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超絶ビギナーだけど、バスケしたい!  作者: 双鶴


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6/8

みのりの涙と、理央の覚醒

合同練習の当日。

体育館の空気は、いつもより少しだけ張りつめていた。


女子バスケ部はすでにアップを終えていた。

理央たちは、まだストレッチの途中。緊張で、誰も口を開けない。


みのりが近づいてきた。


「よろしくお願いします」


その声は、少し硬かった。

理央は、彼女の目が赤いことに気づいた。


「…泣いた?」


「ちょっとだけ。昨日の試合、最後のシュート外して負けた。私のせいって言われて」


理央はホワイトボードを見た。


「違う。統計的に、試合は1本じゃ決まらない。流れと分布で決まる」


みのりが笑った。


「それ、慰め?」


「違う。理論だ」


---


璃子が記録用紙を片手に近づいた。


「“感情の乱流”って、記録しておくね」


理央はうなずき、ホワイトボードに書き加えた。


『理論バスケ・ver3.0』

・感情の乱流=予測不能な揺れ

・乱流は“声・視線・沈黙”から発生する

・対処法:受け止めて、立て直す


---


藤堂がぽつりとつぶやいた。


「泣くほど悔しいって、悪くない」


陽翔が逆立ちから着地して叫んだ。


「よっしゃー!俺、乱流の中でもバク宙できる!」


瞬が笑った。


「お前、乱流の使い方間違ってる!」


蒼空が言った。


「でも、乱流って、誰かの感情が生む“揺れ”だよな。空間が歪む感じ」


理央はうなずいた。


「なら、俺たちも揺れていい。揺れながら、進めばいい」


---


その日の練習は、ぎこちなく始まり、少しずつ熱を帯びていった。

女子のパスは速く、シュートは正確だった。

理央たちは、声で空気を揺らし、時間を支配しようとした。


璃子は記録を取りながら言った。


「この空気も、乱流だね」


理央は答えた。


「でも、もう怖くない。理論に組み込めば、揺れも武器になる」


---


練習後、みのりが言った。


「ありがとう。ちょっと楽になった」


「それ、理論の効果かも」


「違うよ。仲間の力だよ」


理央はホワイトボードを見つめた。


・感情は、戦術の外にあるのではなく、“戦術の中にある”


---


理論バスケ・ver3.0(第5話時点)


項目内容

感情理論“乱流モデル”導入:感情の揺れを戦術に組み込む

組織進化藤堂=静の共鳴、陽翔=動の突破、璃子=記録と共感の触媒

戦術補足声・視線・沈黙が“乱流”を生む要素として再定義

教育的補足理論=感情を否定せず、支える構造として機能する

次の課題区大会に向けた“実戦理論”の構築と、みのりとの再接続の伏線形成


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