表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポイント・ネモの星  作者: 都津 稜太郎
1.ポイント・ネモ
7/18

7.サクラ157-e ①


 我々第4分隊の当直日が3日後に迫った月曜日。戦闘訓練を終えて銃の手入れをしていると、内線が鳴った。それを受け取った那須曹長は浮かない顔をしている。

 受話器の口を手で抑えた那須曹長が、「隊長、当直について小隊長からお電話が」と一条隊長に内線を取るように促した。受け取った一条隊長は「分かりました」と「大丈夫です」のふたつの言葉しか話さないので、どうにも内容が掴めない。

 副隊長の里美と目が合うが、特に心当たりがないようで小首を捻っていた。


「……了解しました、失礼します」


 静かに受話器を置いた一条隊長は、皆の顔を見回し、全員が揃っていることを確認する。


「……みんな聞いてくれ。俺たちの当直が早まった、明日からになる」

「え……?」


 当直は基本2日で一回として扱われるのだが、これは、安全確認と時間の制限等により2日に分けて行わなければ、十分な作業時間を得られないからだ。

 そして今回のように当直が早まる事象は、他の分隊が任務続行不可能となった場合に発生する。今日の当直である第3分隊に、何かしら起きたのかも知れない。


「いや、他の分隊の事情による物では無いから、安心してくれ」


 自分達の一条隊長を見つめる不安な視線を察してか、即座にその可能性が否定された。だが、一条隊長の表情は明るくない。


「サクラ157-e の観測施設から連絡が入っていないそうだ。本来、明日も当直を行う第3分隊のサクラ157-bでの任務は解除となり、俺達がサクラ157-e に入る」


 静かに頷く分隊員たちを、隊長が見回す。


「整備が終わり次第、ブリーフィングをするぞ」

「「「よし」」」



 翌日0900、我々第4分隊はポータルの目の前で最終確認をしていた。

 一条隊長を中央にして、我々が囲んでいる形だ。


「重要事項だけ話すぞ……サクラ157-e の大気組成は酸素濃度が低い、酸素残量に注意しろ」

「「「よし」」」

「重力は地球の1.38倍。体が重くなるぞ」

「「「よし」」」

「今回の任務は通信途絶の原因の特定及び、当該惑星の現地有害”宙獣”の駆除。以上!」

「「「よし!」」」


 隊長がポータルに向き直ると同時に、天井のスピーカーから「第3分隊、ポータル使用許可」という声が響いた。

 その声に全員がサムズアップで、自分の状態を伝える。一条隊長が静かに我々の意思を確認すると、いつも通りの言葉を発した。


安全装置(セーフティー)解除……行くぞ!」


 走り出してジャンプでポータルに飛び込むのはいつも怖い。

 もしかしたら「このまま宇宙に放り出されてしまうのではないか?」という不安が、海岸に打ち寄せる波の如く、絶え間なく心の奥へ打ち寄せる。


「「「よぉし!!」」」


 その不安を、隣にいる仲間たちと、声で誤魔化すのだ。


 一歩目を踏み出した我々はもう止まれない、徐々に加速してポータルに飛び込んだ。


 体が無限に伸びる感覚に襲われた後、唐突に目の前に先程の無機質なポータル室と打って変わって、色彩鮮やかな景色が広がり……それが一気に上昇する。


「んぐぅ!」


 僅か30cm程の高さに浮くポータルからでも、フル装備で飛び降りるとそれなりの衝撃が来る。

 だが、この衝撃にかまけている暇はなく、直ぐに愛銃のG36Cを、持ち上げて周囲の状況確認だ。重力が地球より重いせいで、持ち上げたG36Cどころではなく、自らの腕でさえも随分と重く感じる。


「クリア!」「クリアァ!」「クリア」「クリア!!」


 それぞれが担当方向の安全確認を済ませた報告が入った。


「よし!オールクリア!ポータルシェルターを組み上げたら進むぞ!!北東に1kmだ」


 ポータルの保護が終わり一条隊長が進み始めると、徐々に普段の隊列が組まれていく。

 だが、普段通りの隊列と異なり、今回のミッションでは普段通りではない点がある。

 一つは武器の違いだ。目の前を歩く里美の背中に、いつもの長い狙撃銃がない。

 175cmという里美の身長に負けないほどの存在感を誇り、彼女が愛用するMk22狙撃銃だが、今回の目標の一つである駆除には不向きと言わざるを得ない。そのため今回は普段セカンダリとして里美が持ち歩いている、MP7をメインの装備として使用している。榊原少尉も普段のM7ではなく、ショットガンをプライマリとして使う。

 あと一つの違いは、明確な駆除対象が存在する事。

 この星には明確な脅威となる生物が数種類確認されているが、その中で観測施設を破壊できるようなものは1種類しかいなかった。

 それを駆除して安全確保できると、明日もう一度修復する予定だが、我々が無理だと判断すると、この”サクラ157-e”という、現在日本国が独占的に利用できている場所を、放棄することになる。

 つまり、それなりの金額と労力を掛けた日本の拠点が、我々の判断次第で一つ失われるのだ。これはかなりの責任重大と言ってもいい。


 そんな我々の気負いを無視するかの如く、地球の昼より若干暗い空には月くらいの大きさの恒星と、空の5分の1はあろうかという大きさのサクラ157-bが輝いている。

 この景色を観光で見ることが出来たらどれほど良かっただろうか、と思わない訳に行かなかった。



ーーーーーーーーーーーー


当直:時間の制限や調査探索を行うために、2日で1回として扱われる。現地生態系の保護の為に、この2日間で別の星を探索することは無い。

はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ