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始姐様と僕  作者: 橘莉湖
146/149

146、魂の移動

女性が身籠ると10(つき)10()で赤子を生む。


始姐の研究室(ラボ)では、始姐が慌ただしく右に行ったり、左に行ったりしていた。

沖田総司用に新しい身体を作っているが昨晩から研究室(ラボ)に籠りっきりだ。


家では、始姐がキッチンのテーブルに書き置きしてあるメモが置いてある。

そこには、“ご飯は帰ってきてから食べる”と達筆で書いてある。

手紙の内容にジェラルドは笑みを浮かべた。

「さて、今日は何を作りますか?」

軽く伸びをして魔導式冷蔵庫を開けた。

冷蔵庫の中には、丼一杯のご飯が冷してある。

(今日はパンにしようかな?)


「おはよう。ジェラルド」

「おはようございます。歳三」

大あくびをしながら入ってくる歳三。

腰には2振りの刀を差してある。

「おはようございます。兄さん」

「おはようございます。斎藤」

目を擦りながら入ってくる斎藤。

こちらも腰に1振りの刀を差してある。

「おはようございます。ジェラルドさん」

「おはようございます。丞。」

「ジェラルドさん。これ、シロエさんから預かって来ました“置き手紙パート2”です。」

2つ折りにしてあるメモには、“お腹空いた。沖田をいつでも魂の移動が出来る様にしておいて”と書いてあった。

(ボンドガールに何か有った見たいですね。沖田を何時でも動いていいようにしておかないと行けませんね。空腹よりかはお腹一杯の方がいいでしょう。粥を作りますか?)


「お粥を作りますので少し待って貰えませんか?」

丞に言ってジェラルドは、丼一杯のご飯でお粥を作る。

土鍋に出汁入れてご飯をいれる。出汁のきいたお粥に鮭フレークを入れたら蓋をして余熱で火を通す。

匙とお茶をお盆に乗せて鍋引きを置いて土鍋を置くと丞に渡した。

沖田の方に持っていくのを見て、ジェラルドは魔導式冷蔵庫から厚切り山切りパンを2枚取り出して半分に切り隠し包丁を入れて焼く。

小皿にアンコをのせ、こんがり焼けた山切りパンにマーガリンをたっぷりと塗ってマカロニサラダを出してゆで卵を籠の中に入れてお盆に乗せた。

テーブルに牛乳にお水、山切りパンにアンコ、マカロニサラダにゆで卵をテーブルに置いて行く。

(始姐には、お弁当でも用意しとこうかな?)

そんな事を考えていたら丞が帰って来た。

テーブルについて僕、歳三、斎藤、丞で朝食を食べる。

山切りパンにたっぷり塗ったマーガリンの上にこれまたたっぷりのアンコを塗る。

そして、大きい一口で山切りパンを食べ咀嚼する。

「この山切りパンは美味しいな」

「アンコも美味しいです。」

「手抜き料理ですけど…」

「そんな事有りません。どれも美味しいです。」

「シロエには、何か作るのか?」

「はい。お弁当でも作って渡して置こうと思います。」

ゆで卵の殻を剥きながらジェラルドは言う。

ゆで卵の殻を剥いて塩を着けてパクリと食べる。

塩味が効いて旨い。


◇◇◇


「うーんやっぱり早く生まれそうだな。普通なら10(つき)10()なのに、沖田の身体は、順調に育っていたのになぁ~?」

大きな円柱の水槽に空気がごぼっと入ってきた。

「うーん、早めに沖田の魂の移動をした方がいいかもね?」

水筒から温かい紅茶をコップにつぐとふうふうして一口口にふくむと飲み込んだ。

食道から胃に温かい紅茶が流れるのが分かる。

この紅茶を作ったのは始姐本人だ。水魔法で水を出し、火魔法で水を沸騰させて紅茶の茶葉をティーバッグに入れて蒸らしティーバッグごと水筒に入れて持ってきたのだ。

腹が減ってはなんとやらで、始姐はクッキーを食べる。甘い食べ物が脳に糖分が行き渡る。


「さぁ~て、糖分補給もやったし、ジェラルドならお腹をいっぱいに満たしてくれるだろう。沖田の。私は、ボンドガールの最終調整をしないと」


◇◇◇


「沖田、起きた?」

始姐と全く同じ言葉を使うジェラルド。

部屋から返事が来ないままジェラルドは、ガチャと扉を開けて沖田の処までズカズカ入っていく。

「まだ、返事もしてません。」

「固いこと言わないの。お粥を作ったから食べなさい。」

沖田の前にどーんと置かれた土鍋。蓋を取ると鮭フレークがたっぷりと入ったお粥。

「こんなに食べれませんよ?」

「これから大事な用が沖田にくる。その時お腹の虫がグーグーなっていたら僕が怒られるし(始姐なら「あらあら大きな腹の虫だね~」って済ませちゃうだろうが、僕はそれが許したくない!)、沖田も大変な事にもなる。だから食べろ」

説明を省くジェラルド。

稀人だからか説明もちゃんとしないのかも知れない。

食べろ。食べろ。と厚をかけてくるジェラルド。

匙でお粥をすくい一口食べる。

「何時もと味が違います。」

「今日は僕が作ったからね。始姐よりは味が落ちますが、食べられない程では有りませんよね?」

黙って食え!と言わんばかりの笑顔を振り撒くジェラルドに沖田は匙を進めた。

その時丞は、空気とかしていた。


「もう…食べれません」

丼一杯のお粥を食べきった沖田は、ベッドに仰向けで寝転がった。

これから始姐がやるのは、誰も遣ったことが無い魂の移動だ。

初めて遣るのでお腹いっぱいにしとけば、あらゆる事態でも対処できる。多分。斎藤の移動の時は身体が無かったからすんなりとボンドガールの身体に魂が馴染んだ。

だけど今回は、違う。

元の身体がある状態で魂の移動をするのだ。簡単には行かないだろう。

何時間かかるのか?

何週間かかるのか?

はたまた、何ヵ月かかるのか分からないのだ。

手探りの状態で、始めてる沖田のボンドガール。


丞におぶさって遣ってきた沖田と隣を歩くジェラルド。

研究室の扉を開けて始姐がいる処まで中に入る。


「始姐、沖田を連れて来ました~」

ほめて、ほめてと見えない尻尾を揺らしているのが分かるジェラルドは、始姐の手が届く処まで身体を折り頭を近付ける。

「ありがとー。ジェラルド。いいこ。いいこ」

始姐も孫を見るおばあちゃんの様に目尻を下げて小さい手でジェラルドの頭を撫でる。

「何だ。この構図」

「沖田さん、黙っていて下さい。ここでジェラルドさんが満足するまで続きます。後々、すんなり行くなら俺は、待ちます」

「………」


ジェラルドが満足するまでかかった時間はおおよそ15分。

その間始姐は抱きついたままのジェラルドの頭を撫で続けた。


「もう、宜しいでしょうか?」

沖田をおんぶしたままの状態で良く堪えた。


「ジェラルド。丸い椅子が有るから出して沖田を座らせて」

「はい。承りました。」

ジェラルドが丸い椅子を出して来て沖田を座らせる。

「丞もありがとう。」

「い、いえ。どう致しまして」

「始姐、これ朝御飯です。」

渡された包みをほどくと竹籠があり、蓋を開けると中にはおにぎりが

「鮭と梅干しです。ほうじ茶を入れた水筒も有りますので」

「ありがとー、ジェラルド。 頂きます!!」

手と手を合わせて大きな声で言うと海苔が着いた鮭おにぎりを一口食べる。

「ん~。いい味~。美味しい」

お腹空いていた始姐はパクパク食べてほうじ茶で流した。

「ボクは、ここにつられて来たけどどうするの?」

沖田が周りを見ながら言う。

「あの円柱のポットに入って」

空の円柱のポットを指で指す始姐。

「えっ?嫌ですが」

「うん。言うと思った。だから強制的に」

パチンと指を鳴らして無抵抗のまま沖田は、円柱のポットの中に入った。

扉が閉まると足元からオレンジに近い黄色の液体が入ってくる。

もし匂いが着いていたらお風呂に入れるゆずの香りだろう。

「その水は呼吸できるから安心して」

もっと早く言って欲しかった!

満たされる前に顔を着けて呼吸をすると案外簡単にできた。

「後は、健康な肉体が手に入ったら遣りたい事を考えておいて」


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