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海に沈んだ世界では-2

 そして僕は十八歳になり、あの日決めた通り科学者になった。

 この仕事は、誰もが誰もなりたがるわけではない仕事というもあり、

かなり若い方だと上司に言われた。

 なんとなく最年少かとも思っていたが、そういうわけではないらしかった。

 

 僕がなった『科学者』という職業は、昔でいうところの研究者に、政治家を混ぜ合わせたようなものである。

 「水中の『庶民』達が快適な生活を行うためにどのようなルールが必要か」という法の整備から

 「水中でホースなしの生活をするためには」という研究まで、僕ら科学者は日々思考を巡らせる。


 資格の為に学び始めた時は僕もこの仕事内容に「なぜ科学者がそこまで?」と疑問を抱いた。

 でも、一度この世界について学んでしまえばその答えは単純だった。

 つまるところ海が沈む前には「市民のために」

 と大袈裟に公約を掲げていた彼ら政治家は、逃げたんだ。


 市民、まぁ今でいう『庶民』のことを見捨てることを選んでまで、

 自分達はなんとしても地上での暮らしを続けたかった。

 だから『お偉いさん』の中には僕らに対する罪悪感を持つ人もいる。

 むしろだからこそ、切り捨てたはずが生き永らえた僕らのことを必要以上に嫌っているというわけだ。

 真実を知り、そして語り継ぐ人間というのは、彼らからしたら邪魔でしかないようだ。

 

 そんなこともあって、法を整えられる程の信頼は地上の人間にはなかった。

 だからこそ人類を生き残らせた科学者が、海の中での法を定める役割に就いたわけだ。


 その重要な役割を担う科学者は、「生活の発展のため」という名目で、ホースを外しての活動を許される。

 僕には正直「人類を救う為」とか「より良い生活を作り上げる為」なんて大それた目的はなかった。

 活動家。と名乗る過激派集団のように法を犯して仮初の自由を手に入れるか、

 法を犯さない代わりに責任と同体の自由を手にするか。

 この二つを天秤にかけた時、考えるまでもなく僕は後者を選んだ。

 

 そしてこの仕事に就くことでもう一つ、大きなメリットを挙げるとすれば、船を使えること。

 ロストテクノロジーとなりかけたそれは、ほとんどが不動のものとなっていて

 数少なく現存する動く個体も、殆どが科学者によって管理されていた。

 船に乗るための制約は当然あるが、人々の住む地域で乗らない。とかその程度のものだった。

 

 こうして自由を手に入れた僕は、どこにだって行ける気がしていた。

 科学者になってまずやったことは、ホースを外して海面に出ることだった。

 いつか海の外を初めて見た時とは違ってこの時は、太陽が反射した海面を綺麗だと思った。


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