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奔走編【リリィ視点③】

 






拝啓、だいすきなソフィ

あたしもう無理だよ。頑張れない。





 あたしはあまりに王妃教育がうまく行かなくて、ついに学園にも行かせてもらえなくなったの。

 王宮に住み込みで、朝から晩まで教師とマンツーマン。


 スカー夫人には鞭で叩かれて、王妃様はあたしを見るたびに嫌味を言ってくるの。


 最初はね褒めてくれてると思ったのよ。


「リリエッタ嬢がいると、王宮が催事のようだ」


 そう言って王妃様は笑ってくれたから喜んだ。

 でもこれ、単にうるさいって意味なんだって。


 褒められたって思ってからの真意判明だから、ショックも大きかったの。





 あの病弱な男の子(アッシュ殿下だっけ?)も見かけなくなっちゃった。

 体調悪いのかな、心配だけど王宮にはいないみたいで時間のある時に探すけど見つからない。

 噂では庭園の先の離宮に住んでるって聞くけど、勝手に入るのはちょっと怖い……。


 まぁ、アルフォンス様も関わるなって言ってたしあんまり深入りしないほうがいいのかもね。


 そのアルフォンス様は最近忙しいのかお疲れみたいなの、お見かけして声をかけても生返事。


 最近は、あたしの顔をみてひきつり笑いをしてるような気もする。




「アルフォンスも色々準備があるから疲れているんだよ、ほら、きみたちの婚約披露パーティーだって半年後に控えているじゃないか」


 王宮でもちょいちょい見かけるヴィンス様は優しく慰めてくれるけど、あたしはアルフォンス様に優しくして欲しいの。


 婚約披露パーティーには国中の貴族が招かれてあたしたちの祝福をしてもらうんだもの、あたしはそれまでにマナーを完璧にしてどこから見ても立派な次期王妃にならないとだもん。


 でも、ちょっと冷たいアルフォンス様に心が折れてあたしは泣きたくなった。

 マリッジブルーは早すぎるよ。


 朝にマナー講師がいつまでも起きてこないあたしを呼びにきた時、ついに言っちゃった。



「おねがいします、ここにソフィを……ソフィア・オベロン伯爵令嬢を呼んでください」








「リリィ、私を呼んだって本当?」


 その日の午後、やっぱり地味な服を着たソフィが王宮に来たの。


「うん、あたしさみしくてどうしてもソフィがいないとやっていけないの!ねぇソフィあたしと王宮に一緒にいて!」


「………当たり前じゃん、リリィ頑張ったね。えらいよ」


 ソフィはそういってあたしを抱きしめてくれたの。

 優しくて、あたたかくて。

 地味だなんて思ってごめんねソフィ。

 やっぱりあなたがいちばん大切なお友達。



「ソフィ、大好きだよ!」


「………私を王宮に招いてくれてありがとう。リリィ」



 庭園で抱き合うあたしたち、ふと視線を感じて王宮の上の窓を見たら王妃様が冷たい顔をしてあたしたちを見下ろしてたけどソフィがいるなら大丈夫。


 あたし、まだ頑張れるよ!


 ソフィってちょっと力が強いのか、抱きしめてくれた腕がすこしだけ痛かったのは内緒にしよう。


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