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饗宴編【開宴】第十話 閉幕(下)

 





「母上のわからず屋! この加虐性愛者!!」


「待てアルフォンス! 母に向かってなんだその口の利き方は!!」


 王族控え室の扉が勢いよく開き、逃げ腰の王太子が飛び出してくる。

 殆ど前を見ずに駆け出したのでちょうど廊下を歩いていたロデリッツ夫人とぶつかりそうなり、隣にいたデュラン公によって咄嗟に庇われた。


「叔父上!? 邪魔なんですよ! この木偶の坊!!」


「……アルフォンス殿下、ずいぶんと渋い言葉をご存知ですね」


「うるさいな! また母上に媚に来たのですか! 少しは仕事をなさってください!!」


「………ははは」


 立ち去る王太子の捨て台詞に、慣れた様子でデュラン公は苦笑してその一連の醜態を見たロデリッツ夫人は不快そうに眉を顰めた。

 彼女はマナーに厳しいので、とても褒められた言動ではないアルフォンスに対して思うことが多いのだろう。




「………エレノアか」


 そのまま二人が王族の控え室に顔を出すと、部屋の真ん中には苛立った様子の王妃がいた。

 傍らのソファには行儀よく座り覗き窓からホールを眺めている夫人の息子の姿もある。


「ご機嫌よう王妃様、息子を探しておりましたの。良かった此方にいたのね」


「母上、人酔いをしたので王妃に休ませていただいておりました」


 エドワルドの言葉に、「そういうことにしたのか」とパーティー中のエドワルドの一連の騒動を断片的に知るデュラン公が意味ありげな視線を寄せる。

 だが騒動の原因である王妃の手前、余計な口は出さない様子だ。


「まあエドワルド……久しぶりのパーティーだったから疲れたのでしょう。そろそろ屋敷に帰りましょうか」


「はい」


「二人をこの後の晩餐に招こうかと思っていたが、体調が悪いのならやむなしか」


「申し訳ございません王妃様。ロデリッツ家は立場の手前、晩餐会の出席は他の貴族の心象もよろしくないでしょう。またの機会にお願い致します」


 帰宅を決めた母子に対し、王妃は心底残念そうに呟いた。

 そんな王妃の言葉に、エレノアは愛想笑いで答える。


「良い。パーティー中にこうして顔を見せに来ただけでもおまえたちを評価する。……代わりにガラハッド家が連れてきた娘でも招くか。ロード、あの白いドレスの娘を呼んでこい」


「……王妃、その件なのですが」


 王妃はセラフィナを相当気に入ったらしい。

 彼女を連れてくるようにと隣に控える筆頭公に命じたが、デュラン公は彼女の状況を知っているので冷や汗をかいた。


「セラフィナ嬢の参加も少し難しい……かと」


「聖女様はリリエッタさんにドレスを汚されてお帰りになられたようですわ」


 状況をどう伝えようか迷い言葉を濁すロードフリードの傍でエレノアが躊躇いなく真実を暴露した。

 彼女もリリエッタのワイン事件を、現場となったホールから見ていたのだろう。


「なんだと!?」


 エレノアの言葉に王妃は語気を荒げる。

 デュラン公はリリエッタの件はオブラートに包んでできるだけツノが立たないように報告しようとしていたので、彼の計画を知らずに、ストレートに真実を伝えてしまった公爵夫人にやんわりと抗議を伝えようとした。

 だが、デュラン公はそんな抗議先の彼女の目を見て固まった。


「デュラン公閣下、わたくしは真実を述べているだけです。臣下として王妃様に嘘偽りは申せませんもの。聖女様の白いドレスが赤いワインに染められたのを閣下もご存知でしょう?」


 ロードフリードの抗議の視線に、エレノアは動じることなく冷ややかな言葉を返した。

 そのエレノア・ロデリッツの碧き目は、それまでの誇り高き忠義の家の貴族夫人の立ち振る舞いに加えて明らかな怒りと敵意があった。

 それもその筈だ。ロデリッツ夫人にとってリリエッタ・フローレンスは大切な娘を陥れ、母親から娘を奪った敵なのだ。

 ましてや夫人は聖女を祀る聖ルチーア教の熱心な信者、清らかな聖女のようなセラフィナを辱めたリリエッタを庇う理由などありはしない。

 それは、至極当然のことなのだ。


「酷いことをなさりますね」


 エドワルドは、わざとらしいくらいに同情的な声をあげ母親に同調した。そんな彼の目もエレノアと同じ温度だ。

 兄として妹の誇りを穢したリリエッタを絶対に許せないのだろう。

 エドワルドもまた、初対面のリリエッタに名乗ることを拒否したレベルで彼女を嫌っているのだ。 


 だが、事件の後にその本人に会ったエドワルドは知っている。

 白いドレスを汚されたセラフィナがデュラン公の気回しで、彼の妻のドレスを贈られて今は青いドレスに着替えていることを。

 そして灰の王子救済の為にまだ城の中にいて、現在テラスにて奮闘してくれているということを。


 そもそもエドワルドが此処にいるのは人酔いなどではなく、王妃によるアッシュ救済の妨害を防ぐ為なのだ。

 なのでエドワルドは真実を隠した。

 あの清廉なる聖女に、くだらない見栄と薄暗い陰謀が渦巻く王宮の晩餐会にまで出席してもらう道理などない。


「………」


 話を聞いた王妃は扇子を開くと、無言で立ち尽くした。その表情からは明らかに怒りが滲ませている。


「王妃、ワインの件は故意ではなく転倒による事故です!」


「転ぶような愚かな歩行しかできぬからそうなるのだ!」


「それはそう……なのですが……」


「ロード! おまえは何故いちいちあの娘の肩を持つ! やましいことでもあるのか!?」


「とんでもございません! 王家がお選びになった次期王妃殿下を支えるのが筆頭公の役目で……」


「私はあんな愚かな娘を次期王妃などと認めておらん!!!」


 王妃とデュラン公が何やら口論を始めたので、エドワルドは座っていたソファから立ち上がるとそのまま二人の喧嘩を眺めている母のそばへ近寄った。


「僕たちには関係ない話なので帰りましょう母上」


「えぇそうね。ロデリッツには関係のない話だわ」


「疲れました」


「最後まで残っていてえらいわエドワルド……王妃様、わたくしたちはこの辺で失礼します」


 デュラン公の髪に掴みかかり、今にも手が出そうなカトリーナ王妃にエレノアは簡素な別れの挨拶を述べると、息子を連れてそそくさと出て行った。


「………」


 エドワルドも何も言わずに去り際に情けない顔の筆頭公を一瞥だけして、控え室を後にした。


「エレノア……! エドワルド……! あの娘のせいで散々だ。ロード、この責任どう取るつもりだ! おまえがきちんと愚かな娘を見張っていなかったからこうなった。今日のおまえは執務放棄も甚だしいぞ! 聞いた話ではあの愚かな娘は席を勝手に離れてスイーツを豚のように食い漁っていたそうだな!!」


「(それは俺のせいなのか!? だいたい一人で全員のフォローは無理だって……エドワルドに補佐を頼むべきだったか……いやあいつはいうことを絶対聞かないからヴィンス頼むべきか……しかし、久しぶりに見たヴィンスのダンスは見事だった。さすが俺の息子、いやあの優秀さは王族の血だな。さすがステラーシャの血を引く息子……)」


「何をニヤニヤ笑っているんだロード。おまえ、久しぶりに私の寵愛を受けたいのか? 晩餐会もどうせ媚び諂ったシケた面子しかいないだろう、私としてはお前を可愛がっている方が有意義に過ごせそうだな」


「えっ……いでででででで!」


 怒りを滲ませたまま王妃は残酷に口の端を吊り上げて嗤うと、掴んだままのデュラン公の髪を思い切り引っ張った。


「溜まった鬱憤を晴らすのにちょうど良い。アルフォンスはおまえ以上に堪え性がなかったから物足りなかった」


「(義姉上!? いくら美男子とはいえ息子にまで手をあげたのか!?)」


 先ほど部屋に来た時のアルフォンスの言動を思い出したデュラン公は唖然とする。いくら王妃が残虐な加虐趣味の持ち主でも、血を分けた息子だけは決して手を出すことのない聖域だと信じていたのだ。


「では早速私の部屋に行くぞ。ついて来いロード」


 カトリーナは一方的そう決めると、強引にデュラン公を私室へ誘った。その、狂気と怒りが入り組んだ王妃の容貌を見たデュラン公の端正な顔が真っ青になる。


「それとも地下の特別室が良いのかロード。使い時を待っている特製の器具があるぞ」


「………いや……えっと……」


 王妃は心から愉しそうに笑うと、怯えた顔のデュラン公の手を掴んで部屋を出ようとする。

 デュラン公はまさかの展開に脳が追いつけずに固まったままだったが、我に帰って助けを求めて壁沿いに並ぶ従者に視線を向けても、訓練された王妃付きの従者たちは誰も口を閉ざして微動だにしなかった。

 彼らは二人の秘密を厳守するが、絶対に突然の暴虐に晒されようとしている若い筆頭公を助けたりはしないだろう。

 そんな事をしたら自分たちが王妃の不興を買い、猛烈な怒りに晒されるのがわかりきっているからだ。 


「………」


 デュラン公はあまりの踏んだり蹴ったり具合に心の中で泣いた。

 王妃は今とんでもなく怒っているので、今宵の彼女の寵愛はとんでもなく激しくなるだろう。

 五体満足に帰還は難しいかもしれない、そう考えたら気の弱いデュラン公は腰が抜けそうなくらいに背筋が震え、戦慄した。




「あの、……父上」


 そんな残酷で険悪なムードが漂う控え部屋の扉が丁寧なノックとともに開き、やって来た新たな訪問者が控えめに顔を覗かせる。


「ヴィンセントか」


「王妃様、お取り込み中に申し訳ございません。父を探しにきました」


 やってきたのはデュラン公の息子のヴィンセントであった。

 美しいものを痛ぶることに極上の癒しと快楽を感じる加虐趣味の王妃の前に、銀の髪の美しき貴公子が現れたのである。

彼の父親のロードフリードはそれまでとは違った焦りの色を盛大に浮かべた。


「ヴィンス! 父様はまだ王宮で仕事があるからひとりで帰りなさい!」


「えっ……はい。わかりました」


「…………いや、良い。ロード、かわいい息子が迎えにきたんだから帰ってやれ」


 何の気まぐれかつい先程、寵愛ごうもん予告をしていたカトリーナがやってきたヴィンセントに穏やかな微笑みを向け、あっさりと手のひらを返した。


「……?」


「ヴィンセント、先ほどの聖女とのダンス見事であったぞ。素晴らしいダンスを披露してくれたおまえに免じてデュラン公の帰宅を許そう。と言うわけでロード、今夜は息子と家でのんびり過ごせ……おまえからも先ほどのダンスを褒めてやれ」


「ありがとうございます王妃様」


 カトリーナは再度扇子を開くと、甥である銀の貴公子に慈悲深い眼差しを向けた。

 状況がわからないヴィンセントは不思議そうな目をしているが丁寧に王妃に礼を良い、綺麗な角度で頭を下げる。


「(ヴィンス……俺の天使……愛しの我が息子……ありがとう……)」


「父上、では王妃様のお言葉に甘えて一緒に帰りましょう」


「そうだな……では義姉上、これにて」


「ああ。別におまえでなくとも特別室に招くべき者は他にもいるからな」


「………ヒッ」


「……?」


 さらっと聞こえた王妃の言葉にロードフリードは再び顔を真っ青にしたが、聞こえないふりをして足を早めた。

 おそらくリリエッタのことを言っているような気がしたが、彼女は今日はもう王宮の自室に戻らせているので無事だと信じるしかなかった。


「では失礼いたしします」


 何も知らない息子の行儀の良い言葉だけが、哀れなロードフリードの心の清涼剤となった。




 ─────────………




【エル視点】




「さて帰宅帰宅、こんな所もう用はないわ。さっさと帰りましょ」



 エルは足早に中庭をかけていた。エルの最初で最後のメイド業もつつがなく終了である。

 パーティーの後半は散々仕事をサボりまくってしまったが、前半は比較的真面目に働いたし、臨時雇いのメイドとして調理場勤務に多大に貢献した自覚はあった。

 もう二度と会うことのないだろう同僚たちは、最後まで気さくで優しかった。


「公爵令息さまに強引に誘われてびっくりして手が出てしまった。おそろしくなってずっと隠れていた」と、申し訳なさそうな顔を浮かべて調理場に顔を出したエルに対し同僚たちは皆、同情的だった。

 別に恐ろしくはなかったが誘われたのも手が出たのも真実だ。嘘はついていないし、一般的な平民のメイドなら高圧的で体格のいい貴族に強引なことをされたら怯えてしまうのが普通の反応だろう。

 その証拠に誰もエルを疑ってなどいなかった。

 前科があるのか「……もしかしてクレイモア公子さま?」なんてそっと耳打ちするメイドもいた。


「(あえてぼかして同じ公爵令息のヴィンセントにも濡れ衣着せてやろうかと思ったけどよほどマクシミリアンに悪行が多いのね。誰もヴィンセントを疑いやしないわ。あんなキザで嫌味ったらしい軽薄な軟派男なのに人望だけはそれなりにあるのね)」


 エルはヴィンセントも嫌いであった。婚約者であった王太子アルフォンスの一番の腰巾着の男だ。

 いつも自分の意見など言いやしないで従兄弟のアルフォンスの顔色ばかりを伺っている気の弱い軟派男の癖に、時折冷ややかな目でエルを見てくる気に食わない人物でもある。


「(二人とも同じ公爵家の令息としてお兄様の品性を見習いなさいよ。ちょっと無表情で何を考えているか分からないところもあるけど)」


 ふと同じ公爵令息の身分で、エルの自慢の兄を思い出したのでエルは誇らしげに笑った。

 風の噂によるとパーティー嫌いの筈の兄は今日のパーティーに参加していたらしい。姿を見れなくて残念だった気もしたが、家族と縁を切っている以上、憧れの兄の姿を見て里心がつくのは避けたかった。

 エルの復讐は終わらない。アルフォンスのアホ面とリリエッタの自滅だけで終わらせるつもりはない。


「(まだあんなものじゃ駄目よ……地べたに頭をつかせて謝らせるの。あいつらはちょっと痛い目を見たって絶対に反省なんかしていないわ……こんな生ぬるい仕返しで終わらせるもんですか! 私は絶対に赦さない!)」




 エルは見事な彫刻の施された噴水の前までたどり着くと縁に腰を下ろして少し休むことにした。

 ずっと立ち仕事をしていたし、此処にたどり着くまで早歩きだったので足が少しだけ痛かったのだ。

 周囲には誰もいないので、ずっとかけていた眼鏡を外す。

 噴水の水面を覗き込むと月明かりに照らされる翠玉の瞳がとても綺麗に映っていた。


「(オズとリゼが城の近くで待機しているはずだからさっさと合流しましょう……裏道を使ってガラハッド家に戻るのよね。セラフィナたちは大丈夫かしら……彼女なら絶対に私の期待に応えてくれるって信じているからアッシュ殿下の件は心配はしてないけど)」


 エルは背後に聳え立つ王宮を見返した。

 パーティーも終わりに近づき、宴の終わりの寂しげなムードがどことなく中庭にも漂っていた。

 中庭を散策している貴族の数も遠くにちらほら見える程度で、城門の方から聞こえる帰宅の途につく馬車の音が無数に中庭まで届いていた。


「………」


 もう此処にエルが来ることはないだろうし、王都さえしばらくは来ないだろう。

 王都にいる連中への復讐心は持ちつつも、エルはどこか此処は自分の居場所ではないことをうすうすと感じているのだ。


「(カイルに会ったらベティの先生の件、本格的に進めてもらいましょう。お誘いに甘えて、辺境でおだやかに暮らしましょうか。セラフィナも辺境にいてくれるって話しているし、リゼだって辺境のお店に戻るのでしょう……レオンは側にいてくれるかしら)」


 ガラハッドのタウンハウスに置いてきた恩師の青年の顔を思い浮かべる。すべて終わったら彼の想いに答えたかった。何のしがらみのない穏やかな辺境の街で二人で暮らすのも悪くない。

 復讐なんて忘れて優しい人たちに囲まれて幸せになれるなら、それはそれも良いのかもしれない。


「(私は復讐したいのか忘れたいのかブレブレすぎるわ……いろいろあったから疲れているのかもしれないわね。今日はゆっくり休んで明日レオンに相談してみようかしら、一人で抱え込んでもロクなことにならないもの)」


 エルは短い休憩を終えると、腰を上げた。

 城門は素知らぬ顔で出て行くつもりだ。門を潜ったら最後、二度と此処には来ることはない。

 王宮はエルには嫌な記憶が多い場所なので、来なくて済むのなら二度と此処には来たくはない。




 エルが歩き始めるとふと中庭のレンガ道の進行方向に、エルの歩みを塞ぐように一人の令嬢が立っていることに気づいた。 

 そこにいたのは、地味な装飾の黒いドレスに身を包んだ背の高い令嬢だ。


「………」 


 エルは気づかないふりをして先に進もうとしたが、すれ違い様に腕をいきなり掴まれた。

 力こそ先ほどのマクシミリアンよりは弱かったが、令嬢の放つ圧はマクシミリアンなどの比ではなかった。


「………無視ですか? お久しぶりにお会いしたのに」


 聞き覚えのある腹が立つ声がして、エルは思わず舌打ちしそうになる。


「……………どうも」


「ふふっ、ご無沙汰しています。こんばんは良い夜ですね」


 エルはこちらを煽り見る目を睨みつけた。

 夜の中庭で温度の無い紫紺と翠玉の瞳が静かに交差して、バチっと火花が散ったような気がした。

 エルは外したままの眼鏡の存在を思い出す。他人のふりをするには、エルの瞳の色はいささか特徴的すぎるのだ。


「………何の用かしらソフィア・オベロン」


「私の名前、覚えていてくださったんですね」


 エルの言葉にソフィアは微笑んだ。

 気持ち悪いくらいに目元を綻ばせて、両手を合わせて小首を傾げる。

 その挙動のひとつひとつが物凄くわざとらしくて、エルには煽られている気がしてやまなかった。


「お元気そうで何よりです。エメラルドのお姫様って案外しぶといんですね、……雑草みたい」


 抑制のない声で囁いたソフィアは静かに対峙する。エルは後退りをしようとするが、ソフィアの纏う異様な圧によって足がうまく動かなかった。 



「久しぶりに会えたんです、少しお話ししませんか? エスメラルダ・ロデリッツ様」



 エスメラルダが死んだあの夜と同じ月夜に、

 エスメラルダを殺した黒幕は静かに佇みこちらを見据えた。



「(そう簡単に宴の幕は降りないってことね……)」



 エルは内心そう毒づきながらも、逃げ腰を改めて向き合った。


 在りし日の翠玉の公爵令嬢は、

 自分を陥れた黒幕から、


 決して目を逸らしたりなどしなかった。


延長戦突入!

エル様 VS ソフィちゃん。 


両者、負けられない戦いが始まる──────‼︎



エル様は冤罪には冤罪でやり返したい所存です。ハンムラビ法典を支持してます。あと、王太子グループでアルフォンスは勿論、マックスもヴィンスも嫌ってます。

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