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9.チャンス

 三年後、彼女は十八歳という若さで王妃になった。

 数年後に重鎮たちが相次いで亡くなるという事態がおき、その中に父である宰相も含まれていた。私は父の基盤を受け継いでいたが、その地位は盤石とは言い難かった。手っ取り早く政府の中で発言権を得るには宗主国であるグランデン帝国の力が必要不可欠だった。

 また、その頃から地方貴族との連携を裏で取り始めた。

 いざ事を起こすときの保険と考えていたからだ。

 しかし、私の考えとは裏腹に事は上手く運ばなかった。

 側妃が産んだ王太子がよりにもよって帝国の血を引く公爵令嬢との婚約を破棄し彼女の義理の妹を後釜に据えてしまった事で予定が大幅に狂った。国の威信は地に堕ちたが、この最悪の事態は私にチャンスをもたらした。


 テレサ王妃が国王を見限った――



 漸く、チャンスが巡ってきた。

 それは彼女と出会って十七年目の事だった。

 直ぐにでも手に入れたかったが、まだ帝国への根回しが終わっていなかった。誰に憚ることなく自分一人のものにするためにも新たな戸籍と後ろ盾は必要だ。


 地方貴族達の動きも気になる。


 彼らもそろそろ我慢の限界だろう。


 王家はいずれ地方貴族達の手によって滅ぶ。

 その芽は十分育っている。

 私が後押しせずとも何時かは奮起しただろう。だから、という訳ではないが、王家に残っている王族は見逃すことにした。




「やっと手に入れることができる」


 この扉の向こう側に彼女がいる。シンプルな馬車に数量のトランク。国王は地方視察だという名目を信じ切っている愚か者だ。


『王妃が心配だ。やはり宰相も一緒について行ってはくれまいか』


 ククッ。

 頼む相手を間違えるアホだ。

 あの国王は一番頼んではいけない相手に愚かな命令をだした。


 まぁ、私にとっては渡りに船。

 これで堂々と彼女と共に出奔できる。嗤いを堪えるのが大変だった。


 国王、これより数日後に王妃と宰相の行方知れずの報告が届くでしょう。その後に、死亡の報告も……。その時の驚く顔が見られないことは非常に残念でなりません。


 私は貴男の治世に十分尽くした。

 だから、退職金(王妃)はちゃんと頂いていきますよ。お元気で――



 

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