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奔走編【リリィ視点①】





 悪女は楽園を追放されて、お姫様は王子様と幸せにお城で暮らしました。


 御伽話はそこで終わりだけど、現実はそうじゃない。


 あたしを突き落としたってことになってるエスメラルダ様は逃げたらしい。

 本当はあたしが足を滑らせて落ちたんだけど、エスメラルダ様が後ろにいたから結果的に突き落としたってことになっちゃった。

 結果オーライだよね。とても痛かったけど、その分エスメラルダ様の婚約破棄と学園からの追放というあたしの願いは叶えられたの。



 ところで、せっかく次期婚約者候補ということで誰にも邪魔されずに堂々とイチャつくことができるようになったのに、次のお邪魔虫は現れたの。


 それは王妃のカトリーナ様!

 アルフォンス様は優しいけどアルフォンス様のお母様のカトリーナ王妃はめちゃ怖い。

 あたしの顔を見るたびに睨みつけてくるの!



「もうサイッテー!こないだもお城に行った時アルフォンス様と中庭で楽しくデートしてたのに、王妃様が嫌味言ってくるし!明日から王城に泊まり込んでマナーの勉強しろとか言ってくるのよ!なんで学校でも勉強してるのに、放課後も勉強なのよ!ありえないと思わないソフィ!」


「……うん、そうだね」


 あたしは久しぶりにソフィに会えたから嬉しくて、学園のカフェテリアでおしゃべりをした。

 あたしはカフェテリアにきたら毎日大好きなケーキを頼んで、ソフィはあんまり甘いものが好きじゃないのかいつも紅茶かコーヒーを飲んでる。


 しっかし、こないだのエスメラルダ様の断罪会は楽しかった。あのお高く止まった顔が歪むところは今思い出しても最高!

 あの夜はアルフォンス様と初めて一緒に夜を過ごせたし、二人で眺めた星空とっても輝いていて素敵だったな。

 まぁ、アルフォンス様のお友達もいたからそれ以上にロマンティックなことは起きないけどね。


「ソフィはどうしてしばらく学校を休んでいたの?」


「少し私事が忙しかっただけ、また今日から通うよ」


「そうなんだ。よくわからないけど、頑張ってね」


 ソフィがいないと、あたし教室で話す人いないんだよね。


 クラリスたちは別に仲良しだと思わない。

 エスメラルダ様がいた時は一緒になって陰口を言い合えたから楽しかったけどエスメラルダ様が消えたら、クラリスもベスもただの元いじめっ子だし。


「クラリス様に過去にされたこと、アルフォンス様に密告しちゃおうかな」


 本人の姿が見えたので、聞こえるようにわざと大きな声で言ってみた。

 案の定、クラリスは慌ててカフェテリアの外へ。

 あぁ面白い。流石のあたしも数ヶ月前のことなんておぼえてないっつーの(笑)



「……リリィ、王城に行って困ったことがあったら私を呼んで。いつでも駆けつけるよ」


「本当〜?でも、しばらくは一人で頑張ってみるよ」


「そうなんだ、でも覚えておいてね。私はリリィの味方だから」


 久しぶりにあうソフィ、なんだかお疲れみたいだけどそれでもあたしに尽くしてくれるなんてやっぱりいい子。


 でもね、ソフィって華がないというか少し地味だから王城につれていったらカトリーナ様にさらに嫌味を言われそうでちょっと連れて行きづらい。

 本当にあたしのために尽くしてくれるとてもいい子なんだけどね。



「あ、そろそろ帰らなきゃ。それじゃソフィまたね!」


 明日からの王城に行く準備をするから今日は早く帰るつもりだったのを忘れてた。

 あたしは時計を見てそれに気づき、あわてて帰ることにした。


「リリィ、忙しすぎだよ」


「うふふ、アルフォンス様に愛される次期王妃は忙しいの。ソフィとは違うから♡なんちゃって」


 そう言って、ソフィをカフェテリアに残してあたしは帰宅の路についた。






 次の日学校に行ったら、あの後カフェテリアにいた生徒が一人、誰かに襲われて大怪我をしたんだって。


 怪我をしたのがソフィじゃなくてよかったけど怖いなあ……噂を聞くと、連れ戻された屋敷から逃げて姿を隠してるエスメラルダ様がこの学園に逆恨みして襲撃したとかしないとか、よくわからないけど逃げ回ってるあの女、早く捕まればいいのにな。


 あたしは退屈な授業を聞き流しながらそう思った。



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