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ポイント・ネモの星  作者: 都津 稜太郎
1.ポイント・ネモ
17/18

17.休息①


 巨大なフロートの上にあるヘリパッド、私はその上に立っている。背後には巨大な防波堤が迫る、海に面した場所だった。

 ポイント・ネモの上では固定翼の離発着が出来る場所は一か所に限られる。そこは全ての国家が共有で使用する物であり、余程の事情がない限りそれぞれの国の部隊は使うことが出来ない。正確に言えば、分単位で離発着を繰り返すそのネモ空港に、離発着を簡単にねじ込むことが出来ないのだ。

 よって交代などで休暇に入る隊員は、絶え間なく離発着する空港の反対側にあるヘリパッドから各国保有のヘリコプターで飛び立ち、航続範囲のどこかに停泊している船に乗り込み、長い航海の後に故郷の”土”を踏むことが出来る。


 船旅は3週間程度続く。勿論大荒れの日も関係なく一路日本の横須賀まで目指す訳で、元陸の隊員なんかは、航海中寝ながら仕事するのも見た事があった。自分も別に慣れているわけではないのだが、船に強かったようで今の所助かっている。


「幸盛ぃ~……」

「里美か、辛そうだな。どうした?」


 船に弱い里美が無言で差し出す書類には、細かい文字がびっしりと並んでいる。

 なんとか星系の地質調査についての標本採取手順について、なんとか星の大気組成調査結果の報告要領について…ウンタラカンタラ。

 どうやら次回当番時の調査について休暇前の今から送られてきているらしく、それに目を通して説明できるようにしておくのも副隊長の仕事である。資料が揺れない地面で見ても頭が痛くなりそうな内容であるが、それを自分に差し出してどうするのかと言いたいところだ。

 だが、彼女とは長い付き合いだ。言いたい事はは何となくわかる。


「これを代わりに読んで、要点まとめろと?」


 頭をしんどそうに縦に一度振り、更に酔ったのか慌てて止めるとサムズアップが帰って来た。いやだと言う隙も無い。


「うぅ…あと、帰港2日前のブリーフィングがそれになるから…それまでに…」

「はぁ!?あと4日しか無いじゃねぇか!?」

「…頼んだ」

「帰ったら、飯奢れよ」


 里美は特に言い返すことも無く「うぅ」と一言だけ置いて去っていく。その短い言葉が「うん」なのか、否定の「ううん」なのかが分からなかったが、こんな面倒を押し付けられるのだ。それ相応の対価は払ってもらわなければならない。



「おつかれさん!!」


 元気で上機嫌な里美に肩を叩かれた。勿論、渡された仕事は完璧にこなし、ブリーフィングも無事済ませてから日本に到着したので、そのことを言っているのは知っている。「ありがとうございます!本当に助かりました。は?」と圧を掛けると、ようやく「本当に助かりました。ありがとうございます」と腰を折った。

 (おか)に上がると直ぐに元気な里美が戻って来るのは、何回も一緒に航海を重ねたので十分知っている。だが、つい前日までの彼女の大人しさを知っていると、良く喋る元気な方が良いとも言えなかった。なにせうるさい。


「飯奢れよー」

「仕方ないな~」


 分隊の他の隊員に休暇の間の暫くの別れを告げて、里美と連れ立って歩き始めた先は最寄り駅。横須賀でお気に入りのとんかつ屋で里美に奢って貰うためだ。


 日本に帰って来て思うのが、日本人の魂は米で出来ているという事。

 ポイント・ネモでも一応は米が出る…が、それが少ないのだ。日本と地理的に遠い事から輸送コストがかかり、基本的には周囲の国家に金銭を払い食料を買っている。周囲にジャポニカ米を潤沢う荷物国家は無く、時たま人員輸送などで立ち寄る日本の船舶が米や日本ぽいものを置き土産に頼るしかないのだ。

 一応、行き帰りの艦内で日本食を食べる事が出来るのだが…日本の土地で日本食を食べるのが美味しいと言える。船に揺られているから?水が違うから?何故なのかは分からない。


 そんな環境を耐えた自分の目の前に豚カツ定食がある……

 ほぼ震える手と言っても過言ではない、宝石を手に持つような気持ちで味噌汁を手に取った。

 最初にひと口飲んだ味噌汁は口の中に安心感をもたらす塩気が染みる。次、豚カツにはソースをかけて少しのからしを付けて口に放り込む。そのまま大量の白米を口の中に詰め込んで……


「はぁ~~~~~うめぇ……」


 女性の前?関係ない。

 ひたすらに心の声が漏れる。それに目の前にいる里美もガッツポーズをしている程で、こちらを咎める様子もない。寧ろ、里美が目の前にある食事に目を輝かせて美味しそうに食べる姿は、こちらにも幸せが伝わって来る。


「美味しかった…ごちそうさまでした」


 白米のおかわりを2回もしてしまったが、全く持って後悔はしていない。

 どれほど体が白米を欲していたのか、自分でも甘く見積もっていたようだ。


「これからどうするの?」

「やる事ないしな~、一回家に帰って…その後、実家に帰省でもしようかな」

「それじゃあ、地元で会う事もあるかもね」

「かもな、その時に次派遣分の飯を奢てくれても良いぞ」

「は!?」

「どうせ次も航海で死んでるんだから、前もって肩代わり…」


 いや、良くない事を言った。

 里美の事だ、絶対に値段以上の仕事をさせてくる気がする。

 結局「いや、気にするな!またな!」と言って逃げるようにその場を離れた。



ーーーーーーーーーーーー

自家用車:宇宙作戦軍のうちポイント・ネモに派遣される者は、自家用車を持っていない。若しくは職場に置いていない事が多い、それは長期にわたる派遣期間の為に維持管理等が出来なくなることによる。その為十分な手当てと合わせて、使う場所も無い事から良くお金が溜まるという噂だ。


はじめまして。都津トツ 稜太郎リョウタロウと申します!


再訪の方々、また来てくださり感謝です!


今後とも拙著を、どうぞよろしくお願い致します。


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