バスケでモテよう、は本気だった
体育館の床に、夕陽が長く伸びていた。
理央はホワイトボードを片づけながら、ふと立ち止まった。
「俺たち、結局勝てなかったな」
瞬が言った。
蒼空は笑った。
「でも、ちゃんとやった。空気は変えたし、なんか…残ったよな」
蓮がノートにさらっと書いた。
“善戦って、覚えててもらえること”
藤堂は何も言わなかった。
みのりは、女子バスケ部の練習を終えて、体育館の隅に立っていた。
「理央、次の大会も出るの?」
「うん。今度は、勝ちたい。ちゃんと、全部使って」
「じゃあ、私も応援する。“ナイス!”って」
理央はちょっと照れて言った。
「それ、俺のセリフなんだけど」
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帰り道。5人は並んで歩いていた。
誰も何も言わなかったけど、なんとなく、笑ってた。
瞬が言った。
「青春って、叫ぶことだな」
蒼空がつぶやいた。
「時間って、意外と伸びたり縮んだりするんだな」
蓮はノートに書いた。
“言葉にできないことほど、あとで思い出す”
藤堂は、みのりの背中をちょっとだけ長く見ていた。
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理央は、ホワイトボードの最後の余白に、そっと書いた。
『理論バスケ・ver5.0』
・“好き”は、たぶん最強
・“ナイス!”は心で言う
・青春は、あとで思い出してニヤけるやつ
・三角関係は、ちょっとめんどいけど悪くない
・告白は、タイミングじゃなくて、たぶん“空気”だ
そして、こう締めくくった。
『バスケでみのりを振り向かせたい』――それは、本気だった。




