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奔走編 廃教会②

 




「いちいち相手の出方を伺うな!これは戦術訓練の授業じゃないんだぞ!!」


 レオンは叫びながら、襲ってくる男の顔面に容赦のない飛び蹴りを喰らわせると、反動を利用してもう一人の後頭部に剣での打撃をお見舞いした。


「わ、わわわかってる!対人戦の本番は初めてなんだよ」


 カイルは槍を構えながら、レオンに背中を預けるようにお行儀のよい戦い方をした。


 男どもの持っている武器が、剣や斧が多く槍のカイルの方がリーチがあるため一定の有利があるが授業のように綺麗に体勢を意識しているのか動きは少しだけぎこちなさがあった。


「ぐおあ!」


 もうひとり、レオンの脇への打撲がヒットして3人目の男が沈む。


「臨機応変に行け!戦場ではこちらの出方など待つ敵はいない。飛び込め!飛び込んでから相手の動きを見てその後の動きを考えろ」


「すごいなレオン、親父と正反対のこと言ってる」


 レオンは傭兵経験のおかげか、荒っぽい戦い方が得意なようだ。

 太刀筋が荒々しく、足技や柄なども使って器用に敵を倒していく。


 対するカイルは学園の騎士科で習った基本スタイルを意識しているのか、ガラハッド騎士団仕込みの槍捌きは見事だが、綺麗さが抜けきれないいわゆるお上品な戦い方であった。


「……う、ぐぅぅぅ!」


「………っ!やった。」


 なんとか一人カイルが敵を倒しているうちに、レオンは5人を沈めた。

 もし殺すなというエルからの突入前に課せられた命令がなかったら、もっと早く沈められた自信もある。


「あいよ〜、お兄さんたち〜頭伏せな」


 背中でずっと呪文を唱えていたオズは、何かの魔法を紡いだのか杖で大掛かりな弧を描く。



「≪全てを爆ぜろ≫」



 オズが呪文を唱えた瞬間、奥でレオンの勢いに怯んで後退した男たちを中心に盛大な爆発がおきた。


「はい。仕事完了」


 命までは奪わない、だが爆発に巻き込まれた男どもは無惨にも全身を猛る炎で焼かれ、痛々しい姿でバタバタと倒れた。


「……ちくちくと剣で戦っているのが馬鹿馬鹿しくなるな」


 レオンは服の裾で汗を拭いながら、オズの魔法の威力を見て素直な感想を述べる。


「おまえさん方が呪文を唱える時間を作ってくれたからできることだぜ、剣術に誇りを持てよレオン。あんたの剣技は俺が知る剣士の中でも上の上だよ」


 やっぱりあんた教師より冒険者にならない?とオズは仕事の後の一服をしながら、片目を閉じて彼の技量を褒めた。


「………くそ」


「初戦にしては悪くない。逃げ腰にならなかっただけ及第点はやる。次に活かせ」


「教官みたいな言い方するなよレオン……」


 ノルマの3人を一人だけクリアできなかったカイルは、悔しそうに槍を握りながらつぶやいた。

 その彼にレオンは拳を突き出す。


「……まあ、頑張りはみとめてやる」


「……次はもっと上手くやってやるよ」


 カイルはレオンの拳に静かに拳を返すとお互いの労を静かに称え合った。










 その同時刻



「あった、この部屋だ!チッ鍵かかってんな……お姉ちゃん、蹴破れる?」


「や、やってみます!」


 ミルリーゼは目的の部屋にたどり着くと、鍵の有無をチェックしてすぐに後ろから走ってきたセラフィナに頼んだ。


「ちょっとちょっとミルリーゼ!セラフィナに無茶させないでよ!ガラスを割って外から鍵を開ければいいでしょ!」


「それもそうか。あったまいいなーエル。せいやっ」


 ミルリーゼはエルの提案を瞬時に受け入れると、即座にそばにあった木材を拾い上げて扉のガラス部分を勢いよく叩き、躊躇いもなくガラスを割った。


 割れたガラスから手を突っ込んで、鍵の施錠を人力で解除する。



「よし、開いた。チビたち無事か?ミルリーゼちゃんが助けに来たぞ!」


「………おねえちゃん!」


 ミルリーゼは勢いよく部屋の中に飛び込むと、部屋の中央に集められていた子供たちに駆け寄った。


 数人いる子供たちは、入ってきたミルリーゼをみてそれまでの沈んでいた顔を綻ばせて、中には涙を浮かべる者もいた。


「大丈夫かいきみたち、ここにいるので全員か?」


「うん、おねえちゃんありがとう」


「わたし、こわかった」


「ママに会いたい」


「おなかへった」


 思い思いに恐怖を訴える子供達の頭を撫でながら、ミルリーゼは彼らが拘束されている縄を解いてやろうと必死なようだ。


 その小さな背中を見ながらエルはロッドが話していた、


『悪い人ではない』


 という言葉を思い出す。

 彼の言葉に嘘はない。今ならなんとなく素直にそう思えた。



 しかし、その次の瞬間、

 突然物陰から物音がして、暗闇から伸びた手がミルリーゼの三つ編みを乱暴に掴んだ。


「ミルリーゼ・ブラン……ようやく捕まえた。こないだは逃したがもう逃さねえぞ」


 男が一人、暗闇の中に潜んでいたのだ。

 男はミルリーゼの三つ編みを無理に引っ張り小柄な体を浮かせると彼女の喉元にナイフを当てた。


「汚い手で触るな!離せ!僕の髪の毛を引っ張るのは法律で禁止されてるんだぞ!!」


「法律なんか知るか、おいそこの女。少しでも動いたらミルリーゼを殺す」


 男の怒りを孕んだ目はエルに向けられた。

 セラフィナがさりげなくエルの前に立ち、彼女を庇おうとするが男の位置は遠く、不意打ちで殴り飛ばすには明らかに無理な距離である。



「ふん、ずいぶん派手にやられたがそこの女二人売り払えばまぁお釣りが来るだろう。ミルリーゼ、おまえは調子に乗りすぎた。ソフィア様のご友人だかなんだか知らんがおまえには消えてもらおう」




ミルリーゼ・ブランの三つ編みを引っ張るのは法律違反らしい

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