プロローグ
目の前に並べられたカードを指差しながら、占い師の新名さんは笑顔で言った。
「2列目の左の方に紳士のカードがあって、4列目の真ん中にドレスを着た淑女のカードがあるから、新しい恋の予感がします」
「新しい恋!!!いま気になってる広告マンですかね?」
この間、食事に行った広告マンはデートの後からLINEの返信テンポが悪くて、私を気に入らなかったんだと落ち込んでいたものの、もしかしたら!と希望の火が灯る。
しかし、新名さんは真剣な眼差しで答える。
「うーん、このカードの感じだと、広告マンではなさそう、たぶん、まだ会ってない人ですねぇ」
ハイスペ広告マンとの恋に進展がない現実を突きつけられガッカリした私の気持ちをお構いなしに、新名さんは次々とカードをめくっていく。
「指輪のカードを見てみますね」
自分のことのように興味を持ってカードを開きながら、「あー、そういうことか、ふふふ」と楽しそうに新名さんは言った。
「次に出会うこの人と結婚しそうですよ」
「え、結婚!本当に?」
新名さんの顔を見つめると、良い占いをしたと満足そうな表情でニコニコして私を見ている。
俄かには信じがたい占い結果を喜ぶ気持ちと、40過ぎのバツイチ女が再婚なんて簡単じゃないのよと疑う気持ちをごちゃ混ぜに、前のめりで聞いた。
「その人とは、いつ出会えますか?」