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星と召喚と女神の聖剣士  作者: 桐生スケキヨとYOM
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第023話「戦いの火蓋」

【〇二三 魔法の心得】

■エネスギア人以外でも魔法は使え、火をおこしたりなど、生活の中において浸透しているものもある。

戦闘に使うような威力を持った魔法は教会か、軍学校などにおいて習得する必要があり、一般人が独力で覚えることも可能ではあるが、セルフィリア共和国内において民間人が魔法で破壊行為を行うことは重罪となる。

狩人、治安維持目的、旅の自衛などにおいての使用は一部免除されることになる場合もある。

エリシアとルーミアが教わった『例の魔法』は教会が禁止しているものであるため、バレてしまったら非常によろしくない。

【〇二三 戦いの火蓋】


 木製の柵で囲われたチェロリダ村に入るための門は村の南側にひとつしかない。ユーリたちが村に近づいた時、この柵にも注目した。


「見てユーリ、東側の柵が壊れてる」

「本当だ。でも、柵が外側に崩れてる。村の中から崩したということか?」


 エリシアが指さした先、チェロリダ村東側の柵が、外の大森林に向かって崩壊している。

 これは不自然な光景だった。


「門は壊れていない……」


 ルーミアがつぶやく。門は壊れておらず、解放されている。それなのに柵の一部が内側から壊されているのは、すぐには説明がつかなかった。


「村人が逃げ出したとか?」


 エリシアの提案にユーリは首をかしげた。


「帝国に逃げるのか? 俺たちセルフィリア人は帝国に捕まったら奴隷として鉱山か農場送りで過酷な強制労働だ。それなら、この村にいた方がまだマシじゃないのか」

「マシというより、だいぶいいわね。それじゃ考えられないか……」

「森で遭遇した災害獣、跳刃鼬(ブレードウィーゼル)に襲われたという可能性は?」


 ルーミアの指摘はユーリも考えていたものだった。


「その可能性は俺も考えてみたけど……森にいる跳刃鼬(ブレードウィーゼル)が来たとして、まず門は開けない。それに跳刃鼬(ブレードウィーゼル)が村を襲うなら、外側から柵が破壊されるはずだ」

「なるほど」


 ルーミアは頷いて納得している様子だった。


「どのみちここで考えていてもわからないわ。村に入ってみましょう。誰かいるかもしれない」

「そうだな」

「うん。それにしても……静かな村ね。なんの音も聞こえない。なんだか気味が悪い」

「怖いこと言わないでよルーミア……」

「じゃあエリシア隊長が先頭で」


 怖がるエリシアに、ユーリがそう言うと、エリシアは背筋を伸ばしてユーリを見る。


「隊長として命じます。ユーリ、先頭に立ちなさい」

「わかりましたよ。自業自得か」


 ユーリは苦笑しながらエリシアの脇を通り先頭に立つ。エリシアは肩から提げていた銃を構え、撃鉄を引いて初弾を装填した。

 それを見たルーミアが問う。


「戦闘になるの?」

「万が一に備えて、かな。ルーミアも、魔導杖の安全装置は解除しておいた方がいいかも」

「うん、そうする」


 ルーミアは手を伸ばし、魔導杖の先端にあるランタンのような部分を数回つついた。


「行くぞ」


 半開きになっている木製の門に手をかけ、引く。すると重い門がゆっくりと開いた。

 村の中は静まり返っており、見渡す限りでは出歩いている人はいない。家から立ち上る煙なども見えない。放し飼いにされていそうな家畜もいなかった。

 村の中に数歩入り、ユーリは一度立ち止まった。


「……生き物の気配がない」


 後続のエリシアも不審に思い、銃を構えていた。


「気をつけてユーリ、ルーミア、敵の待ち伏せがあるかもしれない」


 エリシアのその言葉を聞き、ルーミアは魔導杖を構える。

 緊張感が高まる中、ユーリはゆっくりと音を殺して歩き出す。


「エリシアとルーミアはそこに。俺は……家の中を見てくる」

「わかった。用心して」

「気をつけてね」


 ユーリは一度後ろを振り返ってふたりに頷き、扉が開けっぱなしになっている民家に入る。

 民家は窓も開けっぱなしになっていて、光は入っていた。だが、人の気配はない。

 入り口から入ってすぐにある台所には干からびた根菜のようなものが切られた途中で投げ出されていた。

 ユーリは近づき、汲み置きされている水瓶の水を手ですくった。


「濁ってるな。使われなくなってからそれなりに時間が経ってるのか」


 生活道具などはそのままで、荒らされたような痕跡はない。人だけがそのまま消えてしまったような様子がある。


「やっぱり跳刃鼬(ブレードウィーゼル)に襲撃されて避難したのか……。いや、でもそれじゃ柵の壊れ方が……」


 ふと、正面の門から跳刃鼬(ブレードウィーゼル)が入り、中で暴れて柵を壊して出て行ったという可能性が浮かぶ。崖から村側に発生している地面の亀裂も、跳刃鼬(ブレードウィーゼル)を追い払うために魔法の心得がある人が放ったという可能性もある。


「けど、水が腐るくらい時間が経ってるなら、住民は基地へ逃げてくるはずだ」


 他の家も調査してみるしかない、ユーリはそう思いながら家を出る。外で待機していたエリシアとルーミアがこちらを見る。


「料理が途中でそのまま放置されていたよ。水瓶の水は腐っていたから、人がいなくなってそれなりに時間は経っていると思う」

「襲撃の痕跡は?」

「なかった。中は荒れていない」

「外も見ていたけど、あれを見て」


 エリシアの指さした先にも家があり、その木製の建物は二件が大きく損壊している。崖からの亀裂がある、その延長線にある建物だった。


「大きく崩れてるな。ルーミア、魔法でああいう壊れ方をするものか?」

「するよ。強い力をぶつける魔法はいくつもあるから、少し心得のある人ならできると思う。そう難しいものでもないよ」

「うーん……」


 ユーリとエリシアは考え込む。


「任務は村の調査と、帝国兵がいたらその奪還だから……このまま帝国兵がいなければ、帰って報告すれば完了……なのかな」

「そうじゃないか? ここから先はギバ渓谷で人も住んでいないし、人が住んでるって話しも聞いたことがないから、チェロリダ村の人たちが避難するなら基地に来るはずだ」

「そうね。念のためにもう少し見てまわって――どうしたのルーミア?」


 ルーミアはふと、一点を指さしていた。


「あれ」


 ユーリとエリシアがその指先が指すものを見る。するとそこには。


「ユボリ族!?」


 槍を持った、一匹のユボリ族がいた。ユーリたちが気づいた瞬間、ユボリ族もこちらに気づく。


「ギギッ!」


 ユボリ族は驚いたように、さっと引き返してしまった。


「なんだ!?」

「待ち伏せ……じゃないの?」


 思わず、ふたりは拍子抜けしてしまった。てっきり、待ち伏せの先兵で周囲は囲まれていると思ったのだが、そのユボリ族は一匹で、引き返してしまった。


「斥候部隊か?」

「そうかもしれない。本隊を呼ぶつもりかも」

「それなら、村が占拠されるってことか」

「……逃げるわけにはいかなそうね」


 ユーリとエリシアはそう言いながら、背中の荷物を降ろす。

 ――戦闘になる。

 そう思ったルーミアも、荷物を降ろした。

 すると、村の奥の方からがちゃがちゃという鎧の音が聞こえる。


「……あれ?」


 その音を聞いたエリシアは首をかしげた。


「そんなに多くなさそう?」

「来るぞ」


 ユーリとエリシア、ルーミアの立つ村の大通りに、一〇匹ほどの武装したユボリ族が姿を現した。そして、そのユボリ族の中にふたり、ユボリ族ではない姿がある。


「……ゾディアスタス人!」


 エリシアが驚く。

 ゾディアスタス人自らが、こうした辺境の現場に出向くことはめずらしいことだった。

 ゾディアスタス人は長身の男と、その後ろに控える女がいた。男は身長よりも長い大剣を担いでおり、女は両腰に破砕棍を下げている。

 男はユーリたちを見るなり、ユボリ族の間を割って前に出てきた。

 ユーリは咄嗟に剣を引き抜き身構え、エリシアは銃で狙う。

 すると、ゾディアスタス人は声を上げる。


「我が名はガブリアス。この地を任されたゾディアス帝国軍将校である!」


 ゾディアスタス人の名乗りに、ユーリとエリシアは驚いた。普通、敵を前にこのような名乗りを上げるゾディアスタス人などいないからだ。


「この者は我が側近たるパルアである」


 後ろに立つ女のことも紹介する。


「村に潜伏して待ち伏せ、セルフィリア軍を迎え撃とうと思っていたが、どうやら先をこされたようだ」


 ガブリアスがそう言うと、後ろにいるユボリ族が騒ぐ。


「ギギっ、ガブリアス様出遅レタ!」

「コレハ失態! ガブリアス様ノシッタ――イ!?」


 騒いでいた二匹の頭を、パルアの左右の手それぞれが掴み、持ち上げる。


「おまえたち、ガブリアス様を愚弄するようならこの頭握り潰す!」

「ギギ! ガブリアス様正々堂々! カッコイイ!」

「ガブリアス様勇敢! イサギイイ!」

「わかればいい。言葉には気をつけろ」


 パルアが手を離す。どさっとユボリ族が地面に落ちる。


「見たかエリシア、あのパルアとかいうゾディアスタス人、かなりの力だ」

「そうみたい。持ってる武器も、力を活かせそうなものだものね」


 ガブリアスは続ける。


「先に遭遇した部隊は我々が撃滅した。増援を送るつもりならもっと大軍を投じるかと思ったのだが、貴公は三人と見受ける。教会騎士をのぞいた前のふたりは……我らで言うウィスパニアの二凶星か?」


 ユーリとエリシアは思わず顔を見合わせる。ユーリが頷くと、エリシアも頷いた。

 そしてエリシアは銃を下ろす。


「この部隊を率いるウィスパニア方面軍エリシア少尉です。二凶星という呼び名ははじめて耳にするものです」


 相手は将校と言ったので、階級の下のエリシアは丁寧に応えた。相手が礼節を持って話しをはじめたので、それを無碍に断って戦闘を開始するのは少々野蛮なことだと思えた。

 エリシアは続ける。


「しかし、我が部隊は敗走を知りません。願わくば、あなた方の部隊がこのチェロリダ村より退いてくれることを――」


 すると、ガブリアスはにやりと笑みを浮かべ、パルアを見る。


「聞いたかパルア。敗走を知らぬと言った。あの教会騎士は予想外だがこのふたり、間違いなくウィスパニアの二凶星だ!」


 ガブリアスの興奮がパルアにはわかった。


「いかがいたしましょう」

「決まっている。ここで討ち取る! 聞こえるか二凶星! 我は我が武勲のため、ここで貴公らを討ち取る! 存分に抵抗するがいい! それが我が武勲と武勇伝となる!」


 ガブリアスが背中の剣を抜き、構えた。パルアもふたつの破砕棍を構える。


「話し合いで終わらなかったみたい」

「やるしかない。俺はあのガブリアスって方をやる。エリシアはパルアという方を、ルーミアは少し大変かもしれないけど、周囲のユボリ族を任せた。大丈夫か?」


 魔導杖を構えるルーミアはハッと短く息を吐くと、こくんと力強く頷く。


「任せて。大丈夫」


「行くぞ二凶星!」


 ガブリアスが走り出す。


「エリシア、ルーミア、やるぞ!」

「やってやりましょう!」

「うん!」


 チェロリダ村での戦闘が開始される。この時、村に起こった微かな地面の揺れには、誰も気がつかなかった。


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