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2.マッカーサー元帥からマークス大佐への書簡

 OFFICE OF THE SUPREME COMMANDER FOR THE ALLIED POWERS

 連合国軍最高司令官総司令部


 日付: 1945年12月5日

 宛先: ロバート・D・マークス大佐

 差出人: ダグラス・マッカーサー、連合国軍最高司令官


 マークス大佐


 君が11月20日付で提出した、日本国民の社会心理状況に関する報告書、興味深く拝読した。焦土と化したこの国で、国民の精神が物理的な瓦礫以上に崩壊しているという君の分析は、極めて的確である。彼らが神と崇めた存在は、今や一人の人間に過ぎず、その精神はまさに君が言うところの「白紙タブラ・ラサ」の状態にあるのだろう。これは危機であると同時に、我々が歴史という名のキャンバスに新たな絵を描くための、またとない好機でもある。


 特に私の注意を引いたのは、報告書の結びにある君の提言だ。

 旧来の価値観が強制的にリセットされたこの特異な環境を利用し、人間社会の原風景を探るための長期的研究。その着想は、大胆不敵であり、そして極めて魅力的だ。我々の使命は、単にこの国を武装解除し、民主主義の制度を与えることだけではない。その精神の根底に、二度と我々に牙を剥くことのない、新たな価値観を植え付けることにある。そのためには、まず人間という粘土の性質そのものを知らねばならん。


 君に、この「タブラ・ラサ計画」の具体的な立案に着手する権限を与える。

 目的、方法論、必要な資源、そして何よりも、この計画が外部に漏れることのない万全の機密保持体制を構築し、私に直接報告せよ。


 我々が今立っているのは、歴史の転換点だ。この試みが成功すれば、それは一国家の再建に留まらず、人間文明のメカニズムそのものを解き明かす、神の領域に踏み込む一歩となるやもしれん。


 君の知性に期待する。

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