20、シロエの闇
「始姐。それは号外新聞ですか?」
シロエがたまたま手にした新聞。
カモメ新聞が降りて来て珍しく手渡ししたのだ。
「そう。第8迷宮の討伐完了だって、迷宮以外に溢れた牛の魔物の処理で焼き肉パーティーをすると今日から明日もやるそうだ。さっきFAXで来た。『焼き肉パーティーをするから来ませんか』と」
ジェラルドに冒険者ギルドから来たFAX用紙を渡す。
「行きますか?」
シロエは鼻で笑い一言
「行かないよ。何で行かないと行けないんだ!紙だって只じゃないんだ。行って笑い者にされてトボトボと帰る。あの時の憎しみはまだまだ私の中に渦巻いているよ。」
僕はシロエにFAX用紙を返す
「それにその内来るだろうポーションの依頼の注文用紙が」
紙ヒコーキに作り方飛ばす。
「始姐。紅茶でも飲みますか?」
「もちろん!」
紙ヒコーキは窓から外に出てボワッと燃えて消えた。
テーブルに暖かい紅茶を持って来てマグカップに注ぐ。
「カップがあればいいのですが、探しても選りませんし、今度買いませんか?」
「買わないよ。マグカップで十分だよ。」
ズルズルと紅茶を啜る。
「始姐。緑茶じゃ無いので、クッキーもどうぞ」
「一番熱いお茶を啜るのがいいんだ。外ではやらないよ」
「当たり前です。」
(始姐は前に冒険者ギルドと喧嘩をしたことがある。もしかして僕が拾われる前で因縁の相手でもいたのかな?前とその前のギルドマスターに)
「ジェラルド。」
「はい。」
「冒険者ギルドのギルドマスターに恵まれなかったのだよ」
「!」
「顔に書いてあるぞ。因縁でも有るのかって」
「すいません」
「いつだったか忘れたけど、気がついたらそうなっていたジェラルドを拾う前。それを辞めてと言っても笑いより一層ひどくなる。いじめだな。今で言ういじめだ。そんなところに頭を下げたくなくって納品の回数を少しづつ減らして行った。
前任者のギルドマスターになってからほとんど納めなかったよ。今のギルドマスターになってから正式に書類で決めた。なかなか現れない私に対して怒ることじゃなくて謝って来たよ。」
「だから半年に1回のポーションの納品ですね」
「そう。例外は受け付けないポーションを作る薬草だって成長に時間がかかる。さーのさーで出来ない」
「解っているのでしょうか?」
「さー、どうでもいいよ。」
クッキーを口に入れて咀嚼する。
「それより今はスクロールを作る事に力を入れてる。中々出来ないんだこれが」
(始姐の目の色が変わった。濁った目からキラキラした目になった。)
「難しいですか?」
「ああ、難しくて楽しいよ」
それからシロエとジェラルドは紅茶とクッキーを肴にスクロールの話をする。普通紙は駄目でどんな紙か1からの研究だって行っていた。
その日はシチューにチーズを乗せて炙り食べた。
もちろんシロエはおかわりをした。
あんな小さい体の何処に入るのやら謎だ。
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