149、頑張れ
沖田が逃げ出すまで96時間(4日)…と言ったが、4日も持たず、3日で道場に逃げ出した。
そもそもジェラルドが歳三、斎藤、丞は、直ぐに覚えたので沖田も“ 出来て当然 ”と思ってる処があり、歳三の様にスパルタになる。
「逃げ出すの早いですね。そう思いませんか?始姐。」
紅茶を始姐が本を読んでいるテーブルの上に置く。
「逃げ出すの早かったね。明日からギアを上げていくの?」
紅茶に口をつけて始姐はのほほんと言う。
「いえ。明日は剣術の稽古ですので、それが終われば………フフフ嫌と言う程みっちりと覚えさせて上げますよ?」
「程々に」
一応始姐は、スパルタにならない様にブレーキをかけるが果たして何処まで通じるかは、分からない。
◇◇◇
それから半年がたった
頭から湯気を出して机に突っ伏している沖田。
「もう駄目~…」
「ご苦労様。でも覚えて来てるよ」
「古代語は何とかなっても共通語が分からない」
「共通語は古代語が簡単になっただけだから覚えやすいよ?きっと」
「そう言ってもさぁ~」
「大丈夫だって。今ジェラルドが、頑張ってる沖田の為にシュークリームを作って来てくれるって言ってたよ」
微笑みながら言う始姐。
「ジェラルドさんって何者なんですか?」
「何者って?」
「炊事、洗濯、掃除も家の事全て出来て非の打ち所もないじゃないですか!」
「やりたい様にやってるだけで本人は何にも思ってないよ。今は歳三、斎藤、丞がいるから手が空くとも言っていたよ?」
「それでも副長や斎藤、山崎がいない時は、全てやっていたんでしょ」
「そうだけど?ねぇジェラルド?」
「お待たせしました。シュークリームが出来ました。それと沖田。僕は始姐のお世話が出来る事が僕の喜びなのです。」
沖田。ジェラルドを変態を見る目で見るのは辞めよう。
こう見えても強いんだぞ?ジェラルドは。
そんなまさか?って………プロレス技をかけてもらう?
「手が止まってますよ。」
ジェラルドの冷たい言葉が沖田に降り注ぐ。
「始姐。シュークリームを作ってきました!! 一緒に食べましょう!」
ジェラルドの弾んだ声が響く。
「歳三、斎藤、丞、沖田の分は有るのか?」
「有りますよ。歳三、斎藤、丞はもう渡して有ります。沖田、早く共通語を覚えなさい。脳に甘い物を入れて覚えるのです。」
うん。スパルタになりつつある。
頑張れ、沖田。
傷はまだ浅いぞ。