晴天の4年
「モテたーーーーーい!」
このあふれだして今にも空が包んでくれそうな感情を頭に詰め込んで今日も一日過ごす。
全盛期が早すぎた自分を日々恨んでは「そんなもんなのかな」と言い訳して早3年。
自分のモテ期は幼稚園の年長からだったのだろう。
年長のころ彼女を作った。
あの頃は【恋愛】の二文字さえ知らなかった。
ただ親の見ているドラマに影響受けて半ば【ごっこ】であったに違いない。
それでも自分は満足していたのだろう。
周囲よりも知識が多いと錯覚し、大人に一歩近づいたことが一番のよろこびだったのだから。
こんなマセガキだったけれどこの自惚れた自分はここでは終わらなかったのがこの話の肝である。
一年生のころはまだよかった、よかった…一年生は。
二年生からだろう女性に好意を持たれ始めて鼻を高くしていたのは。
この時まだ幼稚園の頃の彼女とは付き合っていたのにも関わらずほかの女性と付き合おうとしたのには
今の自分からするとドン引きである。
こんなことは小学生3年まで続いてしまったというわけだ。
そんなこんなで今から始まる中学生の入学式までこれを引きずったままなのである。
我ながら自分の昔話に嫌悪感を抱いていると友人の佐藤が話しかけてくる。
「早く入学式終わらないかな~」
「それな始まる前だけどマジでなんの意味があるのかわからんわ」
小学生からの中である佐藤とは二人して学校嫌いである。
暇なんだろう佐藤が話し出す。
「おいお前彼女いつ作るんだよ」
「いやぁ、俺は作らなくてもいいかな」
「なんだお前、モテないからって負け惜しみか?」
「は?佐藤あとで覚えとけよ」
お察しの通り佐藤には彼女がいる、学校は違うらしいが。
そんな佐藤の発言に若干キレながらも場も場なのでいったん話を区切ることにした。
確かに負け惜しみかもしれないけれど今までのトラウマのほうが大きいんだよ。
そんなくだらない話をしているうちに入学式が終わった。
残念なことに佐藤とクラスは違ったが新しい環境で過ごすには知り合いがいないほうがいいだろう。
ガラガラと教室のドアを開け担任の先生が入ってくる。
「初めまして、これから担任の先生をやらせていただきます」
「とりあえずこのクラスになれるために班ごとに自己紹介してみましょう」
入学式のお決まりだなと思いながら机を中央に向ける。
自己紹介をする前に顔を確認しとこうと周囲を見渡す。
一人だけ自分の目には一段と輝いている女の子。
晴天が自分に訪れた。
いわゆる一目ぼれってヤツだったんだろう。
まさかこの出会いが自分の人生に戸惑いを与えるなんて思いもせず、この時はただひたすらに彼女を眺めてしまった。