137、全力で止めよう
鼻歌を歌いながらジェラルドさんが料理を作っています。
遡ること数時間前。
「丞。料理作れるのか?」
「料理ですか?。それは作れますよ?。」
「良かった~。では、料理を教えてくれ!」
「はっ?」
丞の時間が止まった。
土方からは、“シロエに料理を作らせるな!”と言われてる丞。
前の焼き肉の時だって上手く焼いているのに“何故?”と思ったら「今日はプリンを作ったぞ」と容器から覗くと黒い何かが有った。
途端にジェラルド、歳三、斎藤が蜘蛛の子を散らす様に消える。
逃げ足の早い事。
訳が分からず、結局逃げ足遅かった丞が餌食に有った。
「ジェラルドも歳三も斎藤もあげない。丞、一緒に食べよう。この砂糖を焦がしたのをスプーンで割るんだ」
そう、普通スプーンで軽くコンコンと叩くと簡単に割れるのに強い力で叩いても割れない。
こう言う菓子なのだろうか?
………違います。
「おかしいな?もっと簡単に割れるって書いてあるはずなのに………仕方がない。釘でひびを入れるか?」
魔法で造り出したのは、釘ではなくマスケット銃だった。
「狙いを定めて………発射!」
引き金を引くと弾丸が繰り出されプリンもろとも粉々に………
「あれ?何でだ?」
「当たり前でしょ!銃ですよ!釘じゃ無いですよ!分かりますか?!」
青い顔をして丞は、始姐の肩を掴んでガタガタと揺さぶった。
「あ、あぁ。今度は木の板を挟んで…」
「違います!銃を使うな!って言ってるんです!そんな、“何で?”って顔しないで下さい!」
えっ?俺がおかしいのか?
「始姐が作りたかったのはこれですよね?」
ジェラルドが、作ったプリンを出しておいた。プリンの表面に薄くべっこう飴の様な物が付いてる。
「これをスプーンて軽く叩いて」
ジェラルドが作ったプリンの砂糖を焦がしたのはスプーンでも軽く叩くとキレイに割れた。
「始姐。どうぞ」
「ありがとう、いただきます」
「丞もどうぞ食べてみてください」
「いいのですか?」
「ええ、ぜひ食べ比べしてください」
ジェラルドの作ったプリンを食べて丞の顔が綻ぶ。
「美味しい!」
食べたことが無いプリンを夢中で食べた丞。次に出されたのは始姐が作ったプリンだ。ちゃんと表面の砂糖を焦がした物にひびがはいってる、が、プリンが割れ目から顔を覗く。
「あの~、プリンは薄い紫色何でしょうか?」
「違いますよ。始姐が作ると素材の色が変わるのですよ。味も」
然り気無くジェラルドは言う。
「えっ?」
「百聞は一見にしかず。です」
「い、いただきます。」
次に目を覚ましたのはベッドの中だった。
記憶が、始姐のプリンを食べた後の記憶が全く無いのだ。恐ろしいと初めて思った。
何で副長が“シロエに料理を作らせるな!”と言った意味が分かった。
全力で止めよう。
そう心に誓った丞だった。