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奔走編 信仰都市④

 




「くそ、見失った」


「すばしこいやつね……」


 信仰都市の聖女の像がある広場から少し離れた通りにて、レオンの跡を追いかけていた人物をエルとカイルは追いかけていたが、人の波に飲まれて謎の影はあっという間にいなくなった。


「役に立てなくて悪い」


「いいのよ、私も足が遅かったから……あなたの足を引っ張ってしまったわ」


 走ったことで体力が減ったのかエルはぜいぜいと肩で息をしている。

 同じ距離を同速力で走ったカイルはまだ体力の余裕があるのか平気そうだ。


 男女の性差があるとはいえ、わかりやすい体力差にエルはこっそり悔しさを覚えた。



「レオンが戻ってくるまでどこかに身を潜めていた方が良いかしら」


「それならセラフィナが言ってた宿屋に行くか?宿に話をつけておくって言ってたし休めるかもしれないぜ」


「それもアリね。レオンも私たちがいなかったら宿にいるって察してくれると思うし」


 エルはその場で伸びをすると、深追いは諦めて、セラフィナと合流の約束がある今宵の宿へ戻ることを決めた。


「レオン……大丈夫かしら、もう少し私たちを頼ってくれても良いのに」


「オレじゃ力不足なんだろう、あの兄さん相当な実戦経験者だろ」


 共闘経験から、カイルはレオンにそう評価した。

 彼の剣技は授業でカイルが習ったものより、荒く鋭い。

 決してお行儀がよいものではないか、その実力はカイルが過去に見た剣士の中でも指折りのものだ。


「レオンは、学園に入る前は傭兵だったと聞いたことがあるわ」


「すごいな。オレももっと戦いたい……強くなりたい!」


「カイルは騎士科だったけど、剣技はあまり好きじゃないの?あなたが剣を振るっているところ見た記憶がないけど」


「オレは授業では剣を使ってたけど、オレの実家の騎士団では槍を学んでいたんだ。流石に戦場でもないところで槍を持ち歩けないからオレは今は棒術を使ってるけどな」


 魔狼戦で木の棒を持っていたカイルの姿を思い出し、エルは納得した。


「使えないってわけじゃないのね」


「……使えないわけじゃない。剣技の試験ではこれでも万年二位だったんだ。一位はマックス。悔しいけどあいつに勝てたことはない」


「へぇ能無しの腰巾着だと思ってたけど、あいつそれなりにやるのね」


 アルフォンスの取り巻きだった大柄の男の顔が脳裏に浮かぶ。

 昔から強いものに媚び、弱いものに偉ぶる典型的ないけすかない男だ。


「槍が使えたら勝てた。王国騎士団は剣を主に使うから学園の実践授業もほとんどが剣なんだ。あれ、絶対王国騎士の家の生徒が有利になるようにするためだぜ」


「剣だけに固執するのは良くないわよね。あの学園いろいろとおかしいわよ」


 かつて所属していた場所の悪口に花が咲いた。

 お互い所属していた頃から不満が溜まっていたせいかとても話が合う。




「………セラフィナかしら?何か魔力を感じるのよね」


 ふと会話の途中にエルの背中に生暖かいものが流れた。近くに大きな魔力がある。そんな直感がした。


「魔力探知だっけ?こないだセラフィナに教えてもらっていたやつ、やってみたらどうだ?」


「そうね、コツを掴みきれてないから練習してみようかしら」


 カイルの提案に乗り目を閉じる。

 この広場に漂う魔力の元を探る。





「………ダメだよお嬢様、これくらい近寄ってようやく気づくなんて鈍すぎる」


 ぷわっと鼻腔を甘い嫌な煙がくすぐった。


 見知らぬ声がして、慌てて声の方を見ると二人が座っていた石畳の階段の上から見知らぬローブ姿の男が一人、大杖を抱えて座っている。


「お迎えにあがりましたエスメラルダお嬢様、共に実家に帰りましょうか」


 男は笑った。

 周りを漂う雰囲気が、明確な害意をこちらに纏っていた。


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