6 vsホブゴブリン
それから月日が流れた。
俺達配下モンスターはダンジョンの外に出れないけれど、おそらく近くにゴブリンの集落があると思う。毎日毎日ゴブリンがやってきて、そのたびに俺様達が倒しているのだが、数が一向に減らない。数が苦手なゴブ後輩のカウントなのだが、たぶん1000体以上は倒したと思う。多いときは8体もの集団で侵入してきたこともあった。そろそろ俺様はゴブリンすれーやー(小鬼抹殺者)を名乗ってもよいのではないだろうか。
そんな俺たちの前に今日は毛色の違う強敵が現れた。
強靭な肉体と強者の自信を持ち合わせた「ホブゴブリン」だ。
「がんばるのじゃ!」
「がんばってるよ!!」
今まで数々の強敵を倒してきたゴブ後輩の薄汚れたこん棒だが、強靭な皮膚に阻まれてあまり効果がない。仕方がないので、どうせ当たらない石はどっかに放りなげて首を絞めている。絞められるのが苦しいのか、すごく暴れるから大変だ。
「そなたもそのホブゴブリンのよう上位種に進化できる頃合いじゃが、なにぶんでぇーぴぃの収支が難しぅての。」
「ごぶ」
「収支といえば、この部屋を広げるか、新たな部屋を造るか、はたまた配下モンスターを増やすか、考え物じゃ」
「ごぶ」
「やはり侵入者がゴブリンや小動物ばかりじゃと、収入が少ないのじゃ。」
「ごぶ」
「かと言って、冒険者など来おったら、今のそなた達など容易に略されてしまうのぉ。」
「ごぶ。。」
俺が必死にホブゴブリンの首を絞めてるのに、美少女ダンジョンコアとゴブ後輩はのほほんと雑談をしている。このダンジョンにはじめてきたホブゴブリンという強敵相手に危機感が足りないのでは無かろうか。もう少し応援するとか、加勢するという意味での足を引っ張るとかあるだろう。
「かんばるのじゃ。」
「かんばってるよ!!」
けっこう長い時間首を絞めてるし、ゴブ後輩が足を引っ張る(加勢する)のを躊躇するくらい暴れているのにまだおちない。俺の知っている脊椎動物とは頸動脈の位置が違うのだろうか。
「そのホブを吸うたなら、魂合成でリィズナブルにゴブ進化できるのじゃ。」
「何それ怖い。」
「ごぶ。」
不穏な単語に驚いて手が緩んだすきにホブゴブリンが逃げ出した。
配下モンスターはこの部屋から出れないので、逃げていく侵入者を追いかける事が出来ない。
「また逃げられたのじゃ。」
「いや、それよりゴブ合体って何さ?」
「ふむ。おぬしのような特殊召喚と違うて、一般召喚配下モンスターは魂と素材とダンジョンの魔力でできておる。」
「ごぶ」
「そして一般モンの強化は同種の魂を重ねていくのが効率的なのじゃ。」
「ごぶごぶ」
「ん?それなら、侵入者を倒せば仲間をたくさん増やせるんじゃないのか?」
「ごぶ。」
「倒しておらんじゃろ。」
「今まで倒したゴブリンの魂と素材はゴブ後輩の強化に使っていたってことか?」
「いや、だから倒しておらんじゃろ?」
「質問を質問で返すな」
「ごぶ?」
「だから、いままでほとんどのゴブリンに逃げられておるからの。なんも吸収できとらんのじゃ。」
なんてことだ、これまでの戦いの数々がシステム的に無意味なものだったなんて。それでも、命の奪い合いが俺たちの身と魂に積み重ねられていると信じたい。確かに俺たちは強くなっているはずだ、でなければ、でなければ。
「が、しかし、ゴブ後輩と同属の方々の命を奪うのは忍びないとは思わないか。」
「ごぶぅ。。」(気にするな)
「それに、ゴブだけじゃなく結構な数の命を奪ってきたはずだぞ?」
「ごぶ。」
「・・・食べたじゃろ。」
「ん?」
「ネズミもキノコもゴブリンも全部おぬしらが食べたから残っとらんわ。」
その日、俺たちは命を頂くことの重みをはじめて知ったのだった。
ここにあとがきを書きます