、守ってきた家族も、俺にとっては退屈しのぎのチェス駒に過ぎない。お前らが何十年かけて積み上げた『幸せ』を、俺は1秒で更地にする。……だって、そうしないと割に合わないだろ?」
俺は立ち上がり、怯える娘の一人の顎をクイと持ち上げた。
「俺は前世で、満員電車に揺られて、誰にも感謝されず、最後はトラックの轢き逃げで人生の幕を閉じた。……その時、俺の人生に同情してくれた奴が一人でもいたか? いや、いない。ニュースの端っこで『交通渋滞の原因』として処理されただけだ」
だから、この世界では俺が「渋滞」を作る側になる。
「さあ、次は誰の人生を『カット』してやろうか? 安心しろ、努力なんてしなくていい。俺が全部無意味にしてやるからさ。……ははっ、最高だな! 誰かの人生をゴミ箱に捨てる音が、こんなに心地いい子守唄になるなんて!」
俺は無限の魔力を指先に集め、無慈悲な輝きで村を照らした。
あーあ、明日の朝刊が楽しみだ。……まあ、この世界に新聞なんてないし、あっても俺が検閲して『勇者の善行』に書き換えるんだけどな。
腐った脳みそを必死に耕してきた勇者の極悪非道な行いを咎められる者は誰一人していませんでした。
めでたし、めでたし。




